国内企業物価は前年比でマイナス幅が縮小

企業物価指数
(画像=PIXTA)

7月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年6月の国内企業物価指数は前年比▲1.6%(5月:同▲2.8%)と4ヵ月連続のマイナスとなったが、下落幅は前月から大きく縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲1.9%、当社予想は同▲1.6%)を下回る下落幅となった。消費税を除いた6月の国内企業物価指数は、前年比▲3.1%(5月:同▲4.2%)と13ヵ月連続のマイナスとなった。

原油価格の持ち直しを受けて、石油・石炭製品(消費税を含むベース)の下落幅が大きく縮小(5月:前年比▲36.5%→6月:同▲25.9%)し、前年比寄与度が5月の▲2.48%ptから6月は▲1.69%ptとなったことが、国内企業物価の下落幅拡大に歯止めがかかる要因となった。

国内企業物価指数は前月比では0.6%(5月:同▲0.5%)と5ヵ月ぶりのプラスとなった。前月比で内訳をみると、ガソリン(5月:前月比▲5.5%→6月:同9.7%)、灯油(5月:前月比▲13.6%→6月:同25.2%)、軽油(5月:前月比▲11.5%→6月:同23.5%)などが大幅なプラスに転じたことにより、石油・石炭製品が前月比11.4%(5月:同▲7.7%)と5ヵ月ぶりの上昇となった。また、経済活動の再開に伴い銅価格が上昇していることを受けて、非鉄金属が前月比3.1%(5月:同0.6%)とプラス幅を拡大させたほか、スクラップ類(5月:前月比▲0.4%→6月:同13.6%)が大幅な上昇に転じた。一方、需要の弱さを反映し、農林水産物は前月比▲0.3%(5月:同▲0.4%)と下落が続いているほか、既往の原油安が遅れて反映される電力・都市ガス・水道は前月比▲0.3%(5月:同▲0.3%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

原油価格の上昇に伴い輸入物価もプラスに転じる

20年6月の輸入物価指数(1)は、契約通貨ベースでは前月比0.7%(5月:同▲5.7%)と5ヵ月ぶりにプラスに転じた。一方、6月のドル円相場は前月比0.2%と若干の円安水準となったことから、円ベースでは前月比0.9%(5月:同▲5.9%)と、契約通貨ベースを上回る上昇幅となった。

契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、原油(5月:前月比▲49.2%→6月:同31.6%)、液化石油ガス(5月:前月比▲14.9%→6月:同20.0%)、ジェット燃料油・灯油(5月:前月比▲36.3%→6月:同22.9%)などが大きく持ち直したことを受けて、石油・石炭・天然ガスは前月比4.4%(5月:同▲23.0%)と4ヵ月ぶりに上昇に転じた。前月比寄与度は0.81%ptとなり、石油・石炭・天然ガスの上昇が輸入物価指数を押し上げた形となった。また、経済活動の再開に伴い、金属・同製品が前月比0.4%(5月:同▲0.6%)と5ヵ月ぶりにプラスに転じた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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(1)輸入物価指数は、消費税を除くベースで作成されている

国際商品市況は持ち直すも、波及効果は限定的

20年6月の需要段階別指数(国内品+輸入品)(2)をみると、素原材料が前年比▲25.7%(5月:同▲29.3%)、中間財が前年比▲4.9%(5月:同▲6.1%)、最終財が前年比▲2.3%(5月:同▲3.4%)となり、国際商品市況の持ち直しを受けてすべての需要段階で下落幅が縮小した。素原材料の下落幅縮小は、中間財、最終財への下押し圧力の緩和となるが、国内の最終需要が弱いため、川下への価格転嫁は難しい状況が継続すると考えられる。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲3.2%(5月:同▲4.7%)と14ヵ月連続のマイナスとなった。

6月の企業物価指数は、国際商品市況の持ち直しを受けて、下落幅の拡大に歯止めがかかった。商品市況は今後も回復に向かうとみられるが、世界経済は弱い動きが長引いていることから、そのペースは緩慢なものにとどまるだろう。国内企業物価は当面、前年比でマイナス圏での推移が続く公算が大きい。

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(2)需要段階別指数は、消費税を除くベースで作成されている


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藤原光汰(ふじわら こうた)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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