介護される人にとって、在宅介護と施設介護では「費用感」と「満足感」にどのくらいの差があるのだろうか。自らの介護費用を自分で用意する前提で、あなたが求める老後生活にどのくらいお金がかかるか、考えてみよう。
在宅介護の人は56.8%、施設介護の人は41.7%
まず、現在の介護の実態を確認しておこう。在宅介護と施設介護の割合は、それぞれどのくらいなのだろうか。
公益財団法人「生命保険文化センター」が2021年12月に発表した「生命保険に関する全国実態調査」 (対象:全国 / 回収サンプル:4,000) では、介護を行った場所や介護の費用などのデータが公表されている。
介護を行った場所は、以下のとおり。
<介護を行った場所>
場所 | 割合 |
---|---|
自分の家 | 40.2% |
親や親族の家 | 16.6% |
公的な介護老人福祉施設や介護老人保健施設など | 16.3% |
民間の有料老人ホームや介護サービス付き住宅など | 18.1% |
病院 | 7.4% |
その他 | 1.0% |
不明 | 0.5% |
「自分の家」と「親や家族の家」を合わせた在宅介護の割合は56.8%、「公的な介護老人福祉施設や介護老人保健施設など」「民間の有料老人ホームや介護サービス付き住宅など」「病院」を合わせた施設介護の割合は41.7%となっており、在宅介護の割合が施設介護を上回っている。
在宅介護の費用感:平均月額は4万8,000円
続いて、在宅介護の費用感と満足感について見ていこう。先ほどの調査によると、在宅介護にかかる費用 (月額) は以下のとおり。
<在宅介護の月額費用>
金額 | 割合 |
---|---|
0円 | 0.0% |
1万円未満 | 7.2% |
2万5,000円未満 | 22.3% |
5万円未満 | 17.6% |
7万5,000円未満 | 13.3% |
10万円未満 | 2.3% |
12万5,000円未満 | 4.3% |
15万円未満 | 1.2% |
15万円以上 | 5.8% |
不明 | 26.0% |
ボリュームゾーンは「 (1万円以上) 2万5,000円未満」 (22.3%) 、次に多いのが「 (2万5,000円以上) 5万円未満」 (17.6%) で、平均は4万8,000円だ。
在宅介護の満足感や充実感は ?
介護される側にとって在宅介護のメリットは、慣れ親しんだ自宅や住み慣れた地域で生活を続けられたり、家族との時間を長く持てることだろう。その分、満足度や充実度は高いといえるだろう。一方で在宅介護は施設介護と比べると、家族の負担が大きくなる傾向にある。
施設介護の費用感:平均月額は12万2,000円
次に、施設介護の費用 (月額) を見てみよう。
<施設介護の月額費用>
金額 | 割合 |
---|---|
0円 | 0.0% |
1万円未満 | 0.4% |
2万5,000円未満 | 6.3% |
5万円未満 | 4.7% |
7万5,000円未満 | 9.1% |
10万円未満 | 8.7% |
12万5,000円未満 | 20.9% |
15万円未満 | 7.9% |
15万円以上 | 30.7% |
不明 | 11.4% |
ボリュームゾーンは「15万円以上」 (30.7%) 、次に多いのが「 (10万円以上) 12万5,000円未満」 (20.9%) で、平均は12万2,000円だ。
施設介護の満足感や充実感は ?
介護される側にとっての施設介護のメリットは、子どもや親族に迷惑がかからないことだ。その意味で、在宅介護の場合とは異なる満足感や充実感がある一方、施設や病院に入所・入院する場合は家族と離れて暮らすため、寂しさを感じることもあるだろう。
月に7万4,000円の差、10年間で888万円の差
平均月額を比較すると在宅介護は4万8,000円、施設介護は12万2,000円で、その差は7万4,000円となる。施設介護のほうが、在宅介護より2倍以上の費用がかかることがわかる。
その差は年間88万8,000円、10年間では888万円に上るため、そもそも自分もしくは家族に蓄えがない人は、選択肢が限られるだろう。
ただ、老後資金をしっかり作ることができれば、在宅介護と施設介護の両方を比較検討することが可能だ。家族に負担をかけないことを重視する場合は、迷わず施設介護を選択できるだろう。
「お金があると選択肢が広がる」は老後にも当てはまる
若者が「お金があると人生の選択肢が広がる」と諭されることがあるが、これは若者だけでなく、老後についても同じことがいえる。
老後を迎えた時に在宅介護と施設介護のどちらかを選びたいなら、今から資産形成に努めることをおすすめする。「要介護度」が高くなるほど多くの費用がかかるため、そのような場合に備えるためにも資産形成は非常に重要だ。
現在はNISA (ニーサ) やiDeCo (イデコ) など、税制優遇が魅力の少額投資制度があるので、これらも積極的に利用するとよいだろう。