日経平均株価が10/6(水)の取引時間中に27,293円62銭の安値を付けてから、およそ1ヵ月が経過しました。
日経平均株価は3万円台の回復が意識され、上昇基調は続いている様にみられます。衆議院選挙(10/31)を終えて政治不安が後退したことや、米FOMC(11/3)でテーパリングが決定したものの、FRB(米連邦準備制度理事会)が当面の利上げに慎重な姿勢を示したことなど、株式市場には追い風が目立っています。
米雇用統計の発表(11/5)が終わると、当面のスケジュールでポイントとなるのは、日本の決算発表となりそうです。
11月第2週(11/8~11/12)は連日多くの上場企業が決算発表を予定し、山場となる11/12(金)は703社の発表が予定されています。投資家としては予断を許さない状況が続くでしょう。
こうした中、11/4(木)に時価総額トップのトヨタ自動車(7203)の決算発表が終わったことで、銘柄の入れ替えを本格化する投資家も増えてくると思われます。そこで、今回は決算発表と業績予想の上方修正を行ったトヨタ自動車(7203)を軸に、関連する自動車や自動車部品、工作機械業界の業績動向を踏まえ、その先行きを考えました。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
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トヨタ自動車の上方修正で、関連する業界・銘柄にも投資チャンスか?
トヨタ自動車(7203)は世界一の自動車メーカーであり、時価総額は33兆円を超え、日本の株式市場ではトップ企業です。 そのため、同社の決算発表は個別企業として注目されるだけでなく、株式市場の先行きも左右する重要なイベントであると考えられます。
同社は11/4(木)の取引時間中に決算を発表。2022/3期・上半期は売上高15.4兆円(前年同期比36.1%増)、営業利益1.7兆円(同236.1%増)と増収増益を確保。通期会社予想については、営業利益を3,000億円増額し、2.8兆円(前期比27.4%増)を見込むとしました。
自動車業界には足元で、半導体不足や、原材料高、新型コロナウイルスの拡大などを背景とした生産停止等の逆風が吹き、トヨタも減産を余儀なくされました。しかし、同社は採算の良いSUV(スポーツ用多目的車)への注力や、合理化努力、円安の追い風等により、予想を上回る収益を確保し、業績予想の上方修正につなげました。
図表1は、トヨタ自動車(7203)を取り巻く自動車メーカーや、自動車部品メーカー、工作機械メーカーのうち、3月決算で時価総額1千億円以上の銘柄を、決算発表日の順に並べたものです。
銘柄によって、業績予想の明暗を大きく分けたように思われますが、2022/3期の下半期は、総じて事業環境が好転しそうです。減産の一因となった東南アジアにおける新型コロナウイルスの感染が一巡してきたことなどが挙げられます。
また、トヨタ自動車(7203)は、9月・10月と前年同期比で約37%の減産を余儀なくされましたが、11月以降は前年同期比プラスの増産に転じる見込みです。当面、部品メーカー等による“挽回生産”については、同社が買い取る意向を示していると報じられています。
事業環境の好転に加え、外為市場の追い風も期待できるのではないでしょうか。
FRBが利上げに慎重な姿勢をみせており、足元は円安・ドル高が一服状態です。しかし、利上げのタイミングが前後しても、米国の政策では引き上げられる方向であり、円安・ドル高の方向に変化はないとみられます。
こうした背景から図表1の銘柄の多くは、今が買い場となっている可能性が大きいといえそうです。
図表1 トヨタ自動車の上方修正で今後の業績拡大が期待される自動車・自動車部品・工作機械関連銘柄
コード / 銘柄 / 発表前株価 / 株価(11/5) / 決算発表予定日 / 企業の特徴 / 予想営業利益 / 修正額
<6995> / 東海理化電機製作所 / 1,647 / 1,610 / 10/28 / トヨタが31.6%保有。自動車用スイッチ等を生産。 / 150 / -70
<7205> / 日野自動車 / 1,128 / 1,097 / 10/28 / トヨタが50.1%保有。トラック・バス等の生産に注力。 / 540 / +70
<3116> / トヨタ紡織 / 2,159 / 2,257 / 10/29 / トヨタが30.9%保有。自動車用シートを生産。 / 720 / +0>
<6103> / オークマ / 5,420 / 5,510 / 10/29 / 自社製NC搭載。マシニングセンタを生産。 / 140 / +30>
<6135> / 牧野フライス製作所 / 4,095 / 3,970 / 10/29 / マシニングセンタや、放電加工機等を生産。 / 80 / +9
<6201> / 豊田自動織機 / 9,660 / 9,760 / 10/29 / フォークリフトの生産で世界最大手。 / 1,500 / +0
<6371> / 椿本チエイン / 3,355 / 3,175 / 10/29 / 動力伝道用ドライブチェーンの生産で世界トップクラス。 / 150 / -10
<6472> / NTN / 246 / 235 / 10/29 / ベアリングの生産量で世界トップクラス。 / 60 / -90>
<6473> / ジェイテクト / 1,002 / 1,011 / 10/29 / 旧光洋精工・豊工機。ステアリングを生産。 / 450 / +0
<6902> / デンソー / 8,084 / 8,144 / 10/29 / 世界有数の自動車部品を生産。自動運転技術にも用いられる。 / 4,400 / +0
<7259> / アイシン / 4,315 / 4,095 / 10/29 / 総合自動車部品や、自動車用ATを生産。 / 2,200 / +0
<7282> / 豊田合成 / 2,372 / 2,297 / 10/29 / トヨタが42.7%の株式を保有。樹脂・ゴム製品を生産。 / 430 / -100
