21年10月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比20.4%増となり、前月の同17.0%増から上昇した(図表1)。輸出は昨年4月に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が本格化して急減した後、経済活動の再開やテレワーク需要の増加に伴う電気・電子製品の出荷増、商品市況の改善を受けて増加傾向が続いている。10月は域内の感染状況の改善が続いて経済活動の再開が進むなかで輸出の伸びが加速、また国際商品市況の上昇によりインドネシアやマレーシアを中心に資源輸出が好調だった。

ASEANの貿易統計
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ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、10月は東アジア向け(同20.9%増)と北米向け(同9.9%増)が堅調に拡大した。また東南アジア向け(同24.6%増)は前年の水準が低かったことや、今夏の感染再拡大に伴う活動制限措置が解除されていったことにより高い伸び率となった。このほか、EU向け(同13.2%増)も伸びが加速した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

ベトナムの21年10月の輸出額(通関ベース)は前年同月比6.1%増(前月:同0.5%減)の288億ドルとプラスに転じた(図表3)。輸出の基調は昨年4~5月に新型コロナ感染対策として国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて一時的に落ち込んだ後、世界的な経済活動の再開や電子機器需要の拡大により伸びが加速、その後も高水準で推移している。一方、輸入額は前年同月比7.8%増(前月:同10.2%増)の261億ドルとなり伸びが鈍化した。結果として、貿易収支が+27.4億ドルの黒字となり、前月から23.8億ドル改善した。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比3.1%増(前月:同9.3%増)と低下、電気製品・同部品が同0.7%減(前月:同6.8%増)と減少した(図表4)。またアパレル関連では、履物が同33.0%減(前月:同45.9%減)と低迷したものの、織物・衣類が同3.2%増(前月:同21.1%減)と増加した。農林水産物を見ると、水産物(同2.9%減)こそ減少したものの、コメ(同67.8%増)やコーヒー(同28.0%増)、カシューナッツ(同9.5%増)、天然ゴム(同25.9%増)などが好調を続けた。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同2.9%増(前月:同1.1%増)と伸びが小幅に加速し、地場企業が同15.3%増(前月:同4.8%減)と急増した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

タイの21年10月の輸出額(通関ベース)は前年同月比17.3%増(前月:同17.1%増)の227.4億ドルとなり、好調が続いた(図表5)。輸出の基調は新型コロナ感染拡大の影響が直撃した昨年4~6月に大きく減少した後、世界的な電子機器の需要増加、国際商品市況の上昇などから増加傾向が続いている。また輸入額も前年同月比34.6%増(前月:同30.3%増)の231億ドルとなり、大幅な増加が続いた。結果として、貿易収支が▲3.7億ドルの赤字となり、前月から9.8億ドル悪化した。

輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同15.0%増(前月:同18.1%増)と8カ月連続の二桁増となった(図表6)。製造品の内訳を見ると、在宅時間が増加した影響で電子機器(同8.3%増)や家電製品(同6.3%増)が堅調に拡大、また機械・装置(同3.9%増)や石油化学製品(同23.2%増)、自動車・部品(同12.6%増)などの主要輸出品も引き続き増加した。また鉱業・燃料は同127.2%増(前月:同99.5%増)となり、石油製品(同164.6%増)を中心に大幅な増加が続いた。このほか、農産物・同加工品は同12.2%増(前月:同13.0%増)と引き続き好調が続いている。ゴム製品(同14.5%減)が減少したものの、コメ(同33.7%増)や天然ゴム(同51.7%増)が二桁成長を続けると共に、果物(同30.6%増)と加工食品(同11.1%増)もプラスに転じるなど、総じて増加した品目が多かった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

