この記事は2022年2月18日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「消費者物価(全国22年1月) ―― エネルギー、食料の上昇ペースが加速し、コアCPI上昇率は22年度入り後に1%台後半へ」を一部編集し、転載したものです。

目次

  1. 1 ―― コアCPI上昇率は前月から0.3ポイント縮小
  2. 2 ―― 物価上昇の裾野が広がる
  3. 3 ―― コアCPI上昇率は22年度入り後に1%台後半へ

1 ―― コアCPI上昇率は前月から0.3ポイント縮小

消費者物価
(画像=PIXTA)

総務省が2月18日に公表した消費者物価指数によると、2022年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.2%(12月:同0.5%)となり、上昇率は前月から0.3ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.3%、当社予想も0.3%)を下回る結果であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

原油高の影響でエネルギー価格の上昇率はさらに高まったが、「Go Toトラベル」停止による押し上げ効果が剥落したことが、コアCPI上昇率を▲0.3ポイント程度押し下げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比▲1.1%(12月:同▲0.7%)、総合は前年比0.5%(12月:同0.8%)となった。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(12月:前年比22.4% → 1月:同22.0%)、灯油(12月:前年比36.0% → 1月:同33.4%)は伸びが鈍化したが、電気代(12月:前年比13.4% → 1月:同15.9%)、ガス代(12月:前年比10.5% → 1月:同13.2%)が前月から伸びを高めたため、エネルギー価格の上昇率が12月の前年比16.4%から同17.9%へと高まった。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(12月:前年比22.4% → 1月:同22.0%)、灯油(12月:前年比36.0% → 1月:同33.4%)は伸びが鈍化したが、電気代(12月:前年比13.4% → 1月:同15.9%)、ガス代(12月:前年比10.5% → 1月:同13.2%)が前月から伸びを高めたため、エネルギー価格の上昇率が12月の前年比16.4%から同17.9%へと高まった。

食料(生鮮食品を除く)は前年比1.3%(12月:同1.1%)と7カ月連続で上昇し、上昇幅は前月から0.2ポイント拡大した。原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比25.6%)、マーガリン(同11.2%)、マヨネーズ(同12.9%)、コーヒー豆(同19.5%)などは前年比で二桁の高い伸びが続いている。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.28%(12月:1.17%)、食料(生鮮食品を除く)が0.30%(12月:0.26%)、携帯電話通信料が▲1.54%(12月:同▲1.54%)、Go Toトラベルが0.00%(12月:同0.34%)、その他が0.16%(12月:0.27%)であった(Go Toトラベルは当研究所による試算値)。

2 ―― 物価上昇の裾野が広がる

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、1月の上昇品目数は311品目(12月は298品目)、下落品目数は154品目(12月は174品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は59.6%(12月は57.1%)、下落品目数の割合は29.5%(12月は33.3%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は30.1%(12月は23.8%)であった。

原材料価格の高騰を受けて、食料を中心に物価上昇の裾野が広がっている。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

3 ―― コアCPI上昇率は22年度入り後に1%台後半へ

22年1月のコアCPIは「Go Toトラベル」停止による押し上げ効果剥落を主因として、前月から伸びが鈍化したが、2月以降は上昇率が高まる可能性が高い。

一時、70ドル台まで下落していた原油価格(ドバイ)は、ウクライナ情勢緊迫化の影響などから90ドル台まで上昇している。エネルギー価格の上昇率は2月には20%台まで加速し、コアCPI上昇率への寄与度は1.5%程度まで高まることが見込まれる。その後、伸びは頭打ちとなるが、当面は寄与度ベースで1%台前半の水準を維持するだろう。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

今後、上昇ペースの加速が見込まれるのは食料品(除く生鮮食品)だ。食料品は2021年7月の前年比0.1%と上昇に転じた後、2022年1月には同1.3%まで上昇率が高まったが、川上段階の物価上昇率に比べれば伸び率は限定的にとどまっている。

足もとの食料品の輸入物価は前年比で20%台後半、食料品の国内企業物価は前年比で3%台の高い伸びとなっている。近年で食料品(除く生鮮食品)の物価上昇率が2%を超えたのは2015年10~12月だが、川上段階(輸入物価、国内企業物価)の上昇率は現在のほうが当時よりも高い。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

川上段階の物価上昇を消費者向けの販売価格に転嫁する動きがさらに広がることにより、食料品(生鮮食品を除く)の物価上昇率は22年度入り後には2%台に達し、コアCPI上昇率への寄与度は0.5%程度まで高まるだろう。

コアCPI上昇率は、携帯電話通信料の大幅下落の影響が縮小する22年度入り後に1%台後半まで加速した後、伸びは頭打ちとなるが、22年中は1%台半ばで推移することが予想される。


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斎藤太郎 (さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

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