自宅のリフォームにはまとまった費用がかかりますが、その際に必ず活用したいのが「所得税の減税制度」です。この記事では「住宅ローン控除」をはじめとする、リフォーム時に活用できる所得税の減税制度の概要を解説するとともに、各制度でどれほどの減税が受けられるのかを試算し、解説します。

目次

  1. 住宅リフォームには3種類の減税制度がある
    1. (1)控除期間、最大控除額ともに突出している「住宅ローン減税」
    2. (2)1年あたりの控除額が最大化しやすい「投資型減税」
    3. (3)中間的な特徴を持つ「ローン型減税」
  2. 最大限度額や併用可能な制度は、工事の種類で決まっている
    1. (1)住宅ローン減税は、投資型減税の耐震リフォームとのみ併用可能
    2. (2)投資型減税は、併用する工事の種類で最大限度額が変化
    3. (3)ローン型減税は、投資型減税の耐震リフォームとのみ併用可能
  3. 住宅ローン控除・投資型減税・ローン型減税、どれが有利?
    1. (1)住宅ローン減税は、大規模なリフォームの際に有効
    2. (2)投資型減税は、小規模なリフォームの場合の活用が現実的
    3. (3)ローン型減税は、住宅ローン控除が適用できない場合に検討したい
  4. リフォーム税制の活用のポイントとその注意点

住宅リフォームには3種類の減税制度がある

住宅ローン控除,減税制度
(画像=indysystem/stock.adobe.com)

住宅リフォームには、さまざまな減税制度が用意されています。その中で、所得税が控除される3つの制度を紹介します。

まずは図表1をご覧ください。それぞれ、「ローンの要件」「対象となるリフォーム工事」などの条件を満たす場合に、所定の計算方法で算出された所得税額が控除される制度になっています。控除された所得税は、全額還付されることになります。

▽図表1. リフォーム減税制度の概要

制度の種類ローンの要件対象となるリフォーム工事控除期間(年)控除額の計算最大控除額
住宅ローン減税・ローンを利用
・償還期間10年以上
・耐震
・バリアフリー
・省エネ
・同居対応
・長期優良住宅化
・その他の増改築工事
10~13年年末ローン残高の1%400万円 or 480万円
(480万円:消費税10%でリフォーム工事を行い、入居期限等の条件を満たした場合)
投資型減税・ローンの有無によらない・耐震
・バリアフリー
・省エネ
・同居対応
・長期優良住宅化
1年
1回限り
標準的な工事費用相当額-補助金等、または控除限度対象額のどちらか少ない方×10%20万円~50万円
(リフォーム工事の種類および組合せで最大控除額が変わる)
ローン型減税・ローンを利用
・償還期間5年以上
・バリアフリー
・省エネ
・同居対応
・長期優良住宅化
5年(A)〔対象となる改修工事費用-補助金等〕、または控除対象限度額250万円のどちらか少ない方×2%

(B)A以外の改修工事相当部分の年末ローン残高×1%
※控除対象限度額(A+B):1,000万円
62.5万円
(12.5万円/年×5年)
※図版は、国土交通省住宅局「住宅リフォームガイドブック」(平成29年度7月版)をもとに筆者作成
【参考】国土交通省住宅局「住宅リフォームガイドブック」(平成29年度7月版)

(1)控除期間、最大控除額ともに突出している「住宅ローン減税」

おなじみの方も多いと思いますが、「住宅ローン減税」はリフォームに限らず、新築住宅・中古住宅の購入にも適用される制度です。リフォームに適用する場合は、償還期間10年以上の住宅ローンを組んで所定のリフォームを行う必要があり、制度利用すると年末のローン残高の1%相当額が還付されます。

この制度のメリットは減税期間が10年から13年と長期にわたるため、最大控除額が400万円から480万円の高額になることです。

最大控除額に近づけるためには、4,000万円以上のローンを組む必要があります。実際、4,000万円規模のローンは現実的ではありませんが、1,000万円程度のリフォーム工事でも94万程度の減税が可能です(図表3)。高額・長期にわたる減税制度として、まず初めに考えるべきものということができます。

(2)1年あたりの控除額が最大化しやすい「投資型減税」

「投資型減税」は、ローンを利用しない場合、または償還期間が5年未満のローンを利用する場合に検討すべき制度です。控除額などの条件は次のとおりです。3制度のなかでは最も控除期間が短い代わりに、1年間の控除額が大きくなりやすい特徴があります。

