「老後2,000万円不足問題」がメディアで取り上げられる機会は減ったが、この問題がなくなったわけではない。老後のことを考えれば、早めに資産形成を始めるべきだ。しかし、日本では「貯金ゼロ」の人が少なくない。実態を紹介しよう。
貯金ゼロの割合は50代で41.0%、60代で29.4%
日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会では「家計の金融行動に関する世論調査」を発表している。調査では単身世帯の金融資産保有額を調べており、いわゆる「貯金ゼロ」の人の割合と保有額別の割合を公表している。その2020年版、2021年版から金融資産の保有額などを見てみよう。
<単身世帯の世代別の金融資産保有額>
金融資産保有額 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
---|---|---|---|---|---|
0円 | 43.2% | 31.1% | 35.5% | 41.0% | 29.4% |
100万円未満 | 28.3% | 19.9% | 15.2% | 10.4% | 9.1% |
100~200万円未満 | 8.8% | 9.4% | 5.9% | 4.8% | 5.0% |
200~300万円未満 | 4.8% | 5.9% | 4.3% | 3.3% | 3.3% |
300~400万円未満 | 3.6% | 4.1% | 3.6% | 3.5% | 4.8% |
400~500万円未満 | 2.5% | 4.6% | 1.8% | 2.8% | 2.9% |
500~700万円未満 | 2.9% | 6.4% | 6.4% | 5.3% | 5.3% |
700~1,000万円未満 | 1.7% | 5.7% | 4.3% | 5.6% | 5.2% |
1,000万円以上 | 1.7% | 9.1% | 17.3% | 20.2% | 32.2% |
無回答 | 2.5% | 3.9% | 5.7% | 3.0% | 2.8% |
「貯金ゼロ」の割合は20代が43.2%、30代が31.1%、40代が35.5%、50代が41.0%、60代が29.4%。20代や30代は労働収入を原資に資産を形成する時間が十分残されているが、50代や60代は時間的に厳しいと言わざるを得ない。
50代と60代の人の中には、退職金を頼りにしている人もいるだろう。一方で退職金を受け取れない立場で働いている人は、老後生活に大きな不安を抱えているはずだ。
世代別の平均値と中央値は ?
先ほどは世代別・保有額別の割合を紹介したが、「平均値」と「中央値」も紹介しておこう。中央値とは、データを大きい順もしくは小さい順に並べた際の中央の値のことだ。
<世代別の金融資産保有額の平均値と中央値>
項目 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
---|---|---|---|---|---|
平均値 | 113万円 | 327万円 | 666万円 | 924万円 | 1,305万円 |
中央値 | 8万円 | 70万円 | 40万円 | 30万円 | 300万円 |
ちなみに、2022年2月に公表された「家計の金融行動に関する世論調査」の最新版 (2021年版) のデータと比較すると、2020年版では全世代における金融資産保有額の中央値は50万円となっているが、2021版では100万円に増えている。
その背景のひとつとして、2021年は株式や債券価格が世界的に上昇したことから、金融資産の保有額が全体的に底上げされたことが挙げられる。
老後生活でひと月に発生する支出は ?
あなたの貯蓄額は、平均値もしくは中央値よりも高かっただろうか、それとも低かっただろうか。老後生活を考える際は、1ヶ月で発生する生活費を把握しておくことが大切だ。
65歳以上の単身無職世帯の平均支出は14万4,687円
総務省の家計調査年報の「令和2年 (2020年) 版」によれば、65歳以上の単身無職世帯の平均支出は14万4,687円となっている。支出の中で最も大きい割合を占めるのが「食料」で3万6,581円。ほか、「交際費」が1万5,253円、「水道・光熱」が1万2,957円、「教養娯楽」が1万2,910円と続く。
上記の項目などが消費支出に占める割合は以下の通りだ。
<消費支出における交通費>
項目 | 割合 |
---|---|
食料 | 27.5% |
交際費 | 11.5% |
光熱・水道 | 9.7% |
教養娯楽 | 9.7% |
住居 | 9.3% |
交通・通信 | 9.0% |
保険医療 | 6.2% |
家具・家事用品 | 4.0% |
被服及び履物 | 2.4% |
その他 | 10.7% |
ちなみに65歳以上の単身無職世帯の平均収入は13万6,964円で、その内訳については、年金などの「社会保障給付」が12万1,942円、「事業・内職収入」が1,447円、「仕送り金」が1,034円となっている。
早い段階で資産形成を始めよう
老後生活に対する不安を払拭するためには、早い段階で資産形成を始める必要がある。貯金や節約だけでなく、つみたてNISAやiDeCoを活用するほか、円よりも高い金利で運用できる外貨預金といった資産運用でお金を増やすことにも挑戦したい。
日本ではデフレが続いているが、インフレになれば保有資産の実質的価値は目減りして、将来の生活、つまり老後の生活は苦しくなる。このようなリスクもあるため、できるだけ早く資産形成を始めてほしい。
(提供:大和ネクスト銀行)
【関連記事 大和ネクスト銀行】
・大切なのは「お金より時間」? お金の管理を「時間」に応用しよう
・個人投資家の強みを活かす ! 機関投資家が参入しづらい銘柄の特徴
・知っているとお得な「株主優待知識」をおさらい ! 全4選
・落語で学ぶ「お金にまつわる」3つの教訓
・富裕層が米ドルを選ぶ理由「殖やす」以上に大切なコト