11/26(金)の東京株式市場は波乱となりました。

南アフリカで新な変異ウイルスが発見された他、アメリカの早期利上げ観測などが要因とみられます。こうした中、ここ最近の株価上昇局面で“買い"のタイミングを見出しにくくなっていた半導体関連銘柄にとっては、買い場となるかもしれません。そこで今回は、その理由と、半導体関連の14銘柄をご紹介します。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
※YouTubeに遷移します。

■執筆者のプロフィール

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。

<株価急落でどうなる!?東京株式市場>主要テーマ株“半導体"の見方とは

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

1/26(金)の日経平均株価は一時900円近い下げとなるなど、波乱の展開になりました。

株価の下落要因は以下の理由が挙げられます。

・南アフリカで新な変異ウイルスが発見されたこと
・アメリカの早期利上げ観測
・11/26(金)が週末かつ、実質月内最終日(受け渡しベースで11月最終営業日)であったこと
・25日移動平均を下回って取引が開始されたこと
・米国が休場で流動性の高い日本市場でリスクヘッジの売りが出たことで下落速度が加速

12月中旬にかけては5兆円超とされる中間配当金が支払われる予定であり、再投資需要の拡大で需給は締まる(特に12/1が最大の見込み)とみられ、株価は来週以降、反発に向かう可能性があります。

そこで今回は、株価の下落で押し目買いが期待される半導体をテーマに、関連銘柄をご紹介します。

かつて、半導体の用途はパソコン・携帯電話が圧倒的でしたが、現在は5G、AI、IoT、自動車など様々な用途での需要が増えています。11/26(金)付の日経新聞で「日産自動車(7201)が2030年度までに世界の電動車の販売台数を5割に引き上げる」と報じられましたが、トヨタ(7203)も2030年に電動車比率を62%に高める方針など、自動車の電動化により、半導体需要はさらに高まることが期待されます。

半導体の製造といえば、米国、韓国の大手企業が挙げられますが、半導体の製造に必要な装置や部品、材料などについては、多くの日本企業が関連しています。ただ、国内にメーカーが少ないことで、技術やノウハウの蓄積が難しい面もあります。

なお、政府は国内の半導体工場を資金面で支援する方向で、ようやく国が半導体産業の振興に本腰を入れ始めた形です。

以下、すべての条件を満たした銘柄が図表1です。

(1)過去1年間に「日本株投資戦略」または「新興株ウィークリー」でご紹介した半導体関連銘柄。
(2)時価総額500億円以上。
(3)アナリスト3名以上がカバーしている銘柄であること。
(4)今期予想営業増益率が20%以上か、または黒字転換。(予想はBloombergが集計した市場コンセンサス)
(5)来期予想営業増益率が10%以上か、または黒字転換。(予想はBloombergが集計した市場コンセンサス)
(6)時価総額が来期予想営業利益の20倍未満。

上昇期待の半導体関連銘柄 上昇期待の半導体関連銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 上昇期待の半導体関連銘柄
コード / 銘柄 / 株価(11/24) / 騰落率(10/6~11/24) / 主力事業
<4971> / メック / 4,120 / 47.5% / 電子基板向け表面処理薬品メーカー
<6315> / TOWA / 3,310 / 47.2% / 当社開発の半導体樹脂封止装置の方式が業界標準
<8035> / 東京エレクトロン / 61,910 / 37.1% / コータ・デベロッパで約90%のシェア
<7735> / SCREENホールディングス / 11,710 / 31.9% / 枚葉式洗浄装置市場で世界シェアトップ
<6504> / 富士電機 / 5,890 / 25.3% / EVに使うパワー半導体が拡大。旺盛な需要に設備投資
<6902> / デンソー / 8,818 / 24.0% / SiCパワー半導体を車載部品に搭載
<4062> / イビデン / 6,800 / 23.4% / 主にインテル向けにICパッケージ基板を供給
<6479> / ミネベアミツミ / 3,115 / 20.8% / 買収されたミツミ電機がアナログ半導体を手掛ける
<4186> / 東京応化工業 / 7,330 / 16.7% / 半導体製造用フォトレジストで世界首位(約25%)
<6728> / アルバック / 6,690 / 14.4% / 液晶・半導体製造用真空装置の大手
<6963> / ローム / 11,050 / 14.0% / 顧客電子機器メーカー向けにカスタムLSI製造
<4185> / JSR / 4,185 / 11.0% / 半導体製造用フォトレジストでトップクラスの世界シェア
<6407> / CKD / 2,322 / 9.1% / 半導体製造に使う流体制御装置などを製造
<4004> / 昭和電工 / 2,719 / 8.0% / パワー半導体で世界一のインフィニオンに材料を供給

※Bloombergデータ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
※騰落率は日経平均株価が短期的な安値を付けた10/6~11/24までとしました。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

抽出銘柄の投資ポイント

この項では、図表1で抽出した銘柄について、投資ポイントなどをご紹介します。

メック(4971) 急成長中の市場を対象とするグローバル・ニッチ・トップ企業

メック(4971)
(画像=SBI証券)

期間:2021/6/3~2021/11/26(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■コア技術は“密着向上技術"

プリント配線板、ICパッケージ基板等、電子基板向けの表面処理薬品を手掛けています。コア技術は“密着性向上技術"で、銅の表面を粗化することで、樹脂との密着強度を飛躍的に高めることができます。

