(本記事は、小田 全宏氏の著書『頭のいい人の脳の使い方』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
記憶力は年齢を重ねるに従い衰えていく!?
「人間の脳細胞は20歳を過ぎると減っていく」
そんな話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
研修の際、受講生の方々によくこの質問をするのですが、だいたい7、8割くらいの方が「聞いたことがある」「知っている」と手を挙げます。
脳科学の世界では、人間の脳の重量は、幼少の頃はだいたい400から500グラムで、ピークとされる20歳で1400グラムくらいになり、その後、次第に減っていき、90歳くらいになると、20歳の時と比べて15%ほど少なくなると言われています。
90歳でピーク時より15%減で済むなら、さほど影響はないように思うのですが、脳細胞の話だからでしょうか、とても大変なことだととらえている方が多いようです。
その要因として、メディアが大げさに伝えていることもあるでしょう。
たとえば、20歳を過ぎると1日に脳細胞が10万個も死滅していき、80歳を過ぎると脳細胞はピーク時の半分くらいになる、または、近い将来、日本だけで1000万人超が認知症になってしまうといったものもあります。
たしかに、日本だけでなく世界中で認知症は社会問題となっていますが、そもそも認知症になる確たる原因はあまりわかっていないのが実状です。脳細胞の減少と認知症の発生は必ずしもイコールであるとは今の段階では言えません。
また、「1日に脳細胞が10万個死滅する」などと聞くと、とても恐ろしいことが起きているように感じますが、ちょっとよく考えてみましょう。
もし仮に脳細胞が1日に10万個死んだとしても、1年で3650万個、10年で3億6000万個、100年経っても36億個です。
それに対して人間の脳細胞の数は、約1000億個とも言われています。
100歳で1000億個あるうちの36億個減ってしまうだけなら、そこまで気にする必要はないと思いませんか?
かつてオランダで、115歳で亡くなった女性の脳を調べたところ、まったくと言っていいほど脳の萎縮がなかったことが記録されています。
こうしたことから、最近では、脳の寿命は120歳くらいだろうと言われています。
つまり、死ぬまで、元気な脳を保つことも可能だということです。
ではなぜ、「歳をとると物忘れが激しくなる」のかというと、実はこれも、大きな誤解なのです。
ある研究で、老人も子どもも物忘れをする数はほぼ変わらないことがわかっています。ただ、子どものほうが、頭に入っている情報が少ないために、物忘れをしているように見えないだけなのです。
記憶力の低下の原因は、睡眠不足や日々のストレス、あるいは生活習慣から来ているものが大半で、それを改善すれば、脳はたちまち元気になります。
私の講座を受けていただいた方の最高齢は、88歳です。
ご高齢ですから、最初は3つ4つの簡単な単語ですら、なかなか頭に入りません。その方も、憶えられない自分に対して、「やっぱり、もう歳か……」とがっかりされていらっしゃいました。しかし、1日の研修が終わる頃には、100個近い単語を憶えることができていました。本人も驚愕していましたし、他の受講生もびっくり。
「88年の人生の中でこんなに驚き、感動したことはありません。この研修を、人生のもっと早い時期に受けていたらと、すごく後悔しています(笑)」
という彼の言葉に、素直にうれしく思うと同時に、「もっとこの『アクティブメソッド』を知っていただくべく頑張らなければ」と、反省したものです。
ほかにも、病院で認知症の診断を受けた方が研修を受けたことによって、かなり改善が見られたこともありました(なお、研修は治療ではありませんので、受講すれば必ず「治る」ということは言えません)。
脳細胞は年齢に関係なく活性化されるので、脳の老化を必要以上に怖がる必要は、まったくないのです。
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