本記事は、山葉隆久氏の著書『誰とでもどこででも働ける 最強の仕事術』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。

厚生労働省が推奨するキャリアチェンジのための汎用的スキルを知ろう!

厚生労働省が推奨するキャリアチェンジのための汎用的スキルを知ろう!
(画像=maru54/stock.adobe.com)

厚生労働省が、業種や職種が変わっても持ち運びできる「ポータブルスキル」を身に付けることを提唱しています。

これは、経験豊富なミドル層人材の有効活用と人材市場の活性化を期待した考え方です。

ところが、この人材市場の活性化とは転職を促していることです。

個々の会社にしてみたら、社外に出ていく社員を増やすことですから、社内の教育研修が活発化するわけがありません。

その結果、周知がなされず、知らない人が多い考え方です。

転職を促すということは、転職できるだけのスキルを身に付けるということです。

どこでも使えるスキルは、自社のどこでも使えるスキルです。それらを身に付ければ、社員のパフォーマンスが上がる。つまり、社員の生産性向上に繋がります。結果として、他社でも通用する人材が増えることになります。

全体像を図表1-8に示します。

「専門知識・専門技術」とは専門的なスキル(テクニカルスキル)のことです。

業務を行うために必須となる専門知識や技術、スキル、経験等といった業務遂行能力のことです。英語力や経理の知識等、専門知識や専門技能にもポータブルスキルは存在します。

このテクニカルスキル以外のポータブルスキルを、「仕事のし方」と「人との関わり方」に分けてフレーム化しています。

学術的知見も考慮して、8つのポイントに整理されています。

「仕事のし方」が、「現状の把握」「課題の設定」「計画の立案」「課題の遂行」「状況への対応」の5点。

平たく言えば、必要な情報を収集する力、課題を特定する力、計画を立てる力、推進する力、予期せぬ状況に対応する力です。

「人との関わり方」としては、上層部や関係部署に意見を通していく「社内対応」力、パートナー企業やお客様等を巻き込む「社外対応」力、チームや部下をまとめていく「部下マネジメント」力の3点です。

厚生労働省が推奨するキャリアチェンジのための汎用的スキルを知ろう!
(画像=誰とでもどこででも働ける最強の仕事術)

私は良い考え方だと思います。

自戒を込めて言いますと、エンジニアや社内で専門家と呼ばれている人たちは、ともすると自らの技術と知識に自信を持ち過ぎて、仕事の仕方と人との関わり方がおろそかになることがあります。これでは、組織では上手くいきません。

しかもその技術は、自分が思っているほどではなく、一定のレベルで似たり寄ったりのことが多いです。会社を移ると井の中の蛙であったことを実感します。

ミドル層の転職に一番必要なのは、実はビジネス基礎力だ

経済産業省は、社会人基礎力という考え方を提唱しています。

社会人基礎力とは、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、2006年に提唱されました。

人生100年時代や第四次産業革命の下で、2006年に発表した社会人基礎力はむしろその重要性を増しており、人生100年時代ならではの切り口と視点が必要となってきました。

こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。

社会人基礎力の3つの能力と12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。

「前に踏み出す力」とは、主体性、働きかけ力、実行力です。

新しいアイデアやテクノロジーを抵抗なく積極的に取り入れ、変化に前向きに対処する主体性を持ち、周囲に働きかけ、自身で試行錯誤しながら物事を進め、やり切る実行力を指します。

「考え抜く力」とは、課題発見力、計画力、創造力です。

課題発見をし、創造力を持って未来に向けて計画的に課題解決を行う力を指します。

「チームで働く力」とは、発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力、です。

周囲に対して自分の考えを分かりやすく発信し多様な人と繋がり、かつメンバーの感情にも配慮し、高い倫理観を持って自分自身もコントロールできるといったコミュニケーション面での力を指します。

新しい業務に取り組んだり、人事異動で職場が変わったり、昇進で立場が変わったり、転職したり、働く環境の変化に応じて、私たちは必要なスキルを習得しなくてはいけません。

その変化が非連続であったり大きかったりしますので、習得したスキルのアップデートも求められます。

これを続けるためには、自らを振り返りながら足りないものを認識し、常に学び続けなくてはいけません。この能力が社会人基礎力です。パソコンのOSにたとえられることもありますが、私たちの能力を最大限発揮するための基盤といえます。

誰とでもどこででも働ける 最強の仕事術
山葉隆久(やまは・たかひさ)
Yamaha Labo代表、経営支援アドバイザー、大阪大学産業科学研究所特任教授、光産業創成大学院大学招聘講師、工学博士。1959年浜松市生まれ。ヤマハ創業家の子孫。78年浜松北高等学校、82年東北大学工学部卒業。半導体エンジニアとして沖電気を経てヤマハに入社。98年東北大学で工学博士号を取得。99年ヤマハの半導体工場を買収したローム浜松法人に移り、2002年にローム本社に転籍。09年、49歳でローム取締役、翌10年に常務取締役に昇任し、社長に次ぐロームNo.2に。13年超円高による業績不振の責任を取り退任。その後、半導体関連会社2社の取締役を経て、新日本無線常務執行役員を21年末退任。22年独立し、実務型顧問として活動開始。大阪大学では、日本の半導体産業復活に繋がるプロジェクトに参画。仕事術の講演やシニアの働き方の研究を通して「働ける内は働きたい」を試行実践している。

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