  • 控除期間:1年(リフォームを完了した年の所得税が減税になる)
  • 控除額の計算方法:国土交通省が定める標準的な工事費用相当額-補助金等の金額、または工事ごとの控除対象限度額のどちらか少ない方の10%
  • 最大控除額:工事の種類および組合せにより最大控除額が変わるものの、1工事あたり20万円から50万円

(3)中間的な特徴を持つ「ローン型減税」

「ローン型減税」は、ローンの償還期間が5年以上の場合に利用できるリフォーム減税制度です。控除額の計算は次のとおりです。最大控除額はトータルで62.5万円となり、投資型減税を上回る節税効果が特長です。

  • 控除期間:改修後、居住を開始した年から5年間
  • 控除額:A+B(限度額1,000万円)
  • (A)〔対象となる改修工事費用¬-補助金等の金額〕または〔控除限度対象額250万円〕のどちらか少ない方×2%
  • (B)A以外の改修工事相当部分の年末ローン残高×1%
  • 最大控除額:62.5万円(12.5万円×5年間)

控除の特性および規模とも、住宅ローン控除の縮小版といったイメージです。ただし、投資型減税よりは控除期間や控除額の点で規模は大きい制度となっています。

最大限度額や併用可能な制度は、工事の種類で決まっている

リフォーム減税制度の対象となる工事は、6種類(耐震、バリアフリー、省エネ、同居対応、長期優良住宅化、それ以外の増改築工事)です。リフォームの種類によって最大控除限度額が異なったり、減税制度を組み合わせて適用できるため、あらかじめ確認しておく必要があります。

▽図表2. リフォーム工事の種類別に見た最大控除額と組み合わせ例

減税制度の種類最大控除限度額工事の組み合わせ(例)
耐震バリアフリー省エネ同居対応長期優良住宅化それ以外の増改築工事
住宅ローン減税400万円 or 480万円住宅ローン減税+投資型減税の耐震リフォーム

425万円~505万円
投資型減税25万円20万円25万円25万円25万円(耐久性向上+耐震または省エネ) or 50万円(耐久性向上+耐震+省エネ)すべて投資型減税

耐震+バリアフリー+省エネ+同居対応に加えて太陽光発電設備を設置
105万円
ローン型減税
特定条件によって適用可能
62.5万円62.5万円62.5万円62.5万円
特定条件によって適用可能
投資型減税の耐震リフォーム(+25万円)と組合せ可能

ローン型減税の各工事で組合せ可能(組合わせても最大控除額は増えない)
※図版は国土交通省住宅局「住宅リフォームガイドブック」(平成29年度7月版)をもとに筆者作成
国土交通省住宅局「住宅リフォームガイドブック」(平成29年度7月版)

(1)住宅ローン減税は、投資型減税の耐震リフォームとのみ併用可能

住宅ローン減税は、上記6種類の工事すべてに適用することができます(「その他の増改築工事」は、“増改築等工事証明”として認められる範囲内に限る)。

ただし、住宅ローン減税と併用できる減税制度は、投資型減税の耐震リフォームのみです。その場合、住宅ローン減税の最大控除額に加えて、最大25万円の所得税が控除されることになります。

(2)投資型減税は、併用する工事の種類で最大限度額が変化

投資型減税は耐震・バリアフリー・省エネ・同居対応・長期優良住宅化の5工事に適用可能です。

また、耐震リフォーム工事は住宅ローン減税およびローン型減税と組み合わせることが可能ですが、他の工事は、投資型減税内でしか併用できません。ただし、投資型減税同士の組合せでも、耐震+バリアフリー+省エネ+同居対応のリフォーム工事に加えて、太陽光発電設備の設置工事を行う場合は最大控除額が105万円になります。

(3)ローン型減税は、投資型減税の耐震リフォームとのみ併用可能

ローン型減税は、基本的にバリアフリー・省エネ・同居対応・長期優良住宅化の4工事に適用可能です。投資型減税の耐震リフォーム工事とのみ組み合せが可能であることを除いて、ローン型減税内でしか併用できません。

住宅ローン控除・投資型減税・ローン型減税、どれが有利?

