いよいよ年末。待ちわびた賞与をもらった人もいるでしょう。また、年末といえば2020年度の確定申告、そして今年の「年収」を考え始める時期でもあるのではないでしょうか。そんな年収と深くかかわりのあるのが、実は「ふるさと納税」です。
この記事では、年収によってどのように「ふるさと納税」を活用できるのかを解説します。1年を振り返るとともに、「ふるさと納税」デビューしてみてはいかがでしょうか。
目次
厳密には納税じゃない?「ふるさと納税」についておさらい
テレビCMなどでもたびたび耳にする「ふるさと納税」。ですが、実際にその制度の内容を正確に知る機会は少ないのではないでしょうか。具体的な活用方法を検討する前に、まず、この制度の概要を押さえましょう。
そもそも「ふるさと納税」って?
そもそも、「ふるさと納税」という制度はなぜ誕生したのでしょうか。その背景には、都市部への人口集中という問題があります。
現在、都市部に暮らす人々の多くは、進学や就職を機に、地方の生まれ故郷を離れた人です。つまり、地方のふるさとで生まれて地元の自治体からさまざまな行政サービスなどを享受しながら成長をしますが、大人になってから納税するのは都市部の自治体、ということになります。
このような状況が続けば、都会の自治体は税収を得ることになりますが、やがて生まれ故郷の自治体は税収が確保できずに衰退してしまいます。こうした問題提起から生まれたのが、「ふるさと納税」です。“納税”という名称になっていますが、厳密には“寄付”になります。納税した金額(寄付金額)は、確定申告を行うことで所得税および住民税から控除することができます。
この制度を活用すれば、都市部に住んでいたとしても、生まれ育った故郷へ恩返しすることができ、それが結果的に“地方創生”への貢献にもつながっていきます。
「ふるさと納税」の3つの意義
「ふるさと納税」の理念として、同制度を推進する総務省は“3つ”の大きな意義を掲げています。
(1)納税者が自分自身で寄付をする自治体を選択するため、税の使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる機会となる。
(2)自身が生まれ育った自治体だけでなく、お世話になった自治体、今後応援したい自治体などへも納税(寄付)できる制度であること。それが自治体の力となり、人や自然環境を育む支援につながる。
(3)各自治体が、「ふるさと納税」の取り組みをアピールすることで自治体間の競争を促すこと。応援されるにふさわしい自治体のあり方を、各々が考えるきっかけになる。
こうした理念から「ふるさと納税」が個々人にとっても、自治体にとっても重要な意味を持っていることがわかります。
「ふるさと納税」と年収の関係。寄付金控除額は人によって異なる
2つめの意義にもあったとおり、「ふるさと納税」は、自身が選んだ自治体に納税(寄付)をする制度です。納税金額(寄付金額)は原則、自己負担額の2,000円を除いた全額が、所得税および住民税からの控除の対象となります。
ただし、年収や家族構成により、全額控除となる寄付金額には上限があります。控除額の計算方法とあわせて、解説していきます。
・所得税および住民税からの控除額の計算方法
「ふるさと納税」では、自身が選択した自治体に直接寄付をします。その寄付をした実際の金額から2,000円を差し引いた全額が原則(一定の上限額があります)として、所得税および住民税から寄付金控除として控除される仕組みとなっています。
▽図中の①〜③の計算方法
① 所得税からの控除 = (ふるさと納税額-2,000円) × 所得税の税率
② 住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税額-2,000円)×10%
③ 住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)
住民税特例分の控除については、その他複雑な計算がありますので、具体的な計算については、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」を参照ください。
上図が基本的な所得税および住民税からの寄付金控除額の計算方法となりますが、年収や家族構成等の条件により、全額控除される寄付金額には上限があります。
上記した「ふるさと納税ポータルサイト」に、給与収入・家族構成別の寄付金控除額の上限の目安となる一覧表が掲載されています。また、給与収入と家族構成、寄附金額を入力すれば上限額が自動計算される『寄付金控除額の計算シミュレーション』というExcelシートも同サイト上で提供されています。
なお、控除額一覧表はあくまで目安として公表されています。具体的な計算については、お住いの市町村担当窓口に問い合わせる必要があります。
考察:高所得者ほど有利な「ふるさと納税額」の年間限度額
「ふるさと納税」は、豪華返礼品などの競争激化などにより、一定の規制がかけられるようになりました。
返礼割合が3割以下とされ、返礼品も地場産品と認められるものに限定されましたが、所得が高いほど相対的な返礼割合が増えるのは明らかです。
下図は、先述の総務省「ふるさと納税ポータルサイト」に公表されている、全額控除されるふるさと納税額の一覧表の一部を引用したものです。給与収入額と家族構成で一覧表示されていますが、あくまでも目安とされていますので、実際にふるさと納税をされる際には、市区町村にしっかり確認してください。
▽全額控除されるふるさと納税額(年間上限額)の目安
ふるさと納税を行う方本人の給与収入 | ふるさと納税を行う方の家族構成 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
独身又は共働き | 夫婦 | 共働き+子1人(高校生) | 共働き+子1人(大学生) | 夫婦+子1人(高校生) | 共働き+子2人(大学生と高校生) | 夫婦+子2人(大学生と高校生) | |
300万円 | 28,000 | 19,000 | 19,000 | 15,000 | 11,000 | 7,000 | - |
325万円 | 31,000 | 23,000 | 23,000 | 18,000 | 14,000 | 10,000 | 3,000 |
350万円 | 34,000 | 26,000 | 26,000 | 22,000 | 18,000 | 13,000 | 5,000 |
375万円 | 38,000 | 29,000 | 29,000 | 25,000 | 21,000 | 17,000 | 8,000 |
