「世の中には、本当にやるべき仕事に集中できていない社長が多い」と語るのは、経営コンサルタントの小宮一慶氏。小宮氏は、いくら頑張っていても結果につながらない「残念な社長」にならないためには、「社長にしかできない仕事」に集中し、正しい頑張りをすることこそが重要だと言う。

そこで今回は、そんな小宮氏の著書『できる社長は、「これ」しかやらない』の中から、「社長の時間に対する意識」について語っていただいた。

※本稿は、小宮一慶著『できる社長は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

社長は「機会追求の時間」を増やすべし

社長の時間に対する意識
(画像=PIXTA)

時間というのは、貯めておくことのできないものです。誰もが1日24時間と限定されている。この有限な時間という資源を活用するためには、経営者は、仕事での自分の時間を次の3種類に分けて考えるべきです。

(1)機会追求の時間
(2)現状維持の時間
(3)問題解決の時間

1つめの「機会追求の時間」とは、組織の未来のために使う時間です。新しいお客さまを獲得する方法や計画を考える、新規事業の構想を練る、有能な人材獲得や教育、また自身の勉強など、将来の成功の獲得のために使う時間です。

2つめの「現状維持の時間」とは、現在の事業を維持するために使う時間です。もちろん、これも重要ですが、これだけでは事業は伸びません。社内のミーティング、現場視察、お客さま訪問などは、基本的にこの時間です。

3つめの「問題解決の時間」とは、問題が発生したときに対処するための時間です。お客さまからのクレームや事故、製造設備の故障、流通の不備などのトラブルのほか、自然災害や、今回のコロナ禍のような社会的に生じた問題対応もここに入ります。これは、通常に戻るために使う時間です。

結論から言えば、社長は「(1)機会追求の時間」を最大化すべきです。現状維持も問題解決ももちろん大切なことですが、社長は自分の時間を過去や現在のことのために費やしすぎてはいけません。会社の将来、10年後を考えるのが仕事なのですから、未来のために費やす時間を増やしていくべきなのです。

未来のための時間を、あえて「機会追求の時間」と名づけたのは、事業の機会を増やしたり伸ばしたりすると考えられることに費やす時間という意味があります。そう考えると、例えば人を育てることも、未来を築くために大切な時間だという認識ができるでしょう。

経営人材の育成は、最重要課題の1つです。実際、経営人材の育成に社長自らが多くの時間をかけている会社では、やはり業績が中長期的に伸びています。

毎日忙しく過ごすなかでも、意識的に、機会追求につながる時間を持つことが大切です。「なかなか時間がなくて、困っている」という人は、自分がやるべきことを3つの時間に分けて整理してみることと、仕事以外の時間の使い方を考えるべきです。毎日、ゴルフや飲み会などで遊びほうけていて「時間がない」などと嘆いているのは論外です。

「これは会社の未来をつくる時間か?」と自問する

機会追求の時間を増やすためには、繰り返しになりますが、「やらないことを決める」ことが大事です。「(2)現状維持の時間」は、時間を減らすことや部下に任せられることが多いです。

例えば会議。進捗状況の報告などは事前にメールで送るなどで時間を減らし、その分、将来のことを議論するための時間を増やす。現状維持の仕事は部下に任せたほうがいいです。そのほうが部下も育ちます。一方、チェックとアドバイスだけは確実にする。「任せる怠慢」にならない注意も必要です。

「(3)問題解決の時間」も同様です。こちらは、トップが出ていって話をするからうまく収まるということもありますが、これだけでは会社の未来はおぼつきません。

例えば、コロナ問題対策にしても、社内のソーシャルディスタンスをどうするか、テレワークをどう管理するかということは、任せられる問題です。「お客さま第一」などの原理原則を普段からきちんと徹底していれば、部下でも結論は出せるはずです。

もちろん、重大な問題は、社長自ら「指揮官先頭」が必要ですが、部下が自分で原理原則に従って動くことができれば、その分、社長は「機会の追求」に時間を使うことができます。

できる社長は、「これ」しかやらない
できる社長は、「これ」しかやらない
小宮一慶(経営コンサルタント)
できる社長と残念な社長の違いとは。人気経営コンサルタントが「できる社長」に求められている「社長の本当の仕事」を語る。

小宮一慶(経営コンサルタント)
(『THE21オンライン』2020年10月24日 公開)

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