カンブリア宮殿,ブックオフ
(画像=テレビ東京)

この記事は2023年3月16日に「テレ東プラス」で公開された「リユース業界に変革を!~人財を作るブックオフ流経営術:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。

目次

  1. 家電、衣服、スポーツ用品も~客殺到の総合リユース店へ
  2. 赤字会社を黒字転換~堀内琉ブックオフ大改革
  3. 新入社員の6割は元アルバイト~パート主婦から2時間説教
  4. 褒める・任せる・認める~自立性を高めて売り上げ上昇
  5. 富裕層向け買い取りサービス&授業で楽しく学ぶリユース
  6. ~村上龍の編集後記~

家電、衣服、スポーツ用品も~客殺到の総合リユース店へ

1月下旬、東京・町田市。ブックオフ・スーパーバザー町田中央通り店のリニューアルオープンに800人が行列を作っていた。中古本のブックオフが今や、何でも扱う総合リユース店に生まれ変わっている。

家電コーナーでは人気ブランド「山善」の電子レンジが新品の3割ほど。パソコンコーナーでは少し前のモデルが新品価格の3割程度で買える。さらにパナソニックとビクターのビデオカメラがズラリと並ぶが、大半は1万円以下で売っている。

子どもに人気のおもちゃコーナー。時にはレアな掘り出し物が見つかることもあるという。最近、人気が復活しているというのはレコードコーナーだ。

物価上昇が続く中で勢いを増しているのがリユース業界。市場規模は年々拡大し、今や2兆7,000億円に上る。そんな中、店舗型で業界2位につけるのが全国に800店近く展開するブックオフ。古本屋のイメージを脱し、楽器や家電、衣類など、百貨店並みの品ぞろえになっている。

たとえばベビーカーやチャイルドシートはいっときしか使わないから、中古品で十分という人も多い。ゴルフクラブはプロショップ並みの品揃えだ。

ダイヤル式の黒電話が2,200円。年代物の扇風機は3,300円。懐かしい昭和のレトロ電化製品は、動くかどうかは別としてあくまでもインテリア用として売っている。

▽ダイヤル式の黒電話、動くかどうかは別としてあくまでもインテリア用として売っている

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子ども用の学習ドリルは中古ではなく、ブックオフのオリジナル商品。古本をリサイクルして作ったという。

「ただ単に古紙に戻すんじゃなくて、こういった形でドリルとしてもう1回流通させます」(統括エリアマネージャー・田島和樹)

買い取りコーナーも大盛況。ある家族は不要になった、子どものおもちゃなど20点以上を持ち込んだ。12点で2,150円になった。使わなくなった野球用品はグローブ7点が全部で1万9,000円になった。捨てるつもりだった古い食器が260円になった人は、「ただ引き取ってもらうくらいでいいと思った。お金もらえてまた活用してもらえるって、そんな嬉しいことはない」と言う。

▽買い取りコーナーも大盛況

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赤字会社を黒字転換~堀内琉ブックオフ大改革

ブックオフは1990年、古本屋として神奈川・相模原市に1号店をオープン。まるで新刊本を扱う書店のような明るい店内で汚れを落としてきれいにした中古本を売るという新しいサービスが評判となり、わずか10年で全国に500店舗を出店した。

その後、本だけでなく家電など総合リユース業へと手を広げていく。だが、そこには、それぞれの商材に強みを持つ先行企業がいて、ブックオフは強みを見出せず、拡大するリユース市場に乗り遅れた。その結果、業績は下降。2016年から2期連続の赤字に陥ってしまう。

ところが、そこからわずか3年で黒字化を果たした。その立役者がブックオフグループホールディングス社長・堀内康隆(46)だ。

▽わずか3年で黒字化を果たした立役者、堀内康隆さん

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ファミリー層の客が増えている東京郊外の青梅店。この店で力を入れているのが子ども用のおもちゃだ。堀内はまず、店ごとに取り扱う商品に特徴を持たせた。

