(本記事は、小田 全宏氏の著書『頭のいい人の脳の使い方』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
アイビー・リー・メソッドで「忙しい」をカットする
みなさんは、普段、「忙しい」という状態がどのようなものであるか、明確に理解しているでしょうか。
ほとんどの人が「やるべきことがたくさんある状態」だと考えていることでしょう。
実は「忙しい」という意識と「やるべきことの数」とは必ずしも相関していません。
正確に言うと、「忙しさ」とは、「何かをしている時に、別のやるべきことが脳に浮かんでくる状態」のことを指します。
つまり、10個やるべきことがある人も、目の前のこと1つだけに意識を集中できていたら忙しくありません。反対に、やるべきことが2つしかなかったとしても、1つのことを行っている時に、もう1つのやるべきことが脳の中で点滅していたら、「忙しい状態」であるというわけです。
そもそも人間は、本能的に複数のことが気になるようにできているため、頭の中に複数あることが普通の状態となります。
では、どうしたら頭の中を1つのことだけにできるのか。
それは、すべきことを整理して、心おきなく目の前のことだけを考えられるようにすることでしょう。
すべきことを整理するには、「TO DO リスト」を作り紙に書き出す方法もありますが、ここではシンプルでもっとも有効なタスク管理術である「アイビー・リー・メソッド」を紹介しましょう。
アイビー・リー・メソッドは、「1つの作業が終わるまで、次の作業をやってはいけない」というルールです。これは、アイビー・リーさんというアメリカの経営コンサルタントが、ある大きな鉄鋼会社の会長から、「毎日、忙しくて頭が混乱している。なんとかしてほしい」という依頼を受けて提示したもので、100年以上もの間、世界中で活用されています。
このメソッドを使うことによって、非常に効果的に「忙しい」という感覚が払拭され、「忙しさレベル」が格段に下がり、安心して目の前にあるものに集中できます。
「アイビー・リー・メソッド」は、次の6つのステップで行います。
- アイビー・リー・メソッド
1 その日すべきことを6つ書き出す
ただし、「15時に○○さんと仕事の打ち合わせをする」というように、すでに予定として決められていることは書き出しません。
なぜ、すでに決まっている予定を書き出さないのかというと、このメソッドは、「何かをしている時に、他のことに意識が散らないこと」「緊急ではないけれども重要なこと」に意識を向けて自分の時間の質を変えることに、その最大の主眼があるからです。
2 書き出した6つに順番をつける
自分が取り組むべき順に(重要なものから)番号をつけていきます。
3 「1つの作業が終わるまで、断固として次のことをやらない」と決め、メモに書いた順番に従って1つずつ実行する
1つ作業を終えるごとに、「よし」と言って、心の中で喜びの満足を意識的に味わう時間を持ちます(時間の長さは関係ありません)。
4 1〜3を繰り返す
5 できなかったことは後悔せず気持ちよく受け入れる
6つのうち2つできなかったとしても、それを苦にするのではなく「それでよし」と、心の中で踏ん切りをつけるのです。
6 明日やるべきことを6つあげる
前日にできなかった残りの課題を、次の日の1番目の課題にするのも1つです。
ただし、必ずしも最優先にする必要はありません。できなかったことを翌日の最優先事項にしていくと、できなかったことの課題が日に日に膨れ上がってしまいます。
このメソッドのポイントは、「1日を1日でリセットする」ことなので、前日できなかったものが、次の日に実行することが自分にとってもっとも価値があると思えば、それを最優先にしてもいいですし、さらに価値のある課題が出てくれば、その順位をあげても構いません。
アイビー・リー・メソッドを実行する時のポイントは2つです。
まず、課題に取り組んでいる時に別のことを頭の中で考えないこと、そして、その課題ができあがった時に、「うれしい」という喜びの感情を持つことです。
今まで何千人もの人たちに集中力のトレーニングをしてきましたが、多くの人がこのメソッドを通して満足いく結果を生み出しています。ぜひ試してみてください。
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