国内企業物価は前年比でマイナス幅が拡大

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(画像=PIXTA)

6月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年5月の国内企業物価指数は前年比▲2.7%(4月:同▲2.4%)と、3ヵ月連続のマイナスとなり、前月から下落幅は拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.4%、当社予想は同▲2.5%)を上回る下落幅となった。消費税を除いた5月の国内企業物価指数は、前年比▲4.1%(4月:同▲3.8%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。

原油価格の下落を受けて、石油・石炭製品(消費税を含むベース)が前年比▲36.7%(4月:同▲30.1%)の下落となり、前年比寄与度が▲2.50%pt(4月:▲2.02%pt)と大きく国内企業物価を下押ししたほか、既往の原油安が遅れて反映される電力・都市ガス・水道が同▲3.4%(4月:同▲4.2%)と8ヵ月連続のマイナスとなったことが下落要因となった。

国内企業物価指数は前月比では▲0.4%(4月:同▲1.6%)と4ヵ月連続のマイナスとなったものの、マイナス幅は前月より縮小した。前月比で内訳をみると、ガソリン(4月:前月比▲12.7%→5月:同▲5.6%)、灯油(4月:前月比▲26.8%→5月:同▲13.8%)、軽油(4月:前月比▲26.4%→5月:同▲13.0%)などの下落により、石油・石炭製品が前月比▲8.1%(4月:同▲19.9%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。また、飲食店への自粛要請に伴う外食産業向けの鶏卵需要の後退により、鶏卵が前月比▲17.4%(4月:同2.8%)と大幅に下落するなど、農林水産物は前月比▲0.6%(4月:同0.8%)とマイナスに転じた。一方、中国の経済活動再開に伴う銅価格の持ち直しを受けて、非鉄金属が前月比0.6%(4月:同▲1.7%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

原油価格の急落が輸入物価を大きく下押し

20年5月の輸入物価指数(1)は、契約通貨ベースでは前月比▲5.3%(4月:同▲6.2%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。一方、5月のドル円相場は前月比▲0.6%と若干の円高水準となったことから、円ベースでは前月比▲5.6%(4月:同▲5.8%)と下落幅は契約通貨ベースを上回った。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、原油が前月比▲49.2%と4月の同▲34.4%から下落幅をさらに拡大させたことや、世界的な輸送用燃料需要の後退によるジェット燃料油・灯油の下落幅拡大(4月:前月比▲34.0%→5月:同▲36.3%)により、石油・石炭・天然ガスは前月比▲22.3%(4月:同▲20.8%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。前月比寄与度は▲5.10%ptとなり、石油・石炭・天然ガスの急落が引き続き輸入物価指数を大きく押し下げている。また、需要の弱さを反映し、金属・同製品が前月比▲0.5%(4月:同▲3.0%)と4ヵ月連続のマイナスとなる一方、電気・電子機器は前月比0.0%(4月:同1.0%)の横ばいとなった。

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(1)輸入物価指数は、消費税を除くベースで作成されている

国際商品市況の悪化が川下に波及

20年5月の需要段階別指数(国内品+輸入品)(2)をみると、素原材料が前年比▲28.9%(4月:同▲20.4%)、中間財が前年比▲5.9%(4月:同▲5.3%)、最終財が前年比▲3.3%(4月:同▲3.2%)となり、すべての需要段階で下落幅が拡大した。特に素原材料の下落幅が大きく、国際市況の悪化を反映して中間財、最終財の価格にも今後波及するだろう。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲4.6%(4月:同▲4.1%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。

原油価格の上昇を受けて、マイナス幅の拡大には歯止めがかかる可能性があるものの、消費増税後の国内需要の弱さを反映し、国内企業物価は今後も弱い動きが続くだろう。当面は前年比でマイナス圏での推移が続く公算が大きい。

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(2)需要段階別指数は、消費税を除くベースで作成されている


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藤原光汰(ふじわら こうた)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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