「SDGs」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。しかし、その内容まで理解しているという人はそう多くはないでしょう。簡単に言えば「環境、健康、貧困、差別などといった世界の課題を2030年までにみんなで解決しましょう」というものです。今回はSDGsについてわかりやすく解説します。

SDGsとは?簡単に解説

SDGsとは? 意味や注目される理由、個人でもできることを簡単に解説!
(画像=hogehoge511/stock.adobe.com)

SDGsはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、2030年を達成期限として「持続可能なより良い世界」を目指すための国際目標です。

この目標は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されたもの。先進国や新興国といった括りをなくし、全世界で達成を目指しています。

具体的には17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

SDGsは、2001年に策定された「MDGs」の後継という位置付けです。MDGsはMillennium Development Goals(ミレニアム開発目標)の略で、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された「国連ミレニアム宣言」をもとに策定されました。MDGsは「2015年までに達成すべき8つの目標」を掲げ、一定の成果を上げています。

目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
目標2:初等教育の完全普及の達成
目標3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上
目標4:乳幼児死亡率の削減
目標5:妊産婦の健康の改善
目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
目標7:環境の持続可能性確保
目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

SDGsが採択された約2ヵ月後の2015年11月30日~12月13日には、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択されました。歴史上初めてすべての国が参加したことによる公平な合意で、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際的枠組みが構築された協定です。

SDGsの17のゴールとは?それぞれを簡単に解説

SDGsの17のゴールは、どのようなことを掲げているのでしょうか。17のゴールは、社会・経済・環境の面で世界が直面する課題を網羅的に示しています。

【社会】貧困や飢餓、教育など未だに解決を見ない社会面の開発アジェンダ
【経済】エネルギーや資源の有効活用、働き方の改善、不平等の解消などすべての国が持続可能な形で経済成長を目指す経済アジェンダ
【環境】地球環境や気候変動など地球規模で取り組むべき環境アジェンダ

SDGsは17のゴールを総合的に解決しながら、持続可能なよりよい未来を築くことを目標としています。SDGsの169のターゲットは、17の目標をさらに細分化した形で設定されています。ここからは、17の目標をひとつずつ簡単に解説します。

目標1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

「貧困をなくそう」という目標です。1日1.25ドル未満で生活する極度の貧困を根絶する、各国が定義する貧困に陥っている割合を半減することなどを目指します。

目標2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

「飢餓をゼロにしよう」という目標です。貧困層や幼児が、常に安全かつ栄養のある食料を十分得られることなどを目指します。

目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

「すべての人に健康と福祉を提供しよう」という目標です。世界の妊産婦の死亡率を出生10万人あたり70人未満に削減する、エイズなどの伝染病を根絶する、世界の交通事故による死傷者を半減させることなどを目指します。

目標4. すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

「質の高い教育をみんなに提供しよう」という目標です。すべての子どもが男女の区別なく、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できることなどを目指します。

目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う

「ジェンダー平等を実現しよう」という目標で、すべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃することなどを目指します。

目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

「安全な水とトイレを世界中に届けよう」という目標です。すべての人に安全で安価な飲料水を届けることなどを目指します。

目標7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する

「エネルギーをみんなに届け、クリーンに使おう」という目標です。すべての人に安価かつ信頼できるエネルギーサービスを提供する、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させることなどを目指します。

目標8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

「働きがいも経済成長も実現しよう」という目標です。1人当たりの経済成長率を持続させる、奴隷制や人身売買を撲滅することなどを目指します。

目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

「産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標です。すべての人々に経済発展の恩恵(安価で公平なアクセス)と福祉を提供することなどを目指します。

目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する

「人や国の不平等をなくそう」という目標です。あらゆる差別や不平等をなくして、すべての人が社会的・経済的に人間らしく活動できることなどを目指します。

目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する

「住み続けられるまちづくりを進めよう」という目標です。すべての人々に安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保することなどを目指します。

目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する

「つくる責任、つかう責任を意識しよう」という目標です。天然資源の持続可能な利用方法を追求する、食品ロスを減少させることなどを目指します。

目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

「気候変動に対して具体的な対策を行おう」という目標です。気候関連災害や自然災害に対する備えを強化する、気候変動の緩和や影響の軽減につながる対策を講じることなどを目指します。

目標14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する

「海の豊かさを守ろう」という目標です。あらゆる種類の海洋汚染を大幅に削減する、海洋及び沿岸の生態系を守るための対策を行うことなどを目指します。

目標15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

「陸の豊かさも守ろう」という目標です。世界全体で新規植林や再植林を大幅に増加させる、劣化した土地と土壌を回復させる、密猟を撲滅することなどを目指します。

目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

「平和と公正をすべての人に届けよう」という目標です。暴力や暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる、司法へのアクセスを整える、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供することなどを目指します。

