コアCPI上昇率は1年6ヵ月ぶりのプラス

消費者物価
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総務省が10月22日に公表した消費者物価指数によると、21年9月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.1%(8月:同0.0%)となり、20年3月以来、1年6ヵ月ぶりのプラスとなった。事前の市場予想(QUICK集計:0.1%、当社予想も0.1%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比▲0.5%(8月:同▲0.5%)、総合は前年比0.2%(8月:同▲0.4%)と1年1ヵ月ぶりのプラスとなった。

消費者物価
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コアCPIの内訳をみると、ガソリン(8月:前年比16.9%→9月:同16.5%)、灯油(8月:前年比20.0%→9月:同20.2%)の上昇幅は前月とほぼ変わらなかったが、電気代(8月:前年比0.9%→9月:同4.1%)の上昇幅が拡大し、ガス代(8月:前年比▲1.5%→9月:同0.7%)が1年ぶりに上昇に転じたことから、エネルギー価格の上昇率が8月の前年比5.5%から同7.4%へと高まった。

消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解食料(生鮮食品を除く)は8月の前年比0.3%から同0.6%へと伸びを高めた。原材料価格の高騰を受けて食用油、マーガリン、調理食品などの上昇率が高まった。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.55%(8月:0.41%)、食料(生鮮食品を除く)が0.14%(8月:0.07%)、携帯電話通信料が▲1.28%(8月:同▲1.28%)、Go Toトラベルが0.27%(8月:同0.28%)、その他が0.42%(8月:0.52%)であった(Go Toトラベルは当研究所による試算値)。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

上昇品目数が増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、9月の上昇品目数は284品目(8月は279品目)、下落品目数は175品目(8月は181品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は54.4%(8月は53.4%)、下落品目数の割合は33.5%(8月は34.7%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は20.9%(8月は18.8%)であった。

食料(生鮮食品を除く)の上昇品目割合が1年ぶりに50%を上回った。物価上昇の裾野は徐々に広がりつつある。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

コアCPI上昇率は年末にかけて1%程度まで高まる見通し

コアCPIに対するエネルギーの寄与度コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇ペース加速を主因として1年6ヵ月ぶりのプラスとなった。足もとの原油価格高騰を受けて、エネルギー価格は10月には前年比で二桁の伸びとなり、その後も上昇ペースの加速が見込まれる。エネルギーによるコアCPI上昇率への寄与度は9月の0.55%から年末には1%台前半まで高まることが見込まれる。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、原材料価格上昇によるコスト増を転嫁する動きが広がることにより、食料(生鮮食品を除く)は一段と伸びを高める可能性が高い。さらに、12月までは前年の「Go Toトラベル」による宿泊料の大幅下落の反動による押し上げが続く。

コアCPIは年末には1%程度まで伸びを高める可能性が高い。「Go Toトラベル」の裏が出ることによる押し上げ効果が剥落する22年1月以降はいったん伸びが低下するが、携帯電話通信料の大幅下落の影響が一巡する22年度入り後には、コアCPI上昇率は1%台半ばまで加速することが予想される。


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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

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