それでは、これらの減税制度のうち、どれが最も有利か試算してみましょう。図表3は減税制度のうち、代表的なパターンと思われるものを取り上げて比較表の形にしたものです。

▽図表3. リフォーム減税の3制度における減税額比較

住宅ローン控除投資型減税ローン型減税
リフォームの種類全般減税の期間バリアフリー耐震+バリアフリー+省エネ+同居対応+太陽光減税の期間バリアフリー減税の期間
総契約金額1,000万円1,000万円 300万円1,000万円 1,000万円
うちローン金額900万円900万円 -- 900万円
ローン年数30年15年 -- 15年
借入金利(年利)※1.7%1.7% -- 1.7%
毎月返済金額3万1,932円5万6,681円 -- 5万6,681円
定額減税0円0円 20万円105万円1年間25万円5年間計
ローン減税①76万5,620円59万2,240円10年間計-- 24万3,461円5年間計
ローン減税②94万1,542円65万1,769円13年間計-- -
減税額計①76万5,620円59万2,240円10年間計20万円105万円 49万3,461円5年間計
減税額計②94万1,542円65万1,769円13年間計-- -
※図表は筆者作成。変動金利とし、減税期間中は金利が変わらないものとして試算

では、上記の表に基づいて制度ごとに解説していきます。

(1)住宅ローン減税は、大規模なリフォームの際に有効

住宅ローン控除は償還期間10年以上のローンを借り入れた場合、その年末残高の1%が税額控除される制度です。減税期間は通常の場合は10年間、住宅取得の際の消費税率が10%で、入居時期等に関する一定の条件を満たした場合は、13年間となります。

減税額も、投資型減税やローン型減税と比べて大きくなりやすいです。減税額は、住宅ローンの償還期間が長くなるほど大きくなるので、ローンの償還期間が30年といった、比較的規模の大きなリフォームを行う場合に適しています。30年返済ローンと15年返済ローンで比べると、30年返済ローンの方が17万円から29万円ほど減税額が大きくなります。

また、耐震工事を行うのであれば、投資型減税の耐震リフォーム工事と組み合わせ、減税額を最大25万円増額することが可能です。

(2)投資型減税は、小規模なリフォームの場合の活用が現実的

投資型減税は対象工事ごとに最大控除額が決まっています。また、耐震、バリアフリー等の対象工事と認められるためには、国土交通省の基準をクリアしなければなりません。

前項でも触れたように「耐震+バリアフリー+省エネ+同居対応」に加えて太陽光発電設備を設置する工事にすると105万円の控除額が受けられますが、それが成立するのは、このリフォームの組み合わせが当人のニーズに一致する場合に限られるでしょう。

対象工事ごとの最大控除額は20~25万円なので、その条件に当てはまる小規模な工事を行う場合で、ローンを組まない場合に適した減税制度といえます。

(3)ローン型減税は、住宅ローン控除が適用できない場合に検討したい

住宅ローン控除と同様、償還期間を長くすると減税規模が大きくなります。図表3では15年の償還期間の場合の減税額を試算しています。

住宅ローン控除は10年以上の償還期間のあるローンであることが条件なので、5年以上10年未満のローンしか使えない場合にはローン型減税が適しているといえます。

リフォーム税制の活用のポイントとその注意点

リフォーム減税制度には、いろいろなメニューが用意されており、組み合わせまで考慮するとかなり複雑です。単に、減税規模だけで選択するのではなく、まず、自分のやりたいリフォームの内容や規模、および資金計画を決めた上で、その計画がどの減税制度に適合するかを確認し、その上で微調整をして少しでも有利な減税制度を選択するのが現実的だと思われます。

また、減税制度の対象になるかどうかは、国土交通省の定める仕様を満たす必要があるので、リフォーム工事を計画する場合は、工事業者に十分確認し、この計画ならどんな減税制度が受けられるかを確認する必要があります。

また減税制度には、この記事で紹介した“所得税”の控除だけでなく、固定資産税、登録免許税、不動産取得税の軽減制度も用意されています。リフォームの減税制度自体が込み入っているので、工事施行にあたっては工事業者など専門家の意見を仰ぎつつ、適用可能な減税制度を確実に受けられるようにすることをおすすめします。(提供:JPRIME

執筆:浦上 登
東京築地生まれ。大手重工業メーカーで海外営業を担当後、保険部門に勤務。現在、サマーアロー・コンサルティング代表。ファイナンシャル・プランナー、証券外務員第一種。ライフプラン等の個人相談および講演・記事執筆を行う。


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