この記事は2022年9月15日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「貿易統計22年8月-貿易赤字(季節調整値)の拡大が続く」を一部編集し、転載したものです。

貿易統計
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目次

  1. 貿易赤字(季節調整値)がさらに拡大
  2. 輸出は低迷が続く見込み

貿易赤字(季節調整値)がさらに拡大

財務省が9月15日に公表した貿易統計によると、22年8月の貿易収支は▲28,173億円の赤字となり、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲23,981億円、当社予想は▲28,151億円)を上回る結果となった。

輸出が前年比22.1%と7月の同19.0%から伸びを高めたが、原油高、円安の影響で輸入が前年比49.9%(7月:同47.2%)と輸入を大きく上回る伸びが続いたため、貿易収支は前年に比べ▲21,639億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲1.2%(7月:同▲1.9%)、輸出価格が前年比23.5%(7月:同21.3%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比2.8%(7月:同2.3%)、輸入価格が前年比45.9%(7月:同44.0%)であった。

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季節調整済の貿易収支は▲23,713億円と15ヵ月連続の赤字となり、7月の▲21,556億円から赤字幅が拡大した。赤字幅の拡大は5ヵ月連続となる。輸出が前月比▲0.7%と11ヵ月ぶりに減少する一方、輸入が同1.5%の増加となった。

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8月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=112.7ドル(当研究所による試算値)と、7月の116.6ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は、世界経済の減速懸念などから、90ドル台まで下落しているが、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金を含めた通関ベースの原油価格は100ドル前後で高止まりすることが見込まれる。輸入価格の高止まりを主因として、貿易収支(季節調整値)は当面大幅な赤字が続く可能性が高い。

輸出は低迷が続く見込み

22年8月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比10.5%(7月:同▲5.6%)、EU向けが前年比▲1.5%(7月:同17.4%)、アジア向けが前年比▲4.0%(7月:同▲2.1%)、うち中国向けが前年比▲9.0%(7月:同▲9.9%)となった。

22年8月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比7.1%(7月:同▲5.3%)、EU向けが前月比▲14.0%(7月:同8.4%)、アジア向けが前月比▲3.9%(7月:同0.7%)、中国向けが前月比▲1.5%(7月:同1.7%)、全体では前月比▲0.2%(7月:同▲0.6%)となった。

22年7、8月の平均を4-6月期と比較すると、EU向けが3.0%、中国向けが4.7%高く、米国向けが▲3.0%、アジア向けが▲0.1%低い(全体は0.2%高い)。8月は米国向けが強かったが、均して見れば、EU向けが堅調を維持し、ロックダウンの影響が和らいだ中国向けも持ち直す一方、景気が減速している米国向けが低迷し、輸出全体を押し下げている。

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先行きの輸出は、金融引き締めの影響で景気減速がより鮮明となることが見込まれる欧米向けを中心に低迷が続く可能性が高い。


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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

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