要介護者が急増する「大介護時代」が到来しつつある。2060年には日本の人口の約4割が65歳以上の高齢者となる見込みだ。医療、介護に対する社会のコストは確実に増加する。この記事では、大介護時代に注目したい投資領域を探っていこう。
人生100年時代で迎える大介護時代とは ?
高齢化社会の進展に伴い、要介護 (要支援) の認定を受ける人が大きく増えている。
厚生労働省の2020年9月の「介護保険事業状況報告」によると、65歳以上の要介護 (要支援) 認定者数は約676万人だった。第1号被保険者の3,569万人のうち約19%がすでに要介護だ。うち、前期高齢者 (65歳以上 75歳未満) が 約74万人で13%、後期高齢者 (75 歳以上) が 約589万人で87%を占める。当然、後期高齢者になるほど要介護 (要支援) の認定者は増える。
人生100年時代を迎え、高齢化社会は今後も続く。内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によると、2018年の日本の高齢者数 (65歳以上) は3,558万人で、高齢化比率 (65歳以上の人口比率) は28.11%だった。同推計によると、2036年には高齢化比率は33.3%と国民の3人に1人が高齢者となり、65年には38.4%に達する。将来は国民の約4割が高齢者になる「大介護時代」が到来するのだ。
大介護時代の課題
大介護時代の一番の問題は介護費用財源不足だ。介護にかかる費用は、70歳から74歳にかかる額に対して、75歳から79歳では2倍以上、80歳から84歳では5倍以上となるのが実態だ。高齢化が進むほど必要になる社会コストは急増する。
介護保険は社会保険制度で運営しており、65歳以上のサービスを受給する世代だけでなく、40歳から64歳の現役世代も負担している。少子化問題は、年金問題同様、介護保険に関しても現役世代に大きな負担増となるのだ。
年金問題は「老後2,000万円問題」でクローズアップされ、政府も自助努力の年金資産の形成のために、NISAやiDecoなどの税制優遇の仕組みを取り入れた。介護保険に関しても今後何らかの対策が必要だろう。
金額的な問題だけでなく、人手不足も深刻な問題だ。2.6人に1人が高齢者なら、介護士の数が足りなくなるのは自明だ。65歳以上の高齢者を65歳以上の高齢者が介護する「老老介護」が増えるという問題がある。「老後破産」とともに「介護難民」の問題は、高齢化社会において深刻な問題となる可能性があるのだ。
大介護時代の課題を解決する注目の投資領域
大介護時代の問題を解決するには、資金面での見直しを進めるとともに、制度面での見直しを進め、新しい仕組みを導入することが必要だろう。また、運用面でも大きな技術革新が必要だとされている。
人手不足解決のためには、介護助手や外国人介護士を増やすなどの施策が必要だ。介護離職として介護のために定職に就けないケースも考えられるため、そういった問題に関する法制の見直しも必要だ。
医療・介護のコストを大きく下げるためには、技術革新やDX (デジタルトランスフォーメーション) の導入が不可欠となるだろう。医師不足が問題となっている過疎地や離島などのためにも、オンラインを利用した遠隔治療、遠隔介護の拡大も必要だ。
また、インターネットやAIといった技術をフル活用し、医療・介護関連のコストを削減しながら質を上げていく必要がある。たとえば、センサーを使って見守り、スマホで異変を知らせる、リフトを使い介護の肉体負担を軽くするなどだ。さらに、介護ロボットの導入などによる介護現場の機械化も必須となるだろう。
このように、「ヘルスケア」と「テクノロジー」を組み合わせた領域を「ヘルステック」と称して、世界的に注目度が増している。また、介護施設や医療・介護関連の人材を扱う企業、医療・介護関連のネットワークや機器などのインフラを提供する企業、医療関係のソフトやデータを扱う企業、医療や介護ロボット領域に強い会社への期待は大きいといえるだろう。
介護市場への投資で社会的に意味のある投資を
「ヘルステック」銘柄への投資は、長期の成長が見込めるとともに、SDGs (持続可能な開発目標) への投資、すなわち持続可能でよりよい世界を目指すための投資としても有効だ。投資した資金が、大介護時代に有効に使われることを願って投資を考えてみてはいかがだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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