1 ―― 10-12月期は前期比年率5.4%と2四半期ぶりのプラス成長

本日(2/15)発表された2021年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比1.3%(前期比年率5.4%)と2四半期ぶりのプラス成長となった(当研究所予測1月31日:前期比1.4%、年率5.6%)。

緊急事態宣言の解除を受けて、外食、宿泊などの対面型サービスを中心に民間消費が前期比2.7%の大幅増加となったことが高成長の主因である。半導体不足などの供給制約の緩和に伴い輸出が前期比1.0%と増加に転じ、外需寄与度が前期比0.2%(年率0.8%)のプラスとなったことも成長率を押し上げた。

一方、公的需要は、ワクチン接種ペースの鈍化を反映し、政府消費が前期比▲0.3%の減少となったことに加え、公的固定資本形成が同▲3.3%の減少となったため、2四半期ぶりに減少した。

QE速報
(画像=ニッセイ基礎研究所)

名目GDPは前期比0.5%(前期比年率2.0%)と2四半期ぶりに増加したが、実質の伸びは下回った。GDPデフレーターは前期比▲0.8%(7-9月期:同▲0.4%)と3四半期連続で低下した(前年比は▲1.3%)。国内需要デフレーターが前期比▲0.2%の低下となったことに加え、国際商品市況高騰の影響で輸入デフレーターが前期比6.5%の高い伸びとなり、輸出デフレーターの伸び(前期比3.0%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し下げた。

2021年10-12月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、2021年1-3月期から7-9月期までの実質GDP成長率がいずれも上方修正された。(2021年1-3月期:前期比年率▲2.9%→同▲2.1%、4-6月期:前期比年率2.0%→同2.4%、7-9月期:前期比年率▲3.6%→同▲2.7%)

この結果、2021年(暦年)の実質GDP成長率は1.7%(2020年は▲4.5%)、名目GDP成長率は0.8%(2020年は▲3.6%)となった。実質では3年ぶり、名目では2年ぶりのプラス成長だが、前年の大幅な落ち込みを踏まえれば回復ペースは極めて緩やかなものにとどまった。

なお、輸出入デフレーターの差によって生じる所得の実質額を表す交易利得は前期差▲3.4兆円(7-9月期は同▲4.5兆円)と4四半期連続で減少した。この結果、実質GDPに交易利得を加えた実質GDIは前期比0.7%(前期比年率2.8%)となり、実質GDPの伸びを大きく下回った。

2021年入り後、原油をはじめとした資源価格高騰に伴う交易条件の悪化によって、海外への所得流出が続いている。2021年の交易利得は▲4.0兆円となり、前年から▲7.0兆円の悪化となった。2022年入り後、原油高が一段と進んでいるため、交易利得の減少幅はさらに拡大する可能性が高い。

QE速報
(画像=ニッセイ基礎研究所)

<需要項目別の動き>

民間消費は前期比2.7%と2四半期ぶりの増加となった。緊急事態宣言の解除を受けて、外食、宿泊などの対面型サービス消費が高い伸びとなったことに加え、供給制約の緩和に伴う自動車販売の増加などから、財消費も堅調な動きとなった。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、自動車販売の回復を反映し、耐久財が前期比9.7%の大幅増加となったほか、被服・履物、家具などの半耐久財(同6.0%)、交通、外食、旅行、宿泊などのサービス(同3.5%)も高い伸びとなった。一方、食料品などの非耐久財は前期比▲1.1%と2四半期ぶりに減少した。

雇用者報酬は名目・前年比1.0%(7-9月期:同2.3%)、実質・前年比1.2%(7-9月期:同3.0%)となり、いずれも前期から伸びが大きく鈍化した。一人当たり賃金が伸び悩む中で、雇用者数(労働力調査ベース)が減少に転じたことが雇用者報酬の伸びを押し下げた。

住宅投資は前期比▲0.9%と2四半期連続で減少した。名目では前期比1.0%と4四半期連続で増加したが、木材価格の高騰を反映し、住宅投資デフレーターが前期比2.0%(前年比では9.2%)の高い伸びとなったことが、実質の伸びを押し下げた。

設備投資は前期比0.4%と2四半期ぶりに増加したが、7-9月期の大幅減少(前期比▲2.4%)の後しては低い伸びにとどまった。設備投資は、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しているが、部品不足などの供給制約の影響が残っていることが、抑制要因になっていると考えられる。

公的固定資本形成は前期比▲3.3%と4四半期連続で減少した。公的固定資本形成は、災害復旧や国土強靭化関連工事の進捗を反映し増加傾向が続いてきたが、2020年末頃をピークに減少している。

外需寄与度は前期比0.2%(前期比年率0.8%)と2四半期連続のプラスとなった。供給制約の緩和に伴う自動車輸出の回復を主因として、財貨・サービスの輸出が前期比1.0%となる一方、ワクチン購入の一巡などから、財貨・サービスの輸入が同▲0.3%の減少となったため、外需が成長率の押し上げ要因となった。

(2022年1-3月期は急減速が不可避)

2021年10-12月期の実質GDPは、緊急事態宣言の解除に伴う民間消費の高い伸びを主因として前期比年率5.4%の高成長となり、実質GDPの水準はコロナ前(2019年10-12月期)比で▲0.2%まで回復した。ただし、日本経済はコロナ前の段階で消費税率引き上げの影響で大きく落ち込んでいた。直近のピーク(2019年7-9月期)に比べれば、2021年10-12月期の実質GDPは▲2.9%低い。

2022年入り後、オミクロン株を中心とした新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、36都道府県でまん延防止等重点措置が適用されている。2021年1-3月期は10-12月期の成長を牽引した民間消費が減少に転じる可能性が高く、成長率の急低下は避けられないだろう。

現時点では、2022年1-3月期の実質GDPは、民間消費の減少を輸出や設備投資の増加がカバーすることにより、前期比年率ゼロ%台のプラス成長を予想しているが、行動制限が長期化すれば、マイナス成長に陥る可能性が高くなる。実質GDPがコロナ前の水準を回復するのは2022年4-6月期までずれ込む公算が大きい。


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斎藤 太郎 (さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

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