前回は「投信ランキング」との上手な付き合い方を紹介しました。

投資は自己責任。投資信託(以下、投信)の購入時に金融機関から提案された場合や雑誌でおすすめの場合でも、しっかり判断して購入する必要があります。今回は、購入時に注意したいポイントをお届けします。

どのような投資信託がいいのか?

投資信託
(画像=pressmaster/stock.adobe.com)

「良い投信」とは、自身の投資方針にあった投信です。自身のライフスタイルやリスク許容度に応じたふさわしいファンドを選ぶ力が求められます。過去の成績でなく「商品性」を意識して選択しましょう。

6つの注意ポイント

商品性を選ぶ際に必要な6つの注意ポイントを紹介します。

ポイント1. ファンドの「アセットクラス」をチェック
まずは投資スタイルと投資対象(アセットクラス)を決めましょう。長期運用なのか短期の売買益狙いなのか、国内株型なのか外国株型なのか、国内債券型なのか海外債券型なのか、あるいはバランス型なのか……。これまでの連載で投信の種類や特徴について解説してきました。読者の皆さんの中には、既にある程度の判断軸が備わっているはずです。

ポイント2. インデックス型/アクティブ型をチェック
次に市場の平均値を狙うのか、プラスαを狙うのかを決めましょう。それによってインデックス型投信かアクティブ型投信、どちらへ投資するのかが決まります。つまり、NYダウが年間5%上がるとして、指数と同じ5%のリターンを狙うのか、それ以上を取りたいのかということです。

アクティブ型投信の場合、ファンドの投資方針や投資対象によって運用成績が大きく変わります。なるべく、明確でシンプルなものを選択しましょう。

ポイント3. 運用成績やリスクなどの指標をチェック
アセットクラス、インデックス/アクティブをチェックした後に、運用成績やリスクなどの指標をチェックします。運用成績は、長期実績や短期実績などのリターンだけでなく、シャープレシオや損失が出た場合のリスク指標などをチェックします。運用成績はあくまで過去のものですが、それを踏まえた上で、将来の相場展望、戦略に適したファンドを選んでいきます。運用成績のランキングなどの有益な使い方は前回の連載内容をご参照ください。

ポイント4. 運用資産残高をチェック
ファンドの規模である運用資産残高もチェックすべき項目のひとつです。運用資産残高の大きさは投資家からの人気の高さを表す側面はあるものの、必ずしも実力が高いとは限りません。しかしながら、あまりにも規模の小さなファンドでは十分な分散投資が出来ない場合もあります。また運用残高が10億円を割る場合、強制的にファンドが償還されることもあり得えます。一方、ファンドが運用開始された初期のころはまだ残高が少ないこともありますので、残高が少ない場合は、その理由もチェックしましょう。

ポイント5. 手数料をチェック
手数料(信託報酬+購入手数料)も重要です。一般的に、国内より海外型が高く、インデックス型よりアクティブ型が高いので、カテゴリー別で比較しましょう。

ポイント6. 運用会社をチェック
投信の運用を行う運用会社を選ぶことも重要なファクターです。金融庁が運用会社を「見える化」するために求めているKPI指標が参照になります。詳細は次項で説明します。

金融庁が重視する投信のKPI

金融庁は、長期的にリスクや手数料等に見合ったリターンがどの程度生じているかを投資家に伝わるように、投信の販売会社に対して比較可能な共通KPI(重要業績評価指標))の公表を求めています。顧客ニーズに応える「顧客本位の業務運営」で、「どのような成果」を上げているかを示した指標です。

  • 運用損益別顧客比率
  • 投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン
  • 投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターン

運用損益別顧客比率とは、運用会社の顧客全体で、運用成績がどれくらい出ているかをリターン毎に分類したグラフで、毎年3月末に過去3年分を公表することを求めています。

投資信託預り残高上位20銘柄の分析とは、運用会社の純資産残高上位20(設定後5年以上)のファンドに関して、コストとリターン、リスクとリターンをプロットしたグラフを毎年3月末に過去3年分を公表することを求めています。

運用会社選びも投信を選ぶ上で大切な項目の一つです。どれだけ顧客重視の運用商品が提供できている会社なのかを把握する上で参照してみてください。

どう探せばいいのか?どう探す力を身につければいい?

それでもファンドを選べない場合、つみたてNISAのラインアップから選んでみてはいかがでしょう?
つみたてNISAは、手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託とETFに限定されています。一定水準の条件をクリアしたファンドを運用会社が申請し、金融庁に認可された投信がつみたてNISA対象ファンドとしてラインアップされています。

2020年10月16日時点で、インデックス投信が158本、アクティブ投信が19本、ETFが7本ラインアップされています。NISAや特定口座で購入する場合でもこのリストから選べば大きく外すことはなさそうです。

また前回紹介した投資信託ブロガーの視点から学ぶのも有益でしょう。ブロガーが実際に自分で分散投資し、その結果や失敗談なども含めていろいろ紹介しているので、銘柄選びのヒントになるかもしれません。

投信を見極めるのはシンプルに

誰にとっても「良い投信」は存在しません。今回紹介したステップを意識しながら、自分自身の投資方針にあった投信を選んでください。投資信託を見極めるのは難しいように見えても、投資信託を見極めるポイントは多くありません。自分が理解できて納得できる商品を選ぶために必要なプロセスを身につけましょう。

自分にあった商品は人生のライフステージによっても変わります。次回は、結婚、引っ越し、出産などのライフイベントを踏まえた上での投資の視点をお届けする予定です。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road