この記事は2022年09月14日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「会社員/公務員がテレワークによって感じた生産性の変化概況-テレワークで生産性が上がった人/下がった人(1)-」を一部編集し、転載したものです。
はじめに
新型コロナ感染症拡大によって広がったテレワークは、今後どの程度残っていくのだろうか。出社しないでテレワークを行うという選択肢があることは従業員のワークライフバランスの向上に寄与することが期待される。
一方で、企業にとっては、テレワークを行うことによる生産性への影響が気になるところかもしれない。こうした中で、コロナ禍のテレワーク実施が、どのような人の生産性を高め、どのような人の生産性を下げたのかを捉えることは、企業が今後テレワークを有効活用していく方法を検討する上で重要な示唆を与えるだろう。
そこで本稿を含めて全8回の基礎研レターでは、ニッセイ基礎研究所が2022年3月に独自に行ったアンケート調査のデータを用いて、テレワークによってどのような人は出社した際と比べて生産性が向上したと感じ、どのような人は生産性が低下したと感じたのかを分析した結果を紹介していく。
結果を先取りしてお伝えすれば、低年齢層や高年収の人は、テレワークによって生産性が向上したと感じた人の割合が大きい傾向が見られた。また、配偶者と同居する女性は、テレワークによって生産性が下がったと感じる人の割合が大きい傾向が見られた。
また、寮や社宅、官舎に住む人や、中学生のころ夏休みの宿題を行うのが遅かった人(*1)、そして利他的な人は、テレワークによって生産性が低下したと感じた人の割合が大きい傾向が見られた。
これらの結果についての詳細な分析結果は後の基礎研レターに譲るとして、本稿ではまず、会社員や公務員の人々がテレワークによって感じた生産性の変化の概況を説明する。
*1:先延ばし傾向があると考えられる人(詳細は後の基礎研レター参照)
調査概要
本分析に用いた調査は、2022年3月にWEB アンケートによってニッセイ基礎研究所が実施した(*2)。回答は、全国の 18~64 歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象に、全国 6 地区、性別、年齢階層別(10 歳ごと)の分布を、2020年の国勢調査の分布に合わせて収集した(*3)。回答件数は 5,653 件である。
*2:「2022年被用者の働き方と健康に関する調査」
*3:株式会社クロス・マーケティングのモニター会員
テレワークを行った頻度の分布
本調査回答者の2020年2月時点、2022年2月時点、そして日本で新型コロナ拡大が始まって以降(2020年1月以降)一番利用した時期における、テレワークを行った頻度の分布を、図1に示した。
2020年2月時点で月1回以上のテレワークを行っている人の割合は、約19%であった一方、2022年2月時点で月1回以上テレワークを行っている人の割合は約29%であり、コロナ禍で増加したことが分かる。
また、日本で新型コロナ拡大が始まって以降(2020年1月以降)一番利用した時期に月1回以上テレワークを行った人の割合は約35%であった。
テレワークによって生産性が向上したと感じた人の割合
では、コロナ禍でテレワークを経験した人は、テレワークを行う時、出社した際と比べて、生産性が向上したと感じたのか、それとも低下したと感じたのか。日本で新型コロナ拡大が始まって以降(2020年1月以降)一番テレワークを利用した時期に、月1回以上のテレワークを行ったと回答した人(1985名)を対象に尋ねた回答の分布を示したのが図2である。
この回答からは、テレワークで「生産性が低下した」もしくは「生産性がやや低下した」と回答した人の割合は約37%である一方で、「生産性が向上した」もしくは「生産性がやや向上した」と回答した人の割合は、約23%であった。生産性が低下したと感じた人の割合の方が大きいことが確認できる。
では、どのような人が、テレワークをすることで生産性が向上したと感じたのか。また、どのような人がテレワークをすることで生産性が低下したと感じたのか。次回以降(「低年齢層ほどテレワークで生産性が向上したと感じた傾向-テレワークで生産性が上がった人/下がった人 (2)」以降)の基礎研レターでは、年齢や性別、年収や心理的特性などの様々な属性ごとに検証した結果を紹介していく。
岩﨑 敬子(いわさき けいこ)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 准主任研究員
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