1 はじめに
新型コロナウイルス感染症拡大防止のために出されていた緊急事態宣言も、去る5月25日には、全国的に解除となりました。
休業要請が解除されて事業再開できるようになったことに伴って、新型コロナ感染症の影響により減額していた役員給与を元に戻そうという動きが出てきています。
ただ、新型コロナの影響により役員給与を減額改定した後、期中に、再度給与額を改定して従前の支給額に戻した場合、定期同額給与に該当するのか。定期同額給与に該当すれば損金算入できるが、該当しなければ損金算入できないことから問題となります。 (参考:チェスターNEWS(6月15日掲載)「新型コロナの影響による役員給与減額~定期同額給与への該当性」)
以下では、役員給与について期中に2度目の改定を行い、従前の支給額に戻す場合について説明します。
2 役員給与を期中に2度目の改定で増額した場合
《事例1》
(参考:国税庁「役員給与に関するQ&A(平成20年12月)(平成24年4月改訂)」のQ5「臨時改訂事由の範囲―病気のため職務が執行できない場合」)
A社は介護事業を行っています。A社の役員Xは新型コロナウイルスに感染し、陽性反応が出たことから入院することになり、当初予定されていた職務の執行が一部できない状態になったため、Xの役員給与を減額しました(改定1)。しかし、その後、役員Xは回復し、従前と同様の職務の執行が可能となったことから、Xの役員給与につき入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定を行いました(改定2)。
〇上記の役員Xが新型コロナウイルスの感染で入院したことにより、当初予定されていた職務の一部の執行ができないこととなった場合には、「職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情」があると認められることから、これにより役員給与の額を減額して支給することは、「臨時改定事由」による改定に該当すると考えられます。 また、退院後、従前と同様の職務の執行が可能となったことにより、入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定についても、「職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情」に該当すると考えられます。
この「臨時改定事由」による改定は、事業年度開始の日から3ヶ月までにされた定期給与の額の改定時には予測しがたい偶発的な事情等による定期給与の額の改定で、利益調整などの恣意性があるとはいえないものについても、定期同額給与とされる定期給与の額の改定として取り扱うこととしているものです。
よって、改定1と改定2のいずれにおいても、「職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情」があったことから、「臨時改定事由」による改定にあたり、定期同額給与に該当すると考えられます。
《事例2》
B社は、全国的に居酒屋をチェーン展開している会社で、政府の新型コロナウイルス感染症拡大防止の休業要請により休業を余儀なくされました。B社の役員Yは、従来、全国の店舗管理のために日本中の店舗を飛び回っていましたが、休業要請を受けたことにより、Yの店舗管理業務も不要となりました。そこで、B社は、Yの役員給与を減額しました(改定1)。しかし、その後、年度内に休業要請が解除され、営業再開することとなり、役員Yは従来通りの店舗管理業務を行うこととなったため、Yの役員給与を元に戻しました(改定2)。
〇上記事例の改定1と改定2のいずれにおいても、「職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情」があったといえ、「臨時改定事由」による改定にあたり、定期同額給与に該当すると考えられます。
(提供:チェスターNEWS)