個人投資家で米国株に投資する人が急増している。米国株のパフォーマンスが日本株を上回っている上に、小口資金で投資ができる米国株が多いからだ。ここでは、米国株投資をする上で知っておくとお得な知識「外国税額控除」について解説しよう。
人気を集める米国株投資
米国株に熱い視線が集まっている。ある大手ネット系証券では、米国株取引がコロナショック以前の数倍以上になっているという。新型コロナウイルスの影響で巣ごもりした若者が給付金などを元手にスマホ等のデバイスで株式投資を始めたことで、国内株だけでなく米株のトレードも増えているようだ。
巣ごもりトレーダーは、生まれたときからネットや携帯があった世代だ。アップルやグーグルといった米国の大手プラットフォーマーにも慣れ親しんでいることもあって、米株投資に全く違和感がない。米株は日本株よりパフォーマンスに優れたものも多く、1株単位でトレードできるので日本株よりも小口の資金から投資が可能なこともメリットだ。アップルも1株なら4万円程度で買える。 (2020年7月現在)
株式投資は上昇する市場にチャンスがある
ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は2020年3月のコロナショックの暴落から急速に値を戻し、6月5日にはコロナショック前の2月19日の高値9,838ドルを抜いて過去最高値をつけた。その後も6月9日には初の10,000ドル代乗せ、7月13日には10,824ドルと過去最高値を更新している。新型コロナ対策で、トランプ大統領が過去最大の景気対策、FRBが過去最大の金融緩和を行っていることが株高の背景である。
ナスダック市場の上げを牽引しているのは米国を代表する大手テクノロジー企業だ。米国で時価総額トップ5のGAFAM (グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトの総称) 合計の時価総額は5月9日に5兆3,000億ドル (約560兆円) に達し、日本の東証1部2,172社の合計の時価総額約550兆円を上回った。2016年末では、東証1部がGAFAMの2倍以上だったが、その後日本株がほぼ横ばいだったのに対し、マイクロソフトやアマゾンは2倍以上に上昇するなどGAFAMは好業績を背景に株価を大きく上げたためだ。
基本的に株式投資は、上昇相場で利益を出す方が下落相場や膠着相場で利益を出すよりはるかに易しい。日経平均が平成バブルの1989年につけた38,957円の高値を30年以上経った今でも抜けないのに対し、米国市場はナスダックだけでなく、NYダウも毎年のように過去最高値を更新している。米国株は日本株より稼ぎ易いという見方をする投資家が増えるのは当然だろう。
外国株取引をするのに知っておきたい「外国税額控除」
外国株などの海外投資収入に対しては、現地 (海外) で一旦課税され、日本でも所得税及び特別復興税と住民税が課税されるため、結果として二重課税となる。外国税額控除は、これを確定申告することで控除できる制度である。ただし、NISA口座は適用外とされている。
●「外国税額控除」の計算方法
ステップ1:所得税の控除限度額及び復興特別所得税の控除限度額の算出
まず次の算式を用いて、所得税・復興特別所得税それぞれの控除限度額を算出しよう。
- 所得税の控除限度額=その年分の所得税の額× (その年分の調整国外所得金額 / その年分の所得総額)
- 復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額× (その年分の調整国外所得金額 / その年分の所得総額)
ステップ2:外国税額控除の算出
次に、外国税額控除を算出しよう。
- 控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額に満たない場合は、控除対象外国所得税の額
- 控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額を超える場合は、所得税の控除限度額と次のイ又はロのいずれか少ない方の金額の合計額
イ 控除対象外国所得税の額から所得税の控除限度額を差し引いた残額
ロ 復興特別所得税の控除限度額
外国税額控除は、まず所得税から控除し、所得税で控除しきれないときは県民税から控除し、さらに控除しきれないときには市民税から控除する、という3段階方式である。外国税額控除の限度額は、配当控除や住宅ローン控除などの税額控除をすべて差し引いた残額が限度額となる。
●控除を受けるために必要な書類
外国税額控除を受ける場合には、確定申告書に以下の書類を添付することが必要となる。
- 外国税額控除に関する明細書:税務署か国税庁HPでダウンロード
- 外国所得税を課されたことを証する書類:証券会社が発行する「年間取引報告書」や「支払通知書」
- 外国所得税の名称、金額、納付日、国もしくは地方公共団体の名称、外国税額控除の対象であることがわかる記載のある書類
確定申告で外国税額控除の適用を
外国株投資でやや面倒なのが二重課税の控除だが、外国税額控除に関する明細についている「書き方」に沿って進めていけば、それほど難しいことではない。ぜひ、確定申告で外国税額控除の適用を申請しよう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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