2020年の海外ビッグイベントの1つとして挙げられる米国大統領選挙。この選挙は新たなリーダーを選ぶという側面以外にも、為替相場においては、通常の理論では説明がつかないような動きであるアノマリーが起きる可能性があるということをご存知だろうか。このアノマリーでは、大統領選挙の年と翌年の大統領就任時には、円安ドル高の方向に動く傾向がみられるとされるが、過去の選挙からその動きを追ってみよう。
過去9回の選挙年では円安ドル高7回、円高ドル安2回
記憶に新しい前回2016年の米国大統領選挙では、トランプ大統領がヒラリー・クリントン候補を破り勝利を収めた。政治経験のないトランプ氏が大統領に就任することに、マーケットでは不安も広がったが、為替相場はアノマリー通り円安ドル高が進行した。この背景には、「米国第一」をスローガンに掲げたトランプ大統領によって、積極的な財政政策が展開されるとの思惑があり、結果円安の流れとなった。
前回の米国大統領選のように、選挙が実施される年には、新しい大統領および再選を目指す現職の大統領に対する期待感や不安を為替市場が材料視していることが伺える。選挙の翌年に大統領が就任すると、実際に展開される政策を巡って、為替市場に影響を及ぼしていくことになる。前回2016年からさかのぼり、1984年からの過去9回の米大統領選の年は「円安ドル高7回、円高ドル安2回」という動きを見せた。共和党と民主党の2大政党で大統領の椅子を争う選挙が定着した米国の選挙では、共和党候補が勝利すれば円安、民主党候補が勝利すれば円高になるというのが定説である。しかし、過去9回の選挙では共和党が5回、民主党が4回それぞれ勝利を収めているが、「円安ドル高7回、円高ドル安2回」という為替の動きをみてもアノマリーが存在していることがみてとれる。
2012年オバマ前大統領が再選を果たした年は、オバマ氏が民主党所属であることから、円高の流れに傾くことがセオリーであるが、実際にはこの年は円安の動きとなった。その背景には日銀が金融緩和を実施したことや、米国で失業率が改善したことなどが挙げられる。
選挙翌年は「円安ドル高6回、円高ドル安3回」
アノマリーでは、選挙の翌年も円安ドル高の方向に動く傾向がみられるとされ、過去9回の選挙翌年では円安ドル高6回、円高ドル安3回となっている。そのセオリーと逆行するような現象が発生した年が過去9回の選挙翌年で3度ある。前回の大統領選挙翌年の2017年がまさにそのうちの1回であり、トランプ大統領がどのような政治手腕を見せるか注目されたなか、日本に対しても貿易黒字の是正を求める姿勢を見せたことから、為替相場は円高に推移した。2度目は1993年、クリントン大統領が1期目の就任を果たした年で、4月に1ドル=100円40銭まで円高ドル安が進行し、当時の戦後最安値を更新した。1990年にバブル景気が崩壊し、日本経済が低迷期に入ったが、93年には不況からの回復期待感から円買いが進み、円高となった。さらに遡ること1985年は、レーガン大統領が2期目の就任をした年であった。この年の円高進行の大きな要因となったのが、プラザ合意である。それまでの過度な円安ドル高を是正すべく、日本、米国、英国、ドイツ、フランスの5か国による合意がされた歴史的な年であった。
大統領選挙の年とその翌年は円安ドル高の方向に動くというのはアノマリーとして定着しつつあるが、大統領選挙や大統領の就任よりもインパクトのあるリスクイベントがあれば、異なる方向に向かうこともあり、注意が必要である。2020年は、4年に一度の米国の大統領選挙の実施年でもあることから、アノマリーを頭に入れつつ、海外情勢について把握しておくことが重要になるだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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