株価を動かす要因はいくつかありますが、そのひとつが各企業の業績です。その業績は、インフレやデフレといった物価動向にも左右されます。
一般的に、インフレは企業業績を拡大させるため、インフレ局面では株価が上昇しやすいと言われています。一方で、短期的にはインフレのニュースが株価上昇に繋がらないケースもあるため、投資をする上では両者の関係性を知っておくことが重要です。
本コラムでは、インフレと株価の関係性を解き明かしつつ、インフレに強い資産や運用方法について紹介します。
インフレと株価の関係性
消費者物価指数が上がったということは、モノの値段が上がったということですから、「インフレが進んだ」と言えます。インフレと株式にはどのような関係性があるのでしょうか。
一般的に株式は、「インフレに強い資産」と言われています。原則として、企業の収益が増えると、その企業の株価は上がります。企業からみると、モノの値段が下がるデフレよりも、値段が上がるインフレのほうが利益は大きくなりやすいため、株価も上がりやすいのです。
したがって、インフレが起こっているとき、もしくはインフレが起こりそうなときに、保有資産に占める株式資産の割合を高めると、資産運用で利益をあげやすいと言えます。ただし、インフレだからといって全ての銘柄の株価が上昇するとは限りません。デフレ下でも業績を伸ばす企業はありますし、インフレ下でも業績が低迷する企業はあります。
そこで、株式資産に投資するひとつのアイデアとして、マーケットの動向を表す指標である「インデックス」への投資が挙げられます。日経平均株価やS&P500といったインデックスに連動する金融商品を保有すれば、その株価指数全体に投資することになりますので、インフレにおける株価上昇の恩恵を受けやすいと言えるでしょう。
株式以外にインフレに強い2つの資産
株式以外にもインフレに強いとされる資産はいくつか存在します。ここでは、株式以外にインフレに強いとされる2つの資産を紹介します。
●インフレに強い資産1:インフレ連動債
元金額が物価動向に連動して増減する債券です。元金額が変動するので、受け取る利息も変動します。インフレが起こると元金額が連動して増加するため、インフレリスクを回避できます。
財務省もインフレ連動債(物価連動国債)を発行しています。2015年1月より相対取引による個人向け販売が解禁されたので、個人投資家でも購入できます。「デフレが起こると元金額が減ってしまうのか?」と思うかもしれませんが、2013年度以降に発行される物価連動国債には、額面金額にて償還される元本保証(フロア)が設定されています。
インフレ連動債は、資産運用にどのように活かせばよいのでしょうか。ひとつのアイデアとしては、現金の逃避先としての活用が挙げられます。インフレはお金の価値が減少する現象ですので、現金をそのまま保有していると、価値が目減りしてしまうリスクがあります。
しかし、前述の株式資産や、後述する不動産では、元本割れのリスクが生じます。一方、2013年度以降に発行される物価連動国債であれば、償還時における元本保証がついています。そこで、現金の一部を物価連動国債に替えることによって、元本割れリスクを避けつつ、インフレリスクを低減することができるのです。
●インフレに強い資産2:不動産(投資用不動産)
不動産もインフレに強い資産と言われています。不動産は実物資産であり、いわば「モノ」です。インフレはモノの値段が上がる現象ですので、不動産の価値も上がりやすいというわけです。
また、物価が上がるということは、家賃も上がりやすい状況だと言えます。不動産の価格を算定する方法には、「この不動産を所有するといくらの収益(家賃)を取れるのか?」という視点から算出する「収益還元法」という方法もあるため、家賃の上昇も不動産価格上昇の追い風となります。
ただし、不動産は個別具体性が非常に強い資産です。立地や築年数、建物の構造(木造かRC造かなど)、管理状態などによって、不動産の価値は大きく変わります。インフレになったからといって、すべての不動産の価値が上がるわけではないことには注意が必要です。
不動産は、資産運用にどのように活かせばよいのでしょうか。一般的に、不動産は売買金額が大きくなりやすく、手軽に、もしくは頻繁に売買ができるものではありません。したがって、現物資産である不動産を保有することも有用ですが、不動産が証券化された金融商品への投資を検討しても良いでしょう。
その代表例がREITです。REITとは、多くの投資家から集めた資金で不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する金融商品です。REITであれば、現物に投資するよりも少額から、不動産に投資することができます。
インフレと株価を、長期的・短期的な視点で考えると?
インフレと株価の関係性を解説しましたが、冒頭で述べたとおり、短期的にはインフレのニュースが株価上昇に繋がらない場合もあります。長期的な視点、短期的な視点の両方で、インフレと株価の関係性を考えることが重要です。
●長期的な視点に立てば、株式はインフレに強い資産
FRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行は、経済を成長させながら物価を安定させることを目的に、金融緩和を進めています。金融緩和の目標は、「2%」の消費者物価指数上昇率を実現することです。
そのため、長期的な視点に立てば、引き続き株式はインフレに強い資産であると言えるでしょう。モノの値段が上がるインフレのほうが利益は大きくなりやすく、利益が大きくなれば株価も上がりやすいためです。
●短期的な視点に立てば、インフレ懸念で株価は下落する場合も
一方で、消費者物価指数が予想を上回る伸びを示した場合には、景気の過熱を抑えて物価を安定させるために金融引き締めが検討されることがあります。したがって消費者物価指数が上昇すると、投資家は金融引き締めを警戒するケースがあります(インフレ懸念)。
つまり、短期的な視点に立つと、インフレが起こる、もしくはインフレの兆しが見えると、一時的に株価が下落する可能性はあります。
まとめ:一時的な下落で焦らずに、好機を見極めたい
インフレに強い資産とされる株式であっても、インフレのニュースによって、一時的に株価下落する場合もあることを解説してきました。しかし、長期的な視点から見れば、「インフレの兆しがあるにも関わらず株価が下落している」ときは、株式資産を購入(買い増し)する好機である可能性があります。保有資産に占める株式比率を高めたい場合は、そのようなときに購入を検討してもよいでしょう。また、すでに株式資産を保有している場合は、一時的と思われる下落で焦らないことが重要です。
インフレと株式の関係性をよく理解して、資産運用を進めていきましょう。
執筆者:菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
(提供=auじぶん銀行)
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