投資信託では、複数の投資家から資金を集め、資産運用の専門家が投資を代行します。運用がうまく進めば投資家に利益が分配されますが、運用にはコストもかかっています。
投資信託で発生する費用のうち、運用や管理にかかる費用が信託報酬です。他の費用の種類についてもきちんと理解し、できるだけコストを抑えた運用を心掛けることが、利益を上げる大きなポイントの一つです。
信託報酬とは
投資信託の費用の一つ
投資信託で投資家が負担する費用には、いくつかの種類があります。信託報酬とは、投資信託で発生する費用の一つです。
投資信託の運用・管理には、さまざまなコストがかかっています。運用会社の運用費・報酬・法定資料作成費用、販売会社の取扱費・分配金や換金代金の支払事務費用、受託会社の資産保管・管理費用が、信託報酬でまかなうコストです。
純資産総額を受益権口数で割った「基準価額」は、信託報酬の金額を差し引いた後の価額です。信託報酬は、投資信託を利用する際の、年会費のようなものと考えれば分かりやすいでしょう。
毎日差し引かれている
信託報酬は、投資家が別途支払う形の費用ではありません。保有する信託財産の中から、純資産総額に信託報酬率を掛けた金額が毎日差し引かれています。
一般的な信託報酬率は、年率約0.5~2.0%です。投資信託説明書に料率が記載されています。保有中に受け取る運用報告書にも、実際に発生した費用が開示されています。
間接的に支払われていることから、意識が及びにくいコストであるといえます。しかし、保有している期間中かかり続けるため、重要なコストとして認識することが大切です。
信託報酬率の傾向
投資信託を選ぶときには、信託報酬率のチェックが重要です。
信託報酬率は実績に対する金額が設定されているわけではなく、「純資産総額の〇〇%」のように、比率として定められているのが一般的です。
しかし、投資信託の残高は基準価額に連動しながら日々変動しています。信託報酬が比率で表示されていても、実際に支払う信託報酬の実額を簡単に把握できないのが実状です。
信託報酬率は、公社債投資信託・ETF・インデックスファンドは基本的に低めで、アクティブファンドは高くなりやすい傾向にあります。一般的に、複雑な運用手法を求められる投資信託は、信託報酬率が高くなりがちです。
他の費用もチェック
販売手数料
商品購入時の商品情報・投資環境に関する情報提供や、購入の際に発生した事務手続きなどの費用を、商品購入時に投資家に支払ってもらう費用です。購入時手数料と呼ばれることもあります。
投資家が直接的に支払うタイプの費用です。販売会社によっては、販売手数料を徴収しないケースもあります。信託報酬率が年会費だとすれば、販売手数料は入会費のようなものだと考えれば分かりやすいでしょう。
監査費用
公募投資信託は、監査法人など第三者機関による会計監査を受けなければなりません。監査を行う機関に支払う費用は、監査費用として投資家の信託財産から日々間接的に差し引かれています。
信託財産留保額
投資信託を解約するときに発生する費用が信託財産留保額です。定められた割合を基準価額に掛けた金額が、解約代金から差し引かれる形で支払われます。投資家が別途支払う必要はありません。
投資家に解約代金を支払うためには、投資信託内の資産を売却しなければならず、そのために手数料がかかります。投資家が解約するための手数料であるため、投資家自身の負担になるよう、解約代金から差し引かれる仕組みとなっています。
金額を算出するための率は、一般的には約0.3%が多いようです。投資信託の中には、信託財産留保額を差し引かないものもあります。
投資信託における諸費用の重要性
投資初心者の場合は、信託報酬を抑えられるに越したことはありません。アクティブファンドに比べインデックスファンドの方が、信託報酬率は低めです。
ハイリターンを狙いやすいアクティブ型は運用に手間がかかりやすいため、信託報酬が高めに設定されています。リスクも高くなるため、インデックスの方がおすすめです。
販売手数料がかからないノーロード商品も同様です。購入するたびに発生する手数料がかからなければ、コストの大幅な節約につなげられます。
諸費用の扱いは、投資信託ごとに大きく異なります。長期的な視点で考えた場合、利益に大きな差がつくこともあるため、諸費用はできるだけ抑える意識を持つことが大事です。
運用管理にかかる費用の確認も大切
投資信託で上手に資産運用を進めるためには、発生するコストの種類を知った上で、手元により多くの利益を残せるよう意識することが大切です。投資信託をはじめとした諸費用の意味を理解し、今後の資産運用に役立てましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
(提供:Wealth Road)