不動産投資をしていくうえでキャッシュフローが悪化しデッドクロスのリスクに直面するケースがあります。デッドクロスが危険な理由は、税務的に黒字となっているにもかかわらず収支は赤字となってしまうため、最悪の場合「黒字倒産」となる可能性があるからです。本稿では「デッドクロス」について発生する原因や対策方法を解説します。

デッドクロスについて詳しく知らない人は、ぜひ参考にしてください。

そもそもデッドクロスとは?【発生する理由も解説】

不動産投資,デットクロス
(画像=adrian_ilie825/stock.adobe.com)

不動産投資では、現金の支出を伴わずに経費として計上できる減価償却を活用します。デッドクロスとは、毎月の住宅ローン返済額のうち経費として計上できない元金部分の金額が減価償却費を上回った状態です。減価償却とは、物件購入にかかった費用のうち建物部分における費用の何割かを減価償却費として翌年以降に繰り越し経費として計上できる仕組みになります。

減価償却費の計算式は「建物価格÷耐用年数=年間の減価償却費」です。例えば建物価格が3,000万円、耐用年数5年の物件を購入した場合は、減価償却費の年額は600万円となります。減価償却費を利用すれば2年目以降は実際の支出を伴うことなく所得を抑えられるため支払う税金も少なくすることが可能です。

不動産ローンの返済額は「元金+利子」となります。しかし経費として計上できるのは、建物と設備に関する利子のみです。住宅ローンにおける元金返済分は、経費として計上できないにもかかわらず帳簿上の利益は黒字のため所得税が加算されます。前述の通りローンの元金返済額が減価償却費を上回るとデッドクロスに陥ってしまうのです。

デッドクロス状態が続くと元金返済で帳簿上は黒字のまま手元のキャッシュがなくなりローンの返済金や税金を支払えなくなる「黒字倒産」につながります。そのため不動産投資を検討している場合は、十分に留意しましょう。

デッドクロス対策で把握しておくべき要素について解説

デッドクロスが発生する要因は大別すると「減価償却費の減少」「毎月の手残り金が減少」となります。以下よりそれぞれについて解説しますのでしっかりと把握しておきましょう。

減価償却について

不動産などの固定資産は、経年とともに残存価値が減っていき不動産に定められた耐用年数をもとに毎年経費として計上できる減価償却費が決まります。減価償却費の計算方法は「定額法」「定率法」の2種類です。

・定額法
不動産の耐用年数にわたり毎年の減価償却費を計上する方法。毎月の計上額は一定です。

・定率法
毎年決められた比率で減価償却費を計上する方法。初年度ほど計上できる金額が多く経年とともに減っていきます。

いずれの計算方法でも減価償却期間が終了すれば一気に所得税が増えることは変わりません。定率法の場合、年々計上可能な額が減っていくため、よりデッドクロス発生に注意する必要があります。

年々手残り金が減少していく要因について

毎月支払う不動産投資用ローンの返済金を一定にするため、ローンの返済方法に元金均等返済を選択している場合、経年とともに返済金における元金の内訳が多くなっていきます。逆に経費にできる利息分は減少するため、所得税も段々と増えいき減価償却費の減少と相まってデッドクロスが発生する可能性が高まるのです。

不動産投資では、経年による物件の価値減少により入居率や賃料が減少し家賃収入が減っていくリスクも懸念されます。デッドクロスに陥ったとしてもローンの返済金や税金を支払うだけの現金があれば倒産する心配はありません。しかし経営状態が悪化していると手残りの金額がどんどんなくなっていくため、デッドクロスにより経営破綻となります。

不動産投資における3つのデッドクロス対策

以下の項目より不動産投資におけるデッドクロス対策方法について紹介します。

借入金の返済期間を短くする

デッドクロスの対策方法として「ローンの返済期間を短くする」というものがあります。ローンの返済期間を短くするためには、物件の購入時になるべく多くの自己資金を用意しそもそもの借入金額を抑える手法が有効です。「どの程度自己資金を投下するのか」という判断基準については、収益シミュレーションを行うことである程度把握できます。