「地域に競合でこういうおもちゃに特化しているお店が少なかったこともあって、これがチャンスかなと。売上げが半年で倍ぐらいになりました」(店長・渡部謙介)

立地や客層に合わせてどんな商品に力を入れるか、それぞれの店に判断を任せている。

一方、神奈川・茅ヶ崎市の茅ケ崎駅北口店。多くのサーファーが訪れるので、サーフボードがズラリ。専門店顔負けの品ぞろえで売り上げを伸ばしている。

▽神奈川・茅ヶ崎市の茅ケ崎駅北口店、専門店顔負けの品ぞろえで売り上げを伸ばしている

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堀内は個性を持たせた店を作り、ブックオフを復活させたのだ。

「リユースビジネスの根幹は、地域のお客様から買い取るところがスタートライン。地域に向き合って考えていくということはすごく大事だなと思っています」(堀内)

ブックオフでは買い取りの体制も充実。高い専門知識を持つリユース商品部のスタッフが店とオンラインでつないで、本物の見極めや適正な買い取り価格をアドバイスしている。

例えば中古でも人気の「オメガ・スピードマスター」。店側は9万円で買い取ろうとしたが、人気の高い限定モデルだったため10万円でとアドバイス。「フェンディ」のバッグの社内基準の買い取り価格は8万円だが10万円に。リピーターになってもらうため、社内基準の買い取り価格より少し高く買い取ることもあるという。

「足元を見るような金額をつけて信用を失うような設定をするよりは。何度もご利用いただける信用が得られるような、金額設定をしています」(リユース商品部・今田大貴)

また、他では値段が付かないと持ち帰らないといけないことも多いが、ブックオフは、無料で引き取ってくれる。

実は2016年からマレーシアに出店。今では10店舗に増えている。日本では不用品でも、海外では欲しがる人もいる。そうした人に届けるのもブックオフの戦略のひとつ。現地では「日本で使われていた」こと自体が、高いブランドイメージなのだ。

「日本は物を大切に使っているがゆえに、海外で価値に変わるものがたくさんあるので、そういった形でビジネスを伸ばしていければと思っています」(堀内)

新入社員の6割は元アルバイト~パート主婦から2時間説教

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ブックオフではアルバイトから社員になるケースが多い。毎年、新入社員の6割はアルバイトからの登用だという。働きぶりが認められ、店長やエリアマネージャー、さらには執行役員にまで昇格する例もある。

志村効はフリーターからアルバイトを経て社員となったが、今では都内のほとんどの店を束ねる統括エリアマネージャーになっている。

「一緒に働いているメンバーの学歴を誰も知らない。実力やある種の人間力で判断するので、そこがブックオフの良いところかなと思います」(志村)

叩き上げの最たる例が2代目社長の橋本真由美さん。パートの主婦が1年後には店長に。その後、社長へと上り詰めたシンデレラストーリーが、話題となった。

「パート、アルバイトさんが前線で主体的に動くということが価値。お店に対して真剣なので、ただ働きに来ているのではなく、お店を作りに来ている」(堀内)

堀内がブックオフの社長になれたのも、あるパート主婦のおかげともいえるのだ。

堀内は慶應義塾大学経済学部を卒業後、経営コンサルタント会社に入社。英語を身につけたいと、ニューヨーク勤務を希望し、赴任したのだが、「能力がない人は、仕事のオーダーも来ないっていう状態で、会社に所属しているけれども仕事が与えられない人という時期が結構長くて、屈辱的でした」。仕事が与えられるよう、必死で英語を勉強したという。

▽慶應義塾大学経済学部を卒業後、経営コンサルタント会社に入社

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その後、別のコンサル会社を経て2006年、29歳でブックオフに入社。研修のため大田区の店で働くことになり、売り上げの最高記録を作ろうと意気込む。だが、スタッフに相談せず、勝手に企画を作って進めるなど、ひとりで突っ走ってしまった。

