日本では、生涯のうちに“がん”と診断される確率は2人に1人だという。それだけ高い確率なら、せめて治療費の面だけでも、がんに備えておきたいものだ。備えとして真っ先に思い浮かぶのはがん保険だが、一方で、日本には高額療養費制度という頼もしい制度がある。がん保険は実際のところ、入っておく必要はあるのだろうか。

高額療養費制度があるから、がん保険は不要 ?

がん保険には入るべき ? 高額療養費制度があるから大丈夫 ?
(画像=Deemerwha studio / stock.adobe.com)

まず、高額療養費制度の内容を確認しておこう。

小学生から70歳未満の人の場合、健康保険証を提示すれば、医療費の自己負担分は3割だ。しかし、入院や手術なども必要な大きな病気やケガの場合、自己負担額が非常に高額となり、家計に大きな負担となることもある。高額療養費制度は、そのような際に1ヶ月間の医療費のうち、自己負担限度額を超えた分を払い戻してくれる制度だ。

自己負担限度額は年齢や所得によって変わるが、ここでは一例として、年収が約770万円から約1,160万円の範囲に入る人の場合を見てみよう。

1ヶ月あたりの自己負担限度額は次の計算式で求められる。
16万7,400円+ (医療費-55万8,000円) ×1%

仮に医療費が100万円だったとすると、上限額は17万1,820円となる。単純計算すれば、自己負担分として支払った30万円 (3割) のうち、この上限額を超えた部分が払い戻されることとなる。ちなみに、「限度額適用認定証」を先に用意しておけば、医療機関で自己負担限度額のみを支払えばよく、立て替えの必要もなくなる。

この制度は毎月でも利用することができ、過去12ヶ月間の利用数が3回より多い場合は、4回目以降からは、さらに自己負担限度額が下がる仕組みとなっている。

がん保険は高額療養費制度の対象外となる費用もカバー

手厚い公的制度があるため、わざわざ民間のがん保険に加入する必要はないと思われるかもしれないが、実はそうとも言い切れない部分がある。がん保険は、公的医療保険制度、高額療養費制度の対象外となる費用に備えられるメリットがあるからだ。

民間保険に加入していない場合、例えば、入院時の食事代やベッドの差額代、診断書等の書類作成費用といった保険適用外の場合の費用は、基本的に自己負担となる。後述する先進医療についても、公的医療保険制度、高額療養費制度の対象外だ。

また、がん保険には「がん診断給付金」という保障がついているタイプが多い。がん診断給付金とは、がんであると診断された際に、規約上のまとまった金額が支払われる一時金をいう。この給付金に使途は定められておらず、何に使っても問題ない。治療費に充てることはもちろん、今後の生活費に取っておくことも自由だ。

特に、がんの治療が長引いた場合、なかなか仕事に戻れず、収入が不安定になることも想定される。そうした時、会社員の場合であれば、最長1年6ヶ月間にわたって給料の3分の2に相当する傷病手当金が公的医療保険から支給される。しかし、国民健康保険に加入する自営業者などにはそれがない。治療が長期間に及ぶような場合、診断給付金は生活を支える資金にもなりうるので、非常に心強い助けとなるだろう。

特約を付けることで「先進医療」に備えられる

先進医療にかかる費用を補償する特約が付けられることも、がん保険の大きなメリットだろう。

先進医療とは、一定の有効性や安全性が認められる新しい医療技術であるものの、まだ公的医療保険の対象となっていないものである。2023年2月1日時点では、86種類が厚生労働省より先進医療と認められている。基本的に、先進医療にかかる費用は全額自己負担となり、数百万円を要するケースもある。費用で治療を諦めたくないと考える人には、この特約はがん保険に入る大きな理由となるだろう。

例えば、がん治療における代表的な先進医療としては、「陽子線治療」や「重粒子線治療」が挙げられる。どちらも放射線治療の一種で、適用になる場合も一部あるが、それを除くと先進医療に該当するため公的医療保険は適用されない。がん保険の先進医療特約がなければ、数百万円の高額な治療費用がかかることも予想されるが、先進医療特約を付けていれば費用面の心配を抑えて治療を受けることが可能だ。

一方で、こうした治療を行っている先端医療機関の数は少なく、実施件数も限られていることも事実である。自分ががんを患っても、こうした治療を受ける可能性は低いかもしれない。

それでも、先進医療特約にかかる費用は月額数百円程度からだ。もし、がん保険に入ることを決めたのなら、少額の追加負担でより安心を高められるメリットは大きいだろう。

がん保険に入りつつ高額療養費制度を活用するのが安心な選択肢

先に述べた通り、高額療養費制度は非常に頼もしい制度だ。がんに限らず、医療費が大きくかかってしまった際には、必ず活用したい制度である。

しかしながら、高額療養費制度だけでは足りない部分もある。入院や手術の前の準備費用や、療養中の生活の変化によって新たに発生する費用、または働けなくなった時の生活費などは、自助努力で備えておく必要がある。がん保険に加入することは、そうした備えのひとつだ。

もちろん、がん保険の月々の保険料は家計の負担となる。自分の資産状況や仕事の状況、家族構成などとも考えあわせ、がん保険の必要性を検討してほしい。

(提供:大和ネクスト銀行


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