米国株、クリティカルなポイント 短期トレードならヘッジを推奨
このところずっと、コロナ「第2波」への警戒と経済再開による景気回復期待との綱引きと述べてきたが、今週もまた同じことを繰り返さねばならない。
米国の状況は「第2波」警戒を強めそうだ。ジョンズ・ホプキンス大の集計によると26日は約4万5千人の感染者が確認され、3日連続で過去最多を記録。テキサス、カリフォルニア、フロリダ、アリゾナなど南・西部の州での感染者が急増している。テキサス州は段階的な経済活動の再開を停止し、同州ヒューストン地域では公衆衛生上の緊急事態宣言が発令された。マイアミでは感染防止のため、7月4日の独立記念日に伴う3連休に有名ビーチが閉鎖される。
そうしたことも重石となって先週末にダウ平均は再び700ドル余りの急落となった。今週さらに米国の経済再開の動きが後退するような事態になれば、相場の動揺は大きくなる。ダウ平均は25,000ドル、S&P500は3,000ポイントという大台割れ目前であり、ここを下方にブレイクされると相当程度、調整が深くなる恐れがある。特にS&P500は大きな陰線で200日移動平均に突っかける動きとなった。明確に200日線を割り込むと、そこから下げが一段と加速したケースは過去に何度も見てきた。短期トレードなら、いったんヘッジするポイントだと思う。
今週は月末月初とあって重要な経済指標の発表が相次ぐ。米国では7月1日に6月のISM製造業景況感指数、2日に雇用統計がそれぞれ発表される。6月のNFPは、中小企業向け融資の「給与保証プログラム(PPP)」などの政府の支援策で雇用者数の増加は5月実績を上回ると見られている。しかし、週次のイニシャルクレイムを見ると、労働市場は依然として厳しい状況だ。NFPは振れやすいので波乱に注意したい。中国では6月30日に製造業購買担当者景気指数(PMI)の発表がある。日本では7月1日に6月の日銀短観が発表される。
NYダウは700ドル安などと大きな変動が起こり得るが、日本市場への波及はこのところ限定的となっている。やはりコロナ「第2波」警戒といっても感染者数の規模感がまるで違うからだろう。カリフォルニアのディズニーランド・リゾートの再開は延期だが、日本のディズニーランドは再開する。経済再開の信頼性という意味では米国より日本に軍配が上がる。投資資金にも日本を投資先に選ぶ動きが出ておかしくない。
日経平均の25日移動平均は2万2300円どころにあり、ダウ平均の700ドル安を受けても日経平均の下げは200~300円程度で済むだろう。配当再投資の需給要因も下支えとなるだろう。
7月3日は独立記念日の振替休日で米国市場が3連休となることから週末に向けて様子見機運が広がるだろう。2日に米雇用統計の発表があることも余計に手控え要因になる。毎度のことだが、多くの投資家が動けないとわかっている時は投機筋に狙われやすい。薄商いの中、仕掛け的な急な値動きには注意が必要だ。
今週の予想レンジは2万2000円~2万3000円とする。
広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術』
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