主な取引先は、イビデン(4062)や新光電工(6967)などで、その先にインテルやアップル、自動車メーカーがあると見受けられます。CPU基板向けでは目立ったライバルはいないと考えられます。

納入先とみられるイビデンは今期売上高が23.7%増、新光電工は40.5%増の会社予想であり、活況を呈しています。同社業績もそれに応じて拡大傾向が続いています。

■今期業績予想を上方修正

2021/12期第3四半期累計売上高は111.5億円(前年同期比27.8%増)、営業利益31.5億円(同71.7%増)と好調。これを受け会社側は今期予想営業利益を35億円から37.5億円(前期比58.2%増)に上方修正しました。

市場の今期予想営業利益は37億円で、会社予想とほぼ同水準。ただ、来期については45億円とさらなる拡大が予想されています。押し目買いを期待したい銘柄のひとつと言えそうです。

TOWA(6315) 半導体を守るための封止(モールディング)装置で世界トップのグローバル企業

TOWA(6315)
(画像=SBI証券)

期間:2021/6/3~2021/11/26(日足)>
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■「モールディング装置」で世界首位

半導体の後工程で使用され、半導体チップを衝撃や温度、湿度等から守るべく、封止して固める「モールディング装置」で推定世界シェア40%のトップ企業です。

売上高(前期)に占める日本の比率は12.9%に過ぎず、中国(36.8%)、台湾(18.3%)、韓国(14.0%)等、半導体生産に強いアジア諸国で活躍するグローバル企業です。

2021/3期の売上高は297億円(前期比17.6%増)、営業利益36億円(同345.6%)、受注高409億円(同53.3%増)と好調。5G通信網整備やサーバー向けに拡大が続く台湾、半導体内製化を進める中国等からの受注が伸びたようです。

■今期業績予想を上方修正

2022/3期第2四半期(累計)の売上高は243.3億円(前年同期比89.1%増)、営業利益は56.7億円(同421.7%増)と急速に拡大しました。中国での内製化の動きが引き続き追い風になっているようです。新型コロナウイルスの感染拡大や、中国電力不足の影響は軽微に済んだ模様です。

これを受け、会社予想営業利益は91億円から115億円(前期比217.9%増)に上方修正されました。市場予想営業利益は今期が112億円、来期は123億円となっています。

東京エレクトロン(8035) 米アプライド・マテリアルズを追う世界的半導体製造装置メーカー

東京エレクトロン(8035)
(画像=SBI証券.gif)

期間:2021/6/3~2021/11/26(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■アプライド・マテリアルズを追う半導体製造装置世界的大手

1963年東京放送(現TBS)の出資で誕生し、当初は輸入商社的な活動が中心でしたが、製造で業容を拡大させました。世界シェアの高い製品が多く、特にフォトレジスト(感光剤)の塗布や現像を行うコータ・デベロッパは世界シェア87%(2020年)と圧倒的。この他、ドライエッチング装置で27%(同)、成膜装置で38%(同)と高シェアを誇ります。

なお、同社は、SBI証券の「テーマキラー!」の「半導体」の購入金額20万円以上のコースで組み入れ比率がトップです。(2021年11月26日16:00時点)

■今期予想営業利益を再び上方修正

2022/3期第2四半期(累計)の営業利益は前年同期比86.3%増。今期の会社予想営業利益は期初4,420億円でしたが、第1四半期発表時に5,080億円に、今回の決算発表ではさらに5,510億円(前期比71.8%増)へと上方修正されました。市場コンセンサスでは今期69%、来期11%の営業増益を予想しています。

半導体関連としては東京株式市場を代表する銘柄で、年初来の株価上昇率(11/25現在)は62%高となっています。

市場では来期予想EPSは2,952円を予想しており、年初来高値64,100円(11/19)でも来期予想PERは21.7倍と極端な割高感はないようです。

ミネベアミツミ(6479) EV市場拡大でベアリング搭載量の増加も

ミネベアミツミ(6479)
(画像=SBI証券)

期間:2021/6/3~2021/11/26(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■ベアリングや小型モーターが得意分野

ベアリングや小型モーターを得意とする総合電子部品メーカー。2017年にミネベアとミツミが統合して誕生しました。情報通信機器や家電、自動車制御モーターに使われる小型ボールベアリングでは世界のシェア60%を誇ります。

11/5(金)に2022/3期・第2四半期(累計)決算を発表。売上高5,302億円(前年同期比14.8%増)、営業利益446億円(同113.3%増)と増収・増益。会社側は通期予想営業利益を870億円から900億円に上方修正しました。

なお、市場では予想営業利益について今期907億円、来期は1,048億円を見込んでいます。決算発表後、株価は一時3,250円まで上昇しましたが、その後下落しました。

■EV化でベアリング増加も。アナログ半導体も期待

中期的にも主力のミニチュアボールベアリングはEV化が進むことによって、1台当たりの搭載数量が加速的に増加すると期待されます。

オムロンの半導体工場を買収(6/30)しており、アナログ半導体も中期的成長ドライバーとして期待できそうです。

株価は目先下離れの様相ですが、75日移動平均や200日移動平均等が下値支持ラインとなりそうです。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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