目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

「パートナーシップで目標を達成しよう」という目標です。資金面、技術面、貿易面、体制面などに分けて、グローバル・パートナーシップの活性化を目指します。

SDGsが注目されている理由は?簡単に解説

なぜ、SDGsが多くの人に注目されているのでしょうか。その理由を3つの視点から簡単に解説します。

ビジネスチャンスである

近年のSDGsに対する意識の高まりから、企業は取引先を選定する上で「SDGsにしっかり取り組んでいるか」「この会社と取引を始めることで、自社のブランドイメージに傷がつかないか」といった視点も重要になりました。また、消費者に「この会社はSDGsに積極的ではない」「この商品はSDGsの理念に反している」と思われると、購入を控えられるおそれがあります。

反対に、「SDGsを非常に推進している会社だ」「SDGsに貢献する商品(事業)だ」と認知されると取引がスムーズに進みやすくなったり、消費者からの支持が拡大したりする可能性があります。日本政府もSDGsの推進を表明しているので、SDGsに関連した事業は資金面をはじめとする支援を期待できます。

投資家にとっても、そのような企業は中長期的に成長する可能性が高いため、SDGsはビジネスチャンス(投資チャンス)といえます。

資金を調達しやすくなる

SDGsに取り組むことで、いわゆる「グリーンマネー」が集まりやすくなり、直接金融、間接金融の両面において、資金を調達しやすくなります。「SDGsに積極的な企業」は「ESGに積極的な企業」と言い換えても問題ないでしょう。

ESGという言葉が知られるようになったのは、2006年に国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)」を提唱したことがきっかけといわれています。

近年は、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心にESG投資が急速に広がっています。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の調べによると、PRI署名機関数とその運用資産総額は過去10年で急拡大しており、2020年3月末時点のPRI署名機関数は3,038、運用資産総額は100兆ドルを超えています。

SDGsに積極的な企業には、このような巨額のマネーが投下されやすい(企業側から見ると資金を調達しやすい)というわけです。ESG投資ブームを背景に投資家の購入意欲は旺盛で、グリーンボンドの利回りが同じ発行体の普通債より低くなる「グリーニアム(「グリーン」と「プレミアム」を合わせた造語)」という現象も起こっています。

また、近年はSDGsやESGに着目した融資を行う金融機関も増えており、SDGs向けの資金調達手段は多様化しているといえるでしょう。

イメージが良くなり、採用がしやすくなる

SDGsに積極的な企業は対外的なイメージも良くなるため、人材を採用しやすくなります。そうした企業ではダイバーシティやワーク・ライフ・バランス、ジェンダー平等などが整備されやすいためです。採用しやすくなるだけでなく、離職率の低下も期待できます。

SDGsを個人が実践する方法は?

SDGsの17のゴールを見ると、目標が壮大すぎて「個人レベルでは貢献できることがない」と思うかもしれません。しかし、SDGsの達成には小さなことの積み重ねが重要です。個人で取り組めるSDGsとして、例えば、以下のようなことを意識してみてはいかがでしょうか。

・ESG投資をする
・マイボトルやエコバッグを持ち歩く
・地域ボランティアに参加する
・環境に配慮した商品を優先的に買う
・省エネを意識する
・フードロスをなくす
・働きやすい職場づくりをする
・慈善団体に寄付をする
・男女差別につながる言動をしない
・マイノリティの考え方を理解し、できる限り受け入れる

個人の小さな意識の変化が大きな波となれば、SDGsが掲げる壮大なゴールが見えてくるはずです。

身近なところから取り組み始めることが重要

SDGsは2015年9月に採択され、2021年10月で約6年が経ちました。SDGsの期限は2030年ですが、目標達成までは道半ばです。

2019年9月に開催された「SDGサミット」でグテーレス国連事務総長は、「取り組みは進展したが、達成状況には偏りや遅れがあり、あるべき姿からはほど遠く、今、取り組みを拡大・加速しなければならない。2030年までをSDGs達成に向けた『行動の10年』とする必要がある」とSDGsの進捗に対して危機感を表しています。

目標達成の期限まで、10年を切りました。多くの人が身近なところから取り組み始めることで、SDGsが目指す世界の実現に近づきます。SDGsの理念や掲げる目標を正しく理解して、できることから始めてみましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road