安定した老後生活を送るためには、「必要な貯蓄額」と「資産の形成方法」をじっくり考える必要があります。何となく周りに合わせているだけでは、十分な老後資金を貯めることはできません。最適な老後資金のプランを立てるために、基本的な知識や考え方を押さえておきましょう。

高齢者の平均貯蓄はどれくらい?備えの実情

平均貯蓄から見る高齢者の実情とは?老後に必要な貯蓄額とおすすめの資産形成術
(画像=padasmith/stock.adobe.com)

高齢者の平均貯蓄額はおよそ2,300万円と言われますが、平均値はあくまで目安であり、生活の実態を表すものではありません。

そこで、まずは内閣府が公表した「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに、高齢者(60歳以上)の備えの実情をまとめました。

約2.5人に1人は貯蓄総額が500万円未満

以下の表は、高齢者の貯蓄総額に関するアンケートの結果です。

貯蓄総額回答した高齢者の割合
100万円未満10.8%
100万~500万円未満18.8%
500万~1,000万円未満12.1%
1,000万〜2,000万円未満11.20%
2,000万円以上15.60%
貯蓄なし8.3%
不明・無回答23.10%

「貯蓄なし」と回答した人も含めると、高齢者の約4割(37.9%)は貯蓄総額が500万円未満です。

また、「500万〜1,000万円未満」と回答した人が12.1%であることから、高齢者の半数近くは貯蓄額が平均を大きく下回っていることが分かります。

3割近くの高齢者は貯蓄が1,000万円を超えている

一方で、貯蓄総額が1,000万円を超えている高齢者は全体の26.8%であり、「2,000万円以上」と回答した人は15.6%でした。高齢者の4人に1人は、貯蓄総額が1,000万円を超えているのです。

このように、高齢者によって備えの実情は大きく異なるため、老後生活の実態を一概に言うことはできません。安心できる老後生活を送るためには、個々の生活事情に合わせたプランが必要なのです。

老後生活に必要と感じている貯蓄額は?

では、世の中の高齢者は、将来どのくらいの老後資金が必要になると考えているのでしょうか。ここからは、必要な老後資金に関するアンケート結果を見ていきましょう。

これからの生活に必要な貯蓄額回答した高齢者の割合
100万円未満2.2%
100万~500万円9.3%
500万~1,000万円17.5%
1,000万~2,000万円23.8%
2,000万円以上33.7%
不明・無回答13.5%

高齢者の3割以上が「2,000万円以上の貯蓄が必要」と考えています。

「1,000万~2,000万円」と回答した人も含めると、高齢者の半数以上が「1,000万円以上の貯蓄が必要」と考えていることになります。

属性別(年齢や未既婚など)のデータを見てみると、特に60代や有配偶者、住宅ローン返済中の持家を所有している人などは、老後資金に対する意識が強い(より多くの資金が必要と考えている)傾向にあります。

働くのは何歳までが現実的?

老後資金を形成するために、「仕事に就いて働き、稼ぐ」という方法を選ぶ人は多いでしょう。とはいえ、年齢を重ねるほど身体的な負担が大きくなるので、「何歳まで働けるか」は慎重に判断しなければなりません。

以下の表は、働く年齢に関するアンケート結果です。

何歳まで収入を伴う仕事をしたいか回答した高齢者の割合
65歳くらいまで25.6%
70歳くらいまで21.7%
75歳くらいまで11.9%
80歳くらいまで4.8%
働けるうちはいつまでも20.6%
仕事をしたいとは思わない13.6%

最も多かった回答は「65歳くらいまで」で、次いで「70歳くらいまで」でした。

「働けるうちはいつまでも」と回答した人も20%ほどいますが、現実的に高齢者が働けるのは70~75歳までと言えそうです。

安定した老後生活を送るためには、この内容を踏まえて「老後資金がいくら不足しているのか」「不足分をどうやって補うか」を考える必要があります。

老後資金の形成におすすめの方法

最近はシニア世代が活躍できる職場が増えていますが、仕事だけでは十分な老後資金を貯められないかもしれません。

ここからは、老後資金の形成におすすめの方法を3つ紹介します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自身で掛金と投資商品を設定する私的年金制度です。将来、掛金と運用益の合計額が年金として支払われるもので、60歳になると一括もしくは分割(年金形式)での支給を選べます。

iDeCoを利用するメリットとして、節税効果の高さが挙げられます。掛金の全額が所得控除になり、かつ運用益に税金がかからないため、節税をしながら老後資金を形成できます。

個人年金保険

老後資金のプランを柔軟に調整したい人には、個人年金保険がおすすめです。iDeCoは節税効果が魅力ですが、原則として途中解約が認められていません。

一方、個人年金保険は解約のタイミングが自由であり、さらに解約時に「解約返戻金」を受け取れます。ただし、個人年金保険は低金利の商品が多く、返戻率は105~110%程度と言われています。

一般的な投資やiDeCoと比べると期待できるリターンがやや小さいため、他の方法と組み合わせることも検討するとよいでしょう。

つみたてNISA

つみたてNISAは、毎年40万円までの投資に対し、最長20年間運用益が非課税になる制度です。

つみたてNISAで購入できる投資信託は、低コスト・低リスクのものが厳選されているため、投資初心者でも取り組みやすいでしょう。

ただし、年間投資額が最大40万円までと決められているので、他の方法と組み合わせることをおすすめします。

現状を分析し、個々の生活事情に合わせたプランを

収入額や貯蓄額、老後資金の不足額などは、家庭によって大きく異なります。そのため、周りに合わせて老後資金を形成するのではなく、あくまで「個々の生活事情」に合わせて老後資金のプランを立てることが大切です。

まずは現状を分析することから始めて、自分に合う資産形成の方法を見極めましょう。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road