収支シミュレーションでは、毎月の家賃収入からローンの返済金や経費などの支出金を差し引くことで手元に残るキャッシュの予測が立てることが可能です。それにより物件購入からどの程度経てば資金繰りに余裕が出るのか、ある程度の目星をつけることができます。減価償却費とローン返済額は、物件購入前に分かるため、そこから収益について概算し物件購入に使用する自己資金の目安としましょう。

さらにキャッシュフローに余裕がある場合は、借入金の繰上返済をするとさらにデッドクロス発生のリスクを低減できます。物件購入からデッドクロスのリスクが高まるまでには期間があるため、不動産投資で得た収益の使い道の一つとして検討の余地があるでしょう。

減価償却期間の長い物件を購入する

デッドクロスに直面するリスクを下げるためには、新築や築浅の物件を購入するのも効果的です。築年数の浅い物件は高額なため、減価償却期間を長く設定できます。そのためデッドクロス発生リスクが高まる前にローンを完済できる可能性も生まれます。ただし減価償却期間を長く設定すればするほど毎月計上できる経費は少なくなるため、初期の節税メリットも小さくなる点には留意しましょう。

デッドクロスを避けるためには、いわゆる「築古物件」と呼ばれる築年数の長い物件の購入は避けたほうが懸命です。中古物件で減価償却費用が低額の物件は、減価償却期間も短く課税額が多くなるため、デッドクロスの発生リスクも高いといえます。

元金均等返済を利用する

不動産投資ローンの返済方法には、元利均等返済のほかに毎月返済する元金が一定となる「元金均等返済」があります。元金均等返済の場合、返済初期は借入金の残額が多いため利息が多くなるのが特徴です。しかし年数経過とともに毎月の返済額自体は減っていくため「減価償却期間が終わってもローンの返済があるため収支が悪化する」というデッドクロスの発生要因への対策方法となります。

ただし毎月の返済額が一定のため、返済計画が立てやすい元利均等返済とは逆に不動産投資初期の収支が悪化しやすいことが懸念材料です。デッドクロス発生前に収支が悪化してしまっては、本末転倒のため、元金均等返済を利用する場合でも返済計画の策定は慎重に行いましょう。

デッドクロスがどうしても発生してしまう場合の対処法とは?【出口戦略が重要】

  • 節税目的のため減価償却期間の短い物件を購入した
  • 資金の都合上、耐用年数を超えてローンを組みたい

上記のようなケースでは、どうしてもデッドクロスを避けにくくなっています。キャッシュフローが悪化しデッドクロスの危険性が高まった物件を保有し続けるメリットはあまりないため、早い段階から物件の売却を計画しておきましょう。新築・築浅の物件の場合、築古物件に比べ売却時の値段もつきやすく買い手も比較的スムーズにできる点がメリットです。

場合によっては、デッドクロス発生前に所有物件を売却し別物件を購入したり資産化したりする出口戦略も選択しやすくなります。物件売却のタイミングは、物件の取得した年の1月1日から満5年を迎えて以降にしましょう。物件取得から5年が経過すると短期譲渡所得が長期譲渡所得となるため、物件の売却益に課税される譲渡所得税が30%から15%、住民税が9%から5%に下がります。(復興特別所得税を除く)

ただし減価償却期間が終了するタイミングで都合よく不動産が売却できるとは限りません。そのため「どのように物件を売却するのか」という出口戦略は、長期的な目線を持って早い段階から計画しておくことが大切です。

デッドクロス回避には手残り資金を多くしよう

デッドクロスは、ローン返済額の元金部分が減価償却費で節税できる金額を超えた際に発生します。デッドクロスに陥ると帳簿上は黒字のまま手元のキャッシュがなくなる黒字倒産につながる可能性があるため、注意が必要です。「購入時に自己資金を多く用いる」「減価償却期間を長くする」などデッドクロス対策はさまざまあります。

デッドクロス対策の考え方の基本は「いかにして手残りのキャッシュを多くするか」となるため、不動産投資を行う際には念頭に置いておきましょう。(提供:Incomepress


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