株式投資で成功するためには、決算に関する資料にしっかり目を通し、業績の動向を確認し、今後の展開を予測することが重要だ。参考データとして、上場会社が公表する「決算に関する資料」には「有価証券報告書」がある。
しかし、有価証券報告書は決算期末から発表までのタイムラグが生じることもある。そこで有効活用したいのが「決算短信」だ。今回は決算短信とは何か、そして決算短信を読み解く3つのポイントについて解説する。
決算短信とは ? 有価証券報告書と何が違うの ?
「有価証券報告書」とは、一定の基準を満たした上場会社などが、決算期末後3ヵ月以内に内閣総理大臣への提出を義務づけられている書類のことだ。企業の概況、事業や経理の状況など、投資判断に関わる企業情報が記載されている。
一方で「決算短信」は、決算内容の要点をまとめた書類の名称だ。記者クラブが、決算発表内容の標準化を目的として上場会社に要請したことで始まり、現在は取引所が様式を定め、すべての上場会社が作成することになっている。
情報量は有価証券報告書のほうが豊富だが、「有価証券報告書を待つのではなく、いち早く決算情報が知りたい」という投資家の声に応えるため、文字どおり決算情報を短くまとめて開示しているのが決算短信だ。
東京証券取引所が定める規則では、決算短信は「できれば決算期末期30日以内、遅くとも45日以内」の開示を求めている。なお、決算期末期50日を超える場合は、開示が遅れた理由の発表も求めている (いずれも該当日が休日の場合は翌営業日) 。
決算短信は「スピード感をもって決算情報を開示すること」が目的で、投資家の間では、確定した決算情報ではないものの、決算の動向を見定める材料として重要視されている。スピード優先のため、有価証券報告書のように監査法人の監査は受けず、東証も監査の終了を待つことなく開示を求めている。
決算短信を読み解く3つのポイント
決算短信の参考様式は、東証のホームページからダウンロードできる。「決算対象は連結か非連結か」「会計基準は日本基準かIFRSか米国基準か」などによって内容は若干異なるが、見るべきポイントは基本的に変わらない。ここからは、決算書を読み解くための3つのポイントについて見ていこう。
①サマリー
まず見るべき部分は、業績や配当のサマリーだ。原則として、1枚目に「1.○年○月期第○四半期の (連結) 業績」や「2.配当の状況」が書かれている。
特に、売上や利益が前期比や前年同期比で、どれくらい変化しているのかが重要だ。良い意味でも悪い意味でも、ビッグチェンジ (大きな変動) が起きていないかどうか確認しよう。
直近で公表されている配当予想から修正があれば、2.に記載される。配当の変化も株価に影響を与える可能性があるので、しっかり確認したい。
②業績予想
次に業績予想を確認しよう。直近はコロナの影響を鑑みて記載していない会社もあるが、原則として、1枚目か2枚目に「3.○年○月期の (連結) 業績予想」が書かれている。
第1四半期、第2四半期、第3四半期の決算短信の場合は、今期予想の修正がないかどうか、ある場合はどれくらいの変化率なのかを確認しよう。第4四半期の決算短信の場合は、来期予想がどれくらいなのか確認したい。
大きな変更がある場合は、株価がそれにどれくらい反応しているのか見てみよう。業績予想を上方修正しているのに株価があまり変動していない場合は、上方修正がまだ株価に織り込まれていない可能性がある。
③経営成績等の概況
決算短信によっては、経営成績の概況や財政状態の概況、キャッシュフローの概況、今後の見通しなどを解説しているものもある。会社側の見解を知るチャンスなので、しっかり読み込むようにしたい。
経営成績等の概況では、事業セグメント別の経営成績を開示している場合もある。①サマリーでは見えなかった各セグメントの情報を得られるので、伸びている (もしくは不調な) セグメントがないか確認しよう。
ゴーイング・コンサーンにも注意
継続的な営業赤字や債務超過など、事業活動の継続が不安視される場合は、「継続企業の前提に関する注記」部分に記載されることがある。これは「ゴーイング・コンサーン」とも呼ばれ、企業の存続に黄色信号が灯ったことを会社側が公表するものだ。
通常の会社であれば「該当事項なし」と書かれていることが多いため、3つのポイントには入れていないが、決算短信を見る場合は念のためゴーイング・コンサーンも確認したい。
ここまで決算短信とは何か、そして決算短信を読み解く3つのポイントについて見てきた。決算短信の存在は知っていても、深く読み解いたことはない人が多いだろう。だからこそ、決算短信を読み解くことでライバルに差をつけることができ、「成功する投資家」に近づけるはずだ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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