国内企業物価は消費税率引き上げの影響が一巡

企業物価指数
(画像=PIXTA)

11月12日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年10月の国内企業物価指数は前年比▲2.1%(9月:同▲0.8%)と8ヵ月連続のマイナスとなった。昨年10月の消費税率引き上げの影響が一巡したことにより、下落率が▲1.5%ポイント程度押し下げられ、マイナス幅は前月から大きく拡大した。また、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.0%、当社予想は同▲2.2%)を下回る結果となった。

消費税を除いたベースでは9ヵ月連続のマイナスとなった(9月:前年比▲2.3%)。内外の経済活動の再開に伴い、非鉄金属が前年比6.9%(9月:同5.8%)と4ヵ月連続の上昇となっており、堅調に推移している。一方で、持ち直しが続いていた石油・石炭製品は、原油価格が頭打ちとなっていることを背景として、前年比▲16.3%となり、前月の同▲15.5%から下落幅が拡大した。

国内企業物価指数は前月比では▲0.2%(9月:同▲0.2%)となった(夏季電力料金引き上げの影響を除くと前月比0.0%の横ばいとなった)。前月比で内訳をみると、ガソリン(9月:前月比▲0.1%→10月:同▲1.4%)、灯油(9月:同▲0.6%→10月:同▲2.2%)、軽油(9月:同▲0.3%→10月:同▲2.6%)などの下落幅が拡大したことを受けて、石油・石炭製品は前月比▲1.1%(9月:同0.1%)と5ヵ月ぶりのマイナスとなった。また、既往の原油安を受けて、電力・都市ガス・水道(夏季電力料金引き上げの影響を除くベース)が前月比▲1.7%と4ヵ月連続のマイナスとなったほか、プラスチック製品(同▲0.4%)なども下落した。一方、非鉄金属は前月比0.6%と6ヵ月連続のプラスとなったほか、飲食料品(同1.0%)なども上昇した。

企業物価指数
(画像=ニッセイ基礎研究所)

原油価格の下落が輸入物価を下押し

20年10月の輸入物価指数(1)は、契約通貨ベースでは前月比0.1%(9月:同0.4%)と5ヵ月連続のプラスとなったものの、上昇幅は前月から鈍化した。一方、10月の円相場は前月比▲0.5%の円高水準となったことから、円ベースでは前月比▲0.1%(9月:同0.2%)と下落に転じた。

契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、原油が前月比▲6.9%(9月:同3.6%)のマイナスとなったことなどにより、石油・石炭・天然ガスが前月比▲1.2%(9月:同0.3%)と5ヵ月ぶりに下落に転じ、輸入物価を押し下げた。一方、飲食料品・食料用農水産物(前月比0.8%)や金属・同製品(同1.6%)、化学製品(同0.8%)などが前月比プラスを維持したことが輸入物価の上昇を下支えした。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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(1)輸入物価指数は、消費税を除くベースで作成されている

当面前年比▲2%台の推移が続く見込み

20年10月の需要段階別指数(国内品+輸入品)(2)をみると、素原材料が前年比▲18.8%(9月:同▲17.9%)、中間財が前年比▲3.1%(9月:同▲3.2%)、最終財が前年比▲1.4%(9月:同▲1.7%)となった。国際商品市況の持ち直しペースが鈍化していることを受けて素原材料の下落幅が前月より若干拡大しており、今後中間財、最終財の価格にも波及する可能性がある。

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲1.7%(9月:同▲2.2%)と18ヵ月連続のマイナスとなった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

世界的な経済活動の再開に伴い国際商品市況は持ち直しが続いていたが、このところそのペースは鈍化傾向にある。足元では、ワクチン普及による経済正常化を期待する動きが商品市況でもみられるが、ワクチン普及には時間を要するほか、欧米を中心として新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがきかなくなっている。そのため、需要の回復はあまり期待できず、今後も国際商品市況は一進一退の動きが続くと見込まれる。国内企業物価指数は当面、前年比▲2%台での推移が続く公算が大きい。

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(2)需要段階別指数は、消費税を除くベースで作成されている


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山下大輔(やました だいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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