マレーシアの21年10月の輸出額(通関ベース、ドル換算)の伸び率は前年同月比25.1%増(前月:同24.1%増)の274億ドルとなり好調だった(図表7)。輸出の基調は昨年4~5月に新型コロナ感染拡大と国内外の活動制限措置の影響が本格化して約3割の減少を記録した後、世界経済の回復や商品市況の高騰、電気電子製品の需要拡大を追い風に増加傾向が続いている。また輸入額も前年同月比27.6%増(前月:同25.9%増)の211億ドルとなり伸びが加速した。結果として、貿易収支が+63.1億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から0.4億ドル拡大した。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同10.0%増(前月:同6.0%増)となり、主力の電気・電子製品(同8.4%増)を中心に3カ月連続で増加した(図表8)。また鉱物性燃料は同107.8%増(前月:同93.9%増)と更に伸びが加速した。石油製品(同142.1%増)と天然ガス(同88.2%増)の大幅な増加が続き、原油(同60.0%増)の伸びが加速した。このほか、化学製品(同63.1%増)、動植物性油脂(同32.0%増)の二桁増が続いた一方、ゴム手袋(同12.1%減)は昨年好調だった反動で減少した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

インドネシアの21年10月の輸出額(通関ベース)は前年同月比53.3%増(前月:同47.6%増)の220億ドルとなり、大幅な増加が続いた(図表9)。輸出の基調は昨年3~5月にかけて新型コロナの感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて最大約3割減まで落ち込んだ後、経済活動の再開や国際商品市況の上昇により増加傾向が続いている。また輸入額も前年同月比51.1%増(前月:同40.3%増)の162億ドルとなり、大きく増加した。結果として、貿易収支が+57.3億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から13.6億ドル拡大した。

全体の9割を占める非石油ガス輸出が同52.7%増(前月:同48.0%増)、石油ガス輸出が同66.8%増(前月:同39.8%増)となり、それぞれ好調を維持した(図表10)。品目別にみると、鉱産物(同147.3%増)や鉄・鉄鋼(同113.4%増)、動植物性油脂(同76.5%増)、機械類(同17.6%増)、自動車・同部品(同6.5%増)、電気機械(同4.6%増)などが増加した一方、ゴム製品(同10.0%減)が減少に転じると共に、天然又は養殖真珠、貴石、半貴石(同38.2%減)が低迷した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

シンガポールの21年10月の輸出額(石油と再輸出除く、通関ベース、ドル換算)は前年同月比18.7%増(前月:同13.5%増)の120億ドルとなり、伸びが加速した(図表11)。輸出は昨年コロナ禍でも増加傾向で推移し、今年は世界的な電子製品の需要拡大や石油製品の価格上昇により総じて好調が続いている。なお、総輸出額が同23.5%増(前月:同20.2%増)の400億ドル、総輸入額が同26.5%増(前月:同20.2%増)の355億ドルと、それぞれ増加した。結果として、貿易収支が+45.4億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から0.8億ドル拡大した。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品は同15.7%増(前月:同15.6%増)と好調を維持して11カ月連続の二桁増となった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同23.4%増)やPC(同18.9%増)、ダイオード・トランジスタ(同20.6%増)の大幅な増加が続いた一方、ディスクメディア(同1.3%減)が2カ月ぶりに減少した。また全体の約3割を占める化学品は同16.9%増(前月:同33.6%増)と好調を維持した。化学品の内訳を見ると、医薬品(同4.8%増)は鈍化したものの、石油化学製品(同40.0%増)が大幅な伸びを続けた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

フィリピンの21年10月の輸出額(通関ベース)は前年同月比2.0%増(前月:同6.4%増)の64億ドルとなり、伸びが鈍化した(図表13)。輸出は昨年3月に新型コロナ感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が現れて急減した後、世界経済の再開を受けて増加傾向が続いているが、足もとでは主力の電子部品の輸出が鈍化して伸び悩みつつある。また輸入額は前年同月比25.1%増(前月:同24.9%増)の104億ドルとなり好調だった。結果として、貿易収支が▲40.2億ドルの赤字となり、赤字幅は前月から0.2億ドル拡大した。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の6割弱を占める電子製品が同1.7%増(前月:同4.3%増)と鈍化したが、増加傾向を保った(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同0.4%減)が減少したものの、電子データ処理機(同7.3%増)が堅調だった。その他9品目については、ココナッツオイル(同76.9%増)や製錬銅(同56.0%増)、化学品(同53.7%増)、電子機器・部品(同22.2%増)、その他鉱物製品(同13.0%増)、機械・輸送用機器(同11.0%増)がそれぞれ増加した一方、金属部品(同25.3%減)とその他製造品(同20.9%減)、イグニッションワイヤーセット(同16.7%減)が減少した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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斉藤 誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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