<6471> / 日本精工 / 765 / 748 / 11/1 / ベアリングの生産で国内首位。世界でもトップクラス。 / 445 / -85
<7211> / 三菱自動車工業 / 367 / 368 / 11/4 / 自動車生産で国内6位。日産・ルノーと提携。 / 600 / +200
<7203> / トヨタ自動車 / 2,048 / 2,035 / 11/4 / 世界での販売台数が首位。 / 28,000 / +3000
<7270> / SUBARU / 2,270 / 2,215 / 11/5 / 円安メリットを大きく享受か。 / 1,500 / -500
<7267> / 本田技研工業 / 3,409 / 3,409 / 11/5 / 四輪販売が国内2位、二輪販売が世界でもトップクラス。 / 6,600 / -1200
<7202> / いすゞ自動車 / - / 1,580 / 11/8 / トラック、バス、ディーゼルエンジンの生産を手がける。 / 1,700 / 未発表
<7222> / 日産車体 / - / 796 / 11/9 / 日産自動車からの委託で車体開発から生産まで手掛ける。 / 78 / 未発表
<7261> / マツダ / - / 1,025 / 11/10 / 円安はややデメリットか。 / 650 / 未発表
<7269 / スズキ / - / 5,417 / 11/11 / 軽自動車の販売で国内トップクラス。インドに子会社を持つ。 / 1,700 / 未発表
<7201> / 日産自動車 / - / 589.1 / 11/12 / ルノー、三菱自動車と世界3位連合。 / 1,500 / 未発表
※会社資料・報道等をもとにSBI証券が作成。
※「発表前株価」は、取引時間中に決算発表が行われる場合は前営業日終値、取引終了後に決算発表の場合は発表日の終値。今後発表が予定される場合は-で記載。
※「企業概要」に記載の文言について、以下補足事項。 NC・・・数値制御のこと。 マシニングセンタ・・・加工に必要な工具を自動で交換できる工作機械。 AT・・・オートマティック・トランスミッション。自動車の自動変速装置。
※「予想営業利益」は現在の会社予想営業利益。直近の決算発表で修正があった場合は、修正額を記載。
抽出銘柄の投資ポイント
この項では、図表1で抽出した銘柄について、投資ポイントなどをご紹介します。
トヨタ自動車(7203) 下期に世界生産を回復へ
期間:2021/5/14~2021/11/5(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■2022/3期予想を上方修正。
販売台数で世界首位の自動車メーカー。
11/4(木)の取引時間中に決算を発表。2022/3期・上半期は売上高15.4兆円(前年同期比36.1%増)、営業利益1.7兆円(同236.1%増)と増収増益を確保。通期会社予想については、営業利益を3,000億円増額し、2.8兆円(前期比27.4%増)を見込むとしました。
半導体不足や、原材料高、東南アジアの新型コロナウイルス拡大等を背景とした生産停止等の逆風が吹き、同社も減産を余儀なくされていました。しかし、採算の良いSUV(スポーツ用多目的車)への注力や、合理化努力、円安の追い風等により、予想を上回る収益を確保し、業績予想の上方修正につなげました。
2022/3期の世界生産は900万台を予定。9月は51万台(前年同月は84万台)、10月は55万台(同84万台)と大幅減産に追い込まれましたが、2021/10~2022/3は最低で月85万台に引き上げる方針を示しています。
■自社株買いも実施。円安も追い風。
決算発表とともに自社株買い実施の方針も発表。1億2千万株(発行済株式数の0.8%)・取得総額1,500億円を上限に、2021/11/5以降2022/3/31までの期間で実施します。
同社は1ドル1円の円安・ドル高で年間400億円の営業増益要因(参考値)になると見込まれます。今回の業績修正で為替前提を1ドル105円から110円に変えたことも上方修正の要因になりました。ただ、実際の為替相場はさらに円安・ドル高水準で推移しており、業績の下支え要因になりそうです。
豊田自動織機(6201) トヨタの挽回生産に期待
期間:2021/5/14~2021/11/5(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■2022/3期上半期は業績が急回復
1933年、同社の中に設置された「自動車部」がトヨタ自動車(7203)(1937年設立)の始まり。現在でも同社株式の7.2%を保有する第3位の大株主になっています。
売上構成比(2022/3期・上半期)は、世界トップシェアのフォークリフトを生産・販売する「産業車両」が67%で、これが主力事業。トヨタの「RAV4」(世界でもっとも売れているSUVのひとつ)の組み立てを行う「自動車事業」が29%を占めています。
2022/3期・上半期は売上高1.26兆円(前年同期比31.7%増)、営業利益943億円(同212.5%増)、税引き前利益1,378億円(同111.3%増)と急回復。「産業車両」、「自動車事業」ともに大幅増でした。
2022/3期は売上高2.6兆円(前期比22.7%増)、営業利益1,500億円(同26.9%増)の予想が据え置かれました。
■トヨタの挽回生産に期待
株価は3/19(金)に本年高値10,230円を記録。9/7(火)10,110円、11/5(金)10,030円とたびたび1万円台を付けていますが、明確に上抜け切れないでいます。当社は、トヨタ車の生産を請け負う事業がありますが、トヨタの挽回生産に対する不透明感が残っているのかもしれません。
ただ、株価的にはPBRが0.8倍台にとどまっており、割安感も指摘されます。トヨタの「挽回生産」のピッチ上昇が確認されれば、同社株も上昇に転じる可能性があります。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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