財務省は、10月22日、平成26年(2014年)度上半期分の貿易統計(速報)の概要を発表した。それによると、輸出が35兆8969億円、輸入が41兆3240億円で、輸出から輸入を引いた差額である貿易収支が5兆4271億円の赤字であることがわかった。円安により金属加工機械、自動車、科学光学機械の輸出が増加(1.7%)したものの、原発停止に伴う火力発電に使われる液化天然ガスや太陽光パネルに使われる半導体等電子部品、石油製品の輸入増加(2.5%)により、大幅な貿易赤字となった。

過去さかのぼって、上半期の数字を調べてみると、平成25年(2013年)度が4兆9963億円の赤字、平成24年(2012年)度が3兆2354億円の赤字、平成23年(2011年)度が1兆6929億円の赤字と赤字幅が年々増加していることがわかる。

日本はもともと資源のない国であったため、安い材料を海外から仕入れて、加工して高付加価値の製品を作り出し、海外に輸出することで経済成長を果たしてきた。その結果、「Made in Japan」は、世界のブランドとなり、1981年以降ずっと貿易収支は黒字の状態が続いていた。ところが、2011年以降、貿易収支が赤字に転落した。

2011年は、東日本大震災により甚大な被害が生じ、経済にも大打撃を与えた。また、対ドルレートで76円台という歴史的な円高により、輸出が減少し、原油価格の高騰で輸入価格が上昇したことが主な原因とされている。

では、アベノミクスにより景気が緩やかに回復(日本銀行金融経済月報の見通しによる)し、円安が進んでいる中で、なぜ、貿易収支が悪化しているのだろうか。まず第1に輸出先である欧州連合(EU)の経済は堅調とは言えない状況にあること、第2に米国も景気は好調とは言え、エボラウイルスやイスラム国の問題、金融緩和の縮小など、積極的な消費に向かうのにはまだ時間が掛かること、第3に日本の景気が若干良くなったことで、欧州の自動車やブランド品等の輸入が増えていること、第4に円安により燃料や部品の調達コストが高まっており、輸出による利益を相殺してしまっていることなどがが挙げられる。

しかし、このような現状を悲観する必要はない。なぜ、このような状況にあるかというと、日本の企業がリーマンショック以降、円高対策として、(1)現地生産に切り替えたこと、(2)現地通貨建ての契約比率を増加させたこと、(3)通貨オプションにより為替をヘッジしたことなど、為替対策をしてきたことにある。つまり、円安や円高によって利益に変動が生じるのを抑えようと対策をしてきたのである。その結果、円安になったからと言って単純に利益が増加する構造ではなくなってきている。

また、貿易収支は赤字であるものの、経常収支(貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支)はまだかろうじて黒字(2013年度で7899億円)なので、海外から稼ぐ力はまだあるといえる。日本政府観光局の資料によると2014年9月の訪日外客数は109万9千人で、これまで9月として過去最高の86万3千人(2013年)を23万2千人以上も上回っている。貿易収支の黒字化が難しい中、今後、東京オリンピックの開催も控えていることから、サービス収支や所得収支の増加により経常収支の黒字化を維持することが重要になってくるのである。

現在では、日本ですら「Made in Japan」は見ることが少なくなり、「Made in China」ばかり見るようになった。もし、各個人が貿易収支の黒字化に貢献したいのであれば、「Made in China」や「Made in Italy」ではなく、「Made in Japan」の製品を購入するしかない。今更安い製品やおしゃれな製品はやめられないということであれば、その考えは世界の人も同じなのだから、単なる製造業という日本の売り方を変えていかなければならない。観光やインフラなど、日本の良さを世界にアピールしながら、政府と企業が一体となって世界に挑めば、十分勝算はあると思われる。

(ZUU online)

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