『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』より一部抜粋

(本記事は、崔 真淑氏の著書『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』=大和書房、2021年10月21日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

有望な投資先を見つけるキホン

有望な投資先を見つける7つの指標
(画像=kamiphotos/stock.adobe.com)

株価は未来を先取りして動いていくため、その動向を知るためには日々のニュースに敏感になる必要があります。どんなニュースがどのような影響を及ぼすことが多いのか、まず、基本のパターンを知っておきましょう。

どこに注目して見るべきか?

以下のニュースは、株価に影響を与えることが多いとされています。その理由と注意点を見ていきます。

(1)決算予測記事

上場企業は四半期ごとに業績を開示することを義務づけられており、事業年度のはじめの3 か月を第1四半期決算、次の3か月までの合計半年間を中間決算(第2四半期決算)、その次の3か月までの合計9か月を第3四半期決算、1年間の決算を本決算(第4 四半期決算)といいます。最も重要なのは本決算ですが、あらかじめ出された業績予想予想に対して、3か月ごとに発表される数字がどのくらいの進捗(しんちょく)率なのかも重視されます。

ところで、業績に対しては、会社が発表する業績予想のほかにもアナリストやシンクタンク、日本経済新聞社の記者が発表するものがあります。決算の予測記事を読むときは、まず、誰の予測なのかを確認しましょう。

基本的に、決算予測が良い場合は株価にとってプラスです。しかし、実際に発表された決算が予想の範囲内だったときは、株価はそれほど上がらない、あるいは「このあたりで利益を確定しておこう」という投資家の思惑によって売られて株価が下がることもあります。逆に、悪い予想に反して良い結果だった場合、株価が上がることもあります。

情報は日々更新されています。特に、企業が発表する業績予想の上方修正は、株価にプラスの影響を与えることが多いので、身近な情報源を見る際には「業績見通し」「上方修正」のキーワードに敏感になっておきましょう。

(2)新製品・新技術、新規事業

新製品や新技術、新規事業のニュースは、基本的には株価にとってプラスですが、発表された内容が会社の事業全体に対してどのくらい影響を与えそうなのかによって、市場の反応も違ってきます。上場企業のウェブサイトの「IR」のページには「事業構成比率」「業績・財務ハイライト」といった項目が設けられているので、その発表がどの事業部のものなのか、確認しておきます。

『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』より
(画像=『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』より)

(3)海外からの出資

外国人投資家、外国籍企業の国内投資を制限する政府の取り組みを「外資規制」といい、アメリカ、中国等でもそれぞれ行われています。外資規制を盛り込んだ日本の「改正外国為替及び外国貿易法(外為法)」は2020 年6 月から全面適用されています。

たとえば、外国人投資家が指定業種に定められた日本の上場企業の株を買う場合、1%以上の保有から事前届け出が必要になります(金融機関は除く)。グローバル化が進み、海外企業との間の出資や買収が多くなるなかで、こうした規制に抵触した場合はネガティブなニュースになりやすいといえます。投資を検討している会社の海外との資本関係等を確認しておきましょう。

(4)取締役の不祥事、粉飾決算、製品不良

会社の不祥事や製品不良は、もちろん株価にとってはマイナスです。さらに、事後にその会社がどんな対応をとるかで、株価がさらに下がるか、下げ止まるかが変わってきます。深刻な問題の場合、事実関係の明確化、責任の所在を明らかにすること、経営陣の刷新などが、株主や顧客へのメッセージになります。

『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』より
(画像=『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』より)

(5)リストラ、経営者交代

企業が大規模な人員削減、いわゆるリストラを発表するときは、かなり追い込まれた状態だといえます。通常、経営が厳しくなればまず昇給賞与の削減、管理職手当や役員報酬のカット、残業規制、中途採用停止、非正規社員の雇い止め、希望退職……といったステップを踏んだ後で、最後の手段として解雇に行きつく場合が多いからです。大規模リストラで人件費が抑制できれば、短期的には株価にプラスですが、その場しのぎの人員削減にとどまって新しい経営方針などが打ち出せなければ、投資家は失望し、株はまた売られることになるでしょう。

経営者の交代が株価にもたらす影響は、どのような背景で交代するのかによります。業績が上げられない経営者の交代は好感される場合がありますし、カリスマ経営者が引退するケースであれば、その後の不確実性から、投資家が株を手放すという動きになるかもしれません。

(6)資本政策

株式会社が事業を行う資金の源泉は、銀行からの借り入れや社債など返済の必要がある負債と、株式等の発行による返す必要のない資本の合計です。会社の資本政策とは、狭義では株式等の発行や消却、利益剰余金の株主への配当などを指しますが、広義には、経営者が行う財務政策の全般を指します。株主の立場からは、自社株買い、公募増資、株式分割をどのタイミングで行うか、ROE 向上のためにどんな取り組みをしているのかということも注目されます。

(7)外国人投資家の動向

日本株の約7 割が、海外のファンドなどの「外国人投資家」によって売買されています。その割合の大きさから、時には外国人投資家の目線になって日本国内の動きを見ることも大切です。

また、外国人投資家の投資先は日本だけではないので、もし今、世界に投資するとしたらどこが有望か、という視点で市場の動きを見ることも必要でしょう。「Bloomberg」「Financial Times」といった海外の経済メディアにアクセスし、時間がないときは翻訳機能も利用しながら、日本に関する記事を中心にヘッドラインを読む習慣をつけるのも役立ちます。海外の英語記事でチェックしたいのは、日本企業に対して、どのような評価がされ、報道されているかです。外国人投資家、特に欧米の投資家のすべてがアジアや日本の企業の株価に注目しているわけではないものの、記事に取り上げられることで一気に人気化することもあります。

外国人投資家は、知名度も国際競争力も高く、高いROEを保ち、業績が安定して成長している銘柄を好みます。海外から注目が集まりやすい会社ほど外国人投資家比率が高いので、投資先として考えている企業があれば外国人投資家比率を確認しましょう。外国人投資家比率は、ネット証券などのツール内の「株主構成」でも確認できます。

『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』より
(画像=『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』より)
投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本
崔 真淑
エコノミスト。Good News and Companies代表取締役。 東京証券取引所特任講師、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員、日本経済新聞社COMEMOキーオピニオンリーダー、カオナビ社外取締役。
1983年生まれ。神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社。株式アナリストとして資本市場分析に携わり、当時最年少女性アナリストとして、NHKなどの主要メディアで経済解説者に抜擢される。
2012年に独立。2016年、一橋大学大学院(MBA in Finance)修了。2018年から一橋大学大学院博士後期課程に在籍し、コーポレート・ファイナンス分野の研究を行う。株主議決権行使の決定要因、デジタル時代のイノベーション策、それに伴う地域活性化策といったテーマに積極的に取り組んでいる。
学術論文では、山田和郎博士と“Does Passive Ownership Affect Corporate Governance? Evidence from the Bank of Japan's ETF Purchasing Program"を執筆し、投稿中。
経済学・ファイナンス理論を軸に経済ニュース解説、資本市場分析を得意とするエコノミスト、社外取締役や企業アドバイザーとしても活動。主な出演番組は、テレビ朝日『サンデーステーション』、フジテレビ『Live News α』、テレビ東京『昼サテ』、関西テレビ『報道ランナー』、日経CNBCなど。
著書に『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)、『ど素人でもわかる経済学の本』(翔泳社)がある。

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(提供:Wealth Road