iDeCoとふるさと納税は、ともに所得控除による節税効果があるため人気です。しかしiDeCoとふるさと納税とで所得控除の仕組みは大きく異なります。また両者の併用にはデメリットや注意点もあるためしっかりと押さえておきたいところです。この記事では、iDeCoとふるさと納税それぞれの特徴や、iDeCoとふるさと納税とiDeCoとの併用で生じる問題について解説します。

iDeCoとふるさと納税の基礎知識

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(画像=PIXTA)

まずは、iDeCoとふるさと納税の基礎知識について知っておきましょう。

iDeCoとは

iDeCoは、確定拠出年金法に基づく公的年金制度(個人型確定拠出年金制度)です。国民年金に加入している20~60歳の人が加入できます。しかし国民年金保険料未納付の人、企業型確定拠出年金に加入している人などは加入できません。加入は任意であり自分で金融機関に申し込んで掛金額や運用方法を選びます。

また掛金の拠出は60歳までで掛金額は5,000円から1,000円単位で設定でき毎月の上限額は最大で6万8,000円(第1号被保険者の場合)です。掛金は全額「所得控除」の対象となります。さらに60歳以降に年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が適用され所得税の控除対象となる点もメリットです。

iDeCoは、公的年金制度という性質から資金を原則60歳前に引き出すことができないため注意しましょう。また60歳を過ぎると年金や一時金を受け取れますが60歳時点で加入した年から10年未満の場合は受取開始時期が繰り下がり最長で65歳からとなるケースもある点にも注意が必要です。

ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、自分が応援したい自治体や生まれ故郷などに税金を寄付できる公的制度です。寄付の方法や寄付する税金の使い道は自分で選ぶことができ寄付をした自治体からはお礼として地域の名産品などがもらえます。寄付金のうち2,000円を超えた部分は所得税の還付や住民税の控除が受けられるため節税効果がある点も魅力です。

以上のことをふまえたうえでiDeCoとふるさと納税の併用について説明します。

iDeCoとふるさと納税は併用できる

iDeCoとふるさと納税は併用できるため、ダブルで節税効果が期待できます。ただ併用によって双方のメリットが薄れる場合がある点には注意が必要です。

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となり課税所得を減らすことができます。一方、ふるさと納税は課税所得に応じて控除額が決まりますがiDeCoによって課税所得が減るとふるさと納税の税金控除の上限額も下がってしまうのです。その理由としてiDeCoとふるさと納税それぞれの税金控除の仕組みが異なることが挙げられます。

iDeCoとふるさと納税で異なる税金控除の仕組み

まずiDeCoとふるさと納税で異なる税金控除の仕組みについて説明します。

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象です。1年間で払った掛金の金額に応じて課税所得から差し引くことができるため掛金を払った年の所得税やその翌年の住民税を節税できる効果があります。iDeCoの掛金について所得控除を受ける場合、給与所得者は年末調整、自営業や扶養内で働く人などは確定申告を行うことが必要なため、忘れずに手続きを行いましょう。

ふるさと納税の納税額は所得税と住民税の控除対象

ふるさと納税の納税額は所得税と住民税の控除対象です。控除額は、課税所得(所得税の課税対象となる所得)をもとに算出されます。それがその年の所得税の還付額や翌年の住民税から引かれ納税額を減らすことができるのです。ふるさと納税の恩恵を受けるには、1年間で寄付した金額について確定申告を行う必要がある場合もあります。具体的には寄付した自治体が6つ以上のときです。

5自治体以内の場合は「ワンストップ特例制度」を利用することで確定申告をしなくて済みます。寄付をするごとに各自治体へ申請書および本人証明書類を提出することが必要です。ここで注意すべき点は、課税所得が多ければふるさと納税の控除上限額は大きくなり少なければ控除上限額は小さくなることです。

iDeCoとの併用で課税所得が減ればふるさと納税の控除上限額も小さくなるため注意しておきましょう。その点について次でさらに詳しく解説していきます。

iDeCoとふるさと納税の併用でふるさと納税の控除上限額が減る理由

ここでは、iDeCoとふるさと納税と併用するとふるさと納税の控除上限額が減る理由についてもう少し詳しく説明します。

所得税の計算方法(給与所得者の場合)

最初に所得税の計算方法を紹介します。ここでは給与所得者のケースで話を進めていきましょう。給与所得者の場合、所得税は次の計算式で算出されます。

1 給与の収入金額-給与所得控除額(※1)=給与所得
2 給与所得-所得控除(※2)=課税所得(※3)
3 課税所得×税率=所得税額
4 所得税額-税額控除=最終的に支払う所得税

