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今月7日、IMFは世界経済の成長見通しを引き下げました。世界経済の先行き見通しが不安視される一方で、マレーシアの今年度の成長見通しは5.9%に引き上げました。今回は、このマレーシアの経済の底堅さの理由を、最近の経済政策の状況から見ていきたいと思います。


先進国の仲間入りを目指す新経済モデル

東南アジアに位置するマレーシアは人口が約2800万人、1人当たりGNP約8000$、ASEANの中でも有数の経済成長率を誇る国です。輸出先第一位はシンガポール、輸入先第一位は日本で、貿易規模がGDPに匹敵している、文字通りの貿易立国です。

2020年を目処に先進国の仲間入りを目指すマレーシアでは、2010年3月「新経済モデル」を発表しました。具体的には、現在8659$の1人当たりGNPを10年以内に15000$以上に引き上げる計画です。その計画を達成するため、8つの重点項目を列挙しており、主な項目として、民業・第3セクターの活性化、移民の減少、競争力の育成、官業の活性化、透明性の確保等が上げられます。

注目点は、前回の経済モデルと比較して、明らかに民業に重点をおいている点です。国営の石油会社であるペトロナス社を上場させる他、様々な補助金を減らす方針を取っているなど、民業と官業の間の協力を重視しつつ、国民全員の包括的成長を目指す道を模索しているようです。以上の数値目標を達成するには、年率5.7%以上の持続した経済成長が必要になりますが、2013年時点の1人当たりGNPが10548$と当初の中間目標を上回っており、このままいけば目標が達成すると見られます。


12の重点分野を持つ、経済変革プログラム

マレーシアでは、前章の新経済モデルとは別に2010年10月「第10次マレーシア計画」を発表しています。これは2010~2015年の5ヵ年計画であり、製造業は新経済モデル同様に年率5.7%を目標にしているもの、サービス業に至っては年率7.2%を目標にしており、第二次産業から第三次産業への転換を目指しているのが読み取れます。この計画では「経済変革プログラム」を上げており、12の重点分野を列挙しています。

前半の6分野では、原子力発電を含むエネルギー分野への設備投資を始め、電子機械・ソフトウェア等の第二次産業、新幹線・高速道路等の、インフラ網の強化を上げています。IMFも、公共インフラ投資は、効率的な投資が明確に特定されたニーズを満たすことができれば、大きな効果を得られると述べており、中進国の経済成長のセオリーに従っていると言えます。

大事なのが後半の6分野であって、金融業・商業・観光業といった従来型の第三次産業の他、教育・ビジネス・ヘルスケアと言った所謂サービス業を重視しており、具体的にはオンライン大学やアウトソーシング、医療保険制度の改定等がうたわれました。ここから、多様な分野の第三次産業を発展させていこうという政権の意志が見られます。