本記事は、松岡保昌氏の著書『こうして社員は、やる気を失っていく』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
「やる気」は個人の問題ではなく、職場の問題
「企業力」格差が広がる時代
時代の流れに変化適応し続ける「強い会社」とそうでない会社、その差は、もちろん経営者の判断力などによるところも大きいですが、あからさまな判断ミスをしているわけではないのに、徐々に「企業力」に格差が広がる場合があります。とくに、外部環境の変化が激しい現在では、その傾向は顕著です。
その「企業力」格差の原因は、社員の「モチベーション」の差にある場合が多いのです。
外部環境の変化の影響は、まず現場に現れます。変化は現場で起こるのです。変化の芽を、現場の社員がキャッチする感度、それを上に伝える主体性、新しいニーズをつかむために新しいことに挑むチャレンジ精神。どれをとっても「やる気」のない社員の集合体では、実現できません。「企業力」格差の原因は、結局「モチベーション」の差にいきつくのです。
社員の「やる気」は職場の問題
そこで、よく起こるのが、「やる気」は個人の問題だと勘違いされることです。もちろん個人の要素もありますが、多くの場合、職場の問題です。職場が社員の「モチベーション」を上げることも下げることもあるのです。
思い出してください。誰もが、新入社員初日は、緊張しながらもこれからの社会人生活や仕事に対する期待を胸に出社したのではないでしょうか。
しかしそれも月日が流れるなかで薄れていき、気づけば月曜日の朝に「これから1週間がまたはじまる」と憂鬱な気分になる。
「このままこの仕事、続けていて意味があるのかな?」
職場に行けば、「やる気を出せ」「もっとしっかり考えて、自分から動け」と叱咤激励される。
「やる気が起きないのは、自分のせい(怠け)だけなんだろうか?」と考えてしまう。
「やる気」を失う場面は日常に転がっている
「やる気」が出ないのは、個人の努力が足りないからだと考える人も多いかもしれません。
しかし実際は、上司や周囲との関わりや、会社の制度・処遇などの影響によって「やる気が下がってしまう」ケースも少なくないのです。
期待を胸に参加した新人歓迎会で、「なんで、うちなんか選んだの?」と聞かれた言葉が、心のどこかにひっかかってしまった。
「まあ、すぐに給料が上がるわけじゃないから、最初からそんなに頑張らなくてもいいよ」と肩に力が入った新人が息切れしないようにと気遣ったつもりの発言が、新人にとってはやる気を否定されたように感じてしまった。
忙しい毎日のなかで、毎回指示されることがコロコロ変わり、上司や先輩への不満が溜まっていってしまった。
頑張って営業成績を上げたのに、成績が振るわなかった同期と評価も待遇もほとんど変わらず、なんだか「やる気」がなくなった。
人が「やる気」を失っていく場面は、じつは日常のあちこちに転がっています。
「その程度のことでやる気を失うなんて、覚悟が甘いからだ」と、簡単に切り捨てられるでしょうか?周囲との関係のなかで下がったやる気は、その職場全体の課題でもあるのです。そこを解決しないかぎり、「やる気」が下がる社員は出続ける可能性が高いのです。
その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として逆風下での広報・宣伝の在り方を見直し新たな企業ブランドづくりに取り組む。2004年にソフトバンクに移り、ブランド戦略室長としてCIを実施。福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役として球団の立ち上げを行う。また、AFPBB News編集長として、インターネットでの新しいニュースコミュニティサイトを立ち上げる。
現在は、経営、人事、マーケティングのコンサルティング企業である株式会社モチベーションジャパンを創業。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士、キャリアカウンセリング協会認定スーパーバイザーとして、個人のキャリア支援や企業内キャリアコンサルタントの普及にも力を入れている。著書『人間心理を徹底的に考え抜いた「強い会社」に変わる仕組み』(日本実業出版社)。※画像をクリックするとAmazonに飛びます