老後の暮らしを見据え、将来の生活費を貯めている方も多いだろう。しかし、遺された家族などに負担をかけないためには生活費とは別に、自身の「葬儀費用」も考えておく必要がある。人生最後の自分の葬儀を納得いくものにするためにも、葬儀にはどういった方法があり、どれくらい老後資金からよけておけばよいのか考えてみよう。
葬儀1件あたりの金額は ?
経済産業省が行っている特定サービス産業動態統計調査によると、2021年の葬儀業界の売上高は5,276億3,200万円、取扱件数は47万464件。これらから、葬儀会社が取り扱った葬儀1件当たりの平均金額は約112万1,500円となる。2020年の約112万4,200円と比較すると微減だが、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2019年の約133万1,200円と比較してみると20万円近く減少していることがわかる。
コロナ禍で変わる葬儀の在り方
昨今の葬儀の実態をより詳しく知るには、終活サービスを展開する鎌倉新書が数年おきに行う「お葬式に関する全国調査」が参考になる。
この調査によると、2022年調査の葬儀費用 (※) の平均は約67万8,000円だった。コロナ感染拡大前の2017年は約117万1,000円で、2020年は約119万2,000円だったという。2020年に実施された前回調査まで、葬儀費用は横ばいの傾向が続いていたが、2022年は大きく減少した結果となっている。
▽葬儀費用の変化
2017年調査 | 2020年調査 | 2022年調査 | |
---|---|---|---|
葬儀費用 (※) | 117万1,000円 | 119万2,000円 | 67万8,000円 |
なぜ、急激に減少したのか。その理由は、葬儀の“種類”の変化を見ると浮かび上がってくる。
▽葬儀の種類の変化
2017年調査 | 2020年調査 | 2022年調査 | |
---|---|---|---|
一般葬 | 52.8% | 48.9% | 25.9% |
家族葬 | 37.9% | 40.9% | 55.7% |
一日葬 | 4.4% | 5.2% | 6.9% |
2017年には葬儀全体の52.8%であった「一般葬」が、2020年には半数を下回る48.9%、そして2022年には25.9%にまで落ち込んでいる。
一方で、「家族葬」は、2017年の37.9%から、2020年には40.9%、さらに2022年には半数を超える55.7%へと上昇している。
一般葬とは、故人の親戚や友人、職場の仲間などが幅広く参列し、通夜と葬儀、告別式を行う葬儀のこと。これに対し家族葬とは、家族やごく親しかった友人のみで故人を見送る葬儀のことだ。
同調査では、通夜をせずに告別式のみ行う「一日葬」も、2017年の4.4%から、2020年には5.2%、2022年には6.9%と増加していることがわかる。
こうした調査結果からも、コロナ禍で感染防止の意識が浸透したことは葬儀費用の減少要因のひとつと言えるだろう。「密」を避ける新しい生活様式が定着し、葬儀についても少数の参列者で簡素に行うケースが多くなっている。葬儀費用は当然、少人数で簡素に行うほど少なくなりやすい。
また、コロナ以外でも、少子化や単数世帯の増加といった家族構成の多様化に従い、葬儀の仕方にも多様化が進んでいることも要因として考えられるかもしれない。
家族葬や一日葬にした場合の費用は ?
先述の葬儀費用の全国調査では、葬儀の種類別の平均費用も紹介している。2020年の結果を参照すると、一般葬では葬儀費用の平均が約149万4,000円、家族葬では約96万4,000円、一日葬では約85万1,000円という結果だ。
しかし、「家族葬や一日葬なら費用はこの程度なのか」と安心してはいけない。葬儀費用に上乗せして、飲食費や返礼品などに費用がかかってくるからだ。2020年は、飲食費の平均費用は約31万4,000円、返礼品の平均費用は約33万8,000円となっている。
家族葬に絞ると、飲食費の平均費用は約20万9,000円、返礼品の平均費用は約19万8,000円。つまり、家族葬にかかる平均費用総額は約137万1,000円になるということだ。
ちなみに、一日葬に絞ると、飲食費の平均費用は約25万円、返礼品の平均費用は約24万7,000円であるため、平均費用総額は約134万8,000円になる。
当然、飲食費や返礼品といった費用は参列者の数などによって葬儀費用の総額は大きく変わってくるだろう。それでも、家族に心配をかけないよう、老後資金から葬儀費用をよけておきたいと考えるのなら、ひとつの目安として参考にはなるはずだ。
葬儀費用は相続財産から控除できる
相続人が支払った葬儀費用については、相続財産から控除できることも知っておきたい。火葬や埋葬、あるいは納骨にかかった費用、お寺への読経料などだ。相続税の申告時、これらの控除を受けるために、相続人には費用の明細書などを必ず保管しておくように伝えておこう。
一方で、相続財産から控除できない費用もある。香典返しにかかった費用や、墓石や墓地の購入費用などだ。このため、相続税のことだけ考えるのなら、墓石や墓地は自分が生きている間に準備を整えておき、その費用の分だけ相続される財産を減らしておくことも選択肢としては考えられる。
ちなみに、どういった墓の種類を選ぶかによっても、費用は大きく異なってくる。最近では、墓石の代わりに樹木や花などをシンボルとする樹木葬も話題になっている。一般的に、樹木葬は大きなスペースを必要とせず、墓石も要らないため、一般的なお墓より費用は少なくなる。遺骨を収蔵し供養してくれる納骨堂や、永代供養墓などを選んだ場合にも、相対的に費用は少なくなることが多い。
元気なうちに、自分の望む葬式の形を考えておく
葬儀にも意外とお金がかかると感じた人は、多いのではないだろうか。
そこで重要となるのは、自分が元気なうちに、自分が望むお葬式の形を考えておくということだ。遺された遺族は悲しみに暮れ、こまごまとした葬儀の内容など考える余裕はないこともしばしばである。生前の間に、自分がこれだけはしてほしいと考えるお葬式の形を周囲の人に伝えておきたい。
そして、それに必要な資金を残しておくことができれば理想的である。
(提供:大和ネクスト銀行)
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