新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和に踏み切り、米国政府も大型の景気刺激策を実施した。その結果、米株式市場は「コロナ前」の水準を回復、9月2日のS&P500は終値ベースで3580.84と最高値を更新したほか、ダウ平均も約6カ月ぶりに2万9000ドルを突破する場面も観測されている。
しかし、その一方で実体経済の回復は遅れている。8月22日までの週の失業保険の申請件数は101万件で、100万件超えの高水準でほぼ横ばいの推移が続いている。景気刺激策も次々と期限切れを迎えており、7月末で失業保険の給付金の上乗せプログラムが終了したほか、9月末には「企業向けの支援策」も打ち切られる。「企業向けの支援策」が延長されない場合、米航空大手のアメリカン航空が1万9000人、ユナイテッド航空が1万6000人の雇用削減に動くことも明らかになっており、財政支援の息切れによる景気下振れも懸念されている。
今回はウォール街の話題を交えながら、米株式市場の現状についてリポートしたい。
「パウエルFRB議長はバブル容認?」
最近のウォール街で話題となったのが恒例の「ジャクソンホール会議」だった。「ジャクソンホール会議」とは、毎年8月にカンザスシティ連邦準備銀行が開催する経済政策シンポジウムで、世界各国の中央銀行幹部や政策立案担当者、エコノミスト、学者などが集まり、世界経済や金融政策について議論するものだ。開催場所にちなんで「ジャクソンホール会議」と呼ばれるが、今年は新型コロナ危機の影響でオンラインでの開催となった。
その「ジャクソンホール会議」で注目されたのが、ジェローム・パウエルFRB議長の基調講演『金融政策の枠組み見直し』だった。このスピーチでかねてより噂されていた「平均2%のインフレ目標の導入」が正式に発表されたことから、ウォール街の市場関係者からは「事実上のバブル容認」との観測も広がっている。