400万円 | 42,000 | 33,000 | 33,000 | 29,000 | 25,000 | 21,000 | 12,000 |
425万円 | 45,000 | 37,000 | 37,000 | 33,000 | 29,000 | 24,000 | 16,000 |
450万円 | 52,000 | 41,000 | 41,000 | 37,000 | 33,000 | 28,000 | 20,000 |
475万円 | 56,000 | 45,000 | 45,000 | 40,000 | 36,000 | 32,000 | 24,000 |
500万円 | 61,000 | 49,000 | 49,000 | ★44,000 | 40,000 | 36,000 | 28,000 |
2000万円 | 564,000 | 564,000 | 552,000 | 548,000 | 552,000 | 536,000 | 536,000 |
2100万円 | 599,000 | 599,000 | 587,000 | 583,000 | 587,000 | 571,000 | 571,000 |
2200万円 | 635,000 | 635,000 | 623,000 | 619,000 | 623,000 | 607,000 | 607,000 |
2300万円 | 767,000 | 767,000 | 754,000 | 749,000 | 754,000 | 642,000 | 642,000 |
2400万円 | 808,000 | 808,000 | 795,000 | 790,000 | 795,000 | 776,000 | 776,000 |
2500万円 | 849,000 | 849,000 | 835,000 | ★830,000 | 835,000 | 817,000 | 817,000 |
(出典:総務省)
表からも読み取れるように、年収が高いほど年間の上限額は上昇します。具体的なケースを想定し、比較してみましょう(上表内、★のセルを参照)。
年収500万円共働き、子1人(大学生)の場合
全額控除される「ふるさと納税額」の年間上限額は4万4,000円です。上限額まで寄付した場合、最大で1万3,200円相当の返礼品を受け取れることになります(返礼割合:3割のため)。
年収2,500万円共働き、子1人(大学生)の場合
全額控除される「ふるさと納税額」の年間上限額は83万円です。上限額まで寄付した場合、最大で24万9,000円相当の返礼品を受け取れることになります(返礼割合:3割のため)
単純に考えても、高所得者のほうが多くの所得税および住民税控除を享受しながら、相応の返礼品を受け取れることが明白です。ただし控除額の計算方法は複雑で、高所得者は場合によっては実質的な自己負担額が2,000円を超えてしまうケースもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
寄付金控除の2つの申請方法
「ふるさと納税」で寄付金控除を受けるためには、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」か「確定申告」のいずれかの方法で申請手続きする必要があります。それぞれについて解説します。
申請方法1:ふるさと納税ワンストップ特例制度
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」で申請できる方は、確定申告が不要な給与所得者などで、かつふるさと納税先の自治体数が5団体以内という条件があります。確定申告が必要となる「給与収入が年収2,000万円超」の方や6団体以上にふるさと納税を行った方は、この制度を利用して申請することはできません。
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」で申請を行った場合、所得税の税額控除は行われません。その代わりに、「ふるさと納税」を行った翌年の6月以降に支払う住民税から減額される仕組みになっています。
▽寄付金控除適用のながれ
① 「ふるさと納税」を行った先の自治体に、ワンストップ特例申請書および一定の本人確認書類などを送付することで申請ができます(申請期限は寄付をした翌年1月10日まで)。
② 申請者が居住する自治体に、ふるさと納税先の自治体から、控除に必要な情報が送られます。
④ ふるさと納税を行った、翌年度分の住民税が減額されます。
申請方法2:確定申告
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の対象ではない方、もしくは「ふるさと納税ワンストップ特例」を申請しない方が寄付金控除の適用を受けるには、確定申告が必要です。
▽寄付金控除適用のながれ
① 自身で選定した自治体に、「ふるさと納税」(寄付)を行います。
② ふるさと納税先から、確定申告に必要な書類が送られてきます。
① 自身の所轄税務署に確定申告書を提出します。(②の必要書類を必ず添付)
④ 「ふるさと納税」を行った年分の所得税から寄付金控除として税額が控除されます。自身が負担した所得税が上限とされます。負担していない税額は還付されません。
④‘ 「ふるさと納税」を行った翌年度分の住民税が、控除されます。
※確定申告の情報は、申請者の住所地市町村に共有されます。
高所得者には引き続き、魅力ある制度
最近では、副業を公認している企業も増えていることから、給与所得以外の所得の金額が20万円を超える方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。給与所得以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となります。
また、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を申請したにもかかわらず確定申告を行なってしまうと、対象期間内に行った「ふるさと納税ワンストップ特例制度」への申請がすべて無効となるので、ご注意ください。
「ふるさと納税制度」は返礼割合が3割までに規制がかかり、うま味がなくなったのではないかと思われがちですが、高所得者層にとっては引き続き魅力ある制度となっているようです。ぜひ、2021年にデビューされてみてはいかがでしょうか。(提供:JPRIME)
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