※1の「給与所得控除額」は自営業でいえば経費にあたる部分ですが給与の収入金額によって控除額は決まっておりその上限は195万円(2020年度)となっています。

iDeCoとの併用でふるさと納税の控除額が減る仕組み

iDeCoとふるさと納税との併用でふるさと納税の控除額が減る仕組みについて上述した所得税の計算式を見ながら確認していきましょう。まず2の計算式で記した所得控除(※2)には社会保険料控除など複数の種類があります。所得控除のうちiDeCoの所得控除は「小規模企業共済等掛金控除」に該当し給与所得から控除することが可能です。

そこから導かれた課税所得(※3)がふるさと納税の税金控除額計算の基準となります。そのためiDeCoとふるさと納税を併用すれば当然iDeCoの所得控除で課税所得が減りそれに伴いふるさと納税の控除額も減るわけです。iDeCoとふるさと納税を併用する場合はそのことをまず理解しておきましょう。なおふるさと納税のホームページには「かんたんシミュレーション」と「控除上限額シミュレーション」があり自分の控除上限額を簡単に算出できます。

iDeCoとふるさと納税を併用するメリットと注意点

ここまでは、iDeCoとふるさと納税を併用した場合に生じる税金面での影響について説明しましたがiDeCoとふるさと納税の併用にはメリットもあります。しかし、そのメリットを最大限に利用するためにはいくつか注意点を押さえておくことも必要です。

iDeCoとふるさと納税を併用するメリット

iDeCoとふるさと納税を併用することで得られる最大のメリットは節税効果です。たしかにiDeCoとふるさと納税の併用によりふるさと納税の上限額は小さくなります。しかしその範囲内でふるさと納税を行えば所得控除の恩恵を受けられiDeCoの所得控除と合わせれば大きな節税効果が期待できるでしょう。また節税しながら寄付を行った自治体からお礼の品などをもらえるのも大きなメリットです。

例えば食品や生活用品など日常生活に必要なものを希望すればその購入費用が所得控除の対象となり日常の買い物をするだけで節税できることになります。

iDeCoとふるさと納税との併用で注意すべき点

iDeCoとふるさと納税の併用で注意すべき点は、ふるさと納税の控除額の上限を超えて寄付すると節税による節約効果が薄れることです。上述した通りiDeCoとふるさと納税を併用するとふるさと納税の控除額の上限が下がります。ふるさと納税の寄付額に制限はないため、控除額の上限を超えて寄付をすることも可能です。

しかし上限額を超えた分は当然所得税の控除対象から外れるため、その分の節税効果はありません。それを知らずに高額の寄付を行うと単に支出が増えるだけになりせっかくの節税効果を最大限に活かせない結果となる可能性もあります。それどころか節税した分以上の支出が生じてしまう可能性もあるため、十分に注意が必要です。

それを防ぐためにもiDeCoとふるさと納税を併用する場合は必ずふるさと納税の控除額の上限を確認しその範囲内で寄付を行うことをおすすめします。

iDeCoとふるさと納税を併用しない場合はiDeCoを選んだほうがお得

最後に、iDeCoとふるさと納税を併用しない場合にどちらを選ぶべきかについても紹介します。結論からいえば給与所得者で併用しない場合はiDeCoを選んだほうがお得でしょう。なぜならiDeCoの掛金は全額所得控除の対象となり課税所得を減らすことができるからです。つまり掛金を増やせばその分課税所得が減りそれに伴って所得税額も減るメリットがあります。

その点がすでに決定している課税所得をもとに控除額が算出されるふるさと納税と大きく異なる点です。それを前提にどちらか一つを選ぶとすれば掛金の増額によって節税効果のメリットが増えるiDeCoを優先させたほうがお得でしょう。ただ個人型確定拠出年金のiDeCoは60歳以前にお金を引き出すことができません。

もし現在老後資金に回す余裕がなく直近でまとまった金額の支出が予定されている場合はふるさと納税で節税したほうがいいかもしれません。

iDeCoとふるさと納税の税金控除の違いを知って上手に利用しよう

iDeCoとふるさと納税はともに所得税の控除が受けられます。iDeCoは掛金額によって所得税の計算の元になる課税所得が変動することが特徴です。一方ふるさと納税はすでに決まっている課税所得をもとに控除額が決まる点で大きく異なります。またふるさと納税の控除額には上限がありiDeCoとの併用で課税所得が減れば控除額の上限も低くなる点がデメリットです。

ふるさと納税を始めるときはそれを考慮したうえで寄付の金額を決めiDeCoと併用しながら上手に節税しましょう。

文・大岩楓
元銀行員ライター。預金・為替業務に長く携わった経験をもとに、節約などの記事を多数執筆。現在はジャンルを広げて教育系の資格を生かした記事まで幅広く執筆。

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