「自分の企画を自分でやりきって自分で悦になるみたいな感じがあったと思います」

そんな様子を見かねた、1歳年上のパート主婦が堀内を居酒屋に呼び出した。自分は正しいと主張する堀内を、彼女は「自分だけの店じゃないのよ。やってほしいことがあるなら、自分のほうから頭下げるのが筋でしょ」と一喝した。

「2時間ちょっと、お説教ですよね。コンコンと言われて骨身に染みた」(堀内)

居酒屋での説教の翌日。堀内は朝礼で「過去最高の売り上げを達成するには、皆さんの協力が必要です、お願いします」と、頭を下げた。これを機にスタッフとの信頼関係と一体感が生まれ、過去最高の月間売り上げを達成した。

褒める・任せる・認める~自立性を高めて売り上げ上昇

2017年に社長に就任した堀内は1年間で150の店を視察したという。店を視察する際、必ず聞くのが、「その店の推し」。

青梅店の店長・渡部が推したのは「仮面ライダーのベルト」が入った透明のケース。もともとはコミックのまとめ売り用のケースだが、それを中身が見える箱として使っていた。 「いいね。マニュアルにないですが、これだと何が入っているかってリアルに見える」(堀内)

改善点を指摘するのではなく「できている部分」をほめるのが、堀内流なのだ。

「自信をつけるというのは何より人の行動で大事な原動力になるので、認めていくことを意識しています」(堀内)

日々、客から寄せらせる声。クレームも多いが、中にはスタッフの接客が親切で明確だったというお褒めの言葉もある。そんな声が寄せられると、堀内はどのスタッフに対してのものかを調べ、手書きのメッセージを添えて届けている。

「お褒めの言葉をいただくのは、マニュアルには書いてないことをやっているケースがあるんです。お客様にとってはすごい喜びにつながっていることを認識してもらうことで、本人の働く意欲になる」(堀内)

吉祥寺駅北口店のように、客の声と堀内のメッセージを張り出す店も。どんな接客が喜ばれたかを共有すれば、スタッフの励みと、スキルアップにつながる。

独自の取り組みを行う店を毎年表彰。今回の最優秀店舗は徳島市の徳島沖浜店だった。ファミリー層をターゲットにホビーやトレカなどの品揃えを充実させ、売り上げを伸ばしたことが評価された。

こうした取り組みで、現場のスタッフに働く誇りと喜び、そして高い自立性を持たせている。

自立性のいい例が、青梅店のアニメグッズコーナーの売り場を作っている高校2年生の女性アルバイトだ。アニメが好きだという大井保乃香は、並べる商品の選定やレイアウトなどを自分で決めている。

▽「『かわいい』と買ってもらえるようにしています」と語る大井さん

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「見やすいように一個一個つめたり、キャラクターを統一させて小さいのを集めることで、『かわいい』と買ってもらえるようにしています」(大井)

年齢や職歴に関係なくひとつの分野を任されることは、働く喜びや楽しさに、つながっていく。

「誰でもできることではないので、僕は正直、これはできないなと。自分の得意を活かすことで、売り場に貢献できる新しいチャンスなのかなと」(店長・渡部)

富裕層向け買い取りサービス&授業で楽しく学ぶリユース

東京駅に隣接した百貨店「大丸」にブックオフの店「ハグオール」がある。ブランド品や貴金属など、高級品の買い取り専門店だ。

▽「ハグオール」ブランド品や貴金属など、高級品の買い取り専門店

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ある客が持ち込んだ、家の中で眠っていた宝飾品16点の査定額は約27万円となった。絵画を写真に撮って見積もりを依頼する客も。百貨店に出店することで、これまでリユースを利用してこなかった客層を取り込もうとしている。

一方、東京・大田区の道塚小学校では変わった授業が行われていた。リユースを通じて、物の価値や大切さを学んでもらうための取り組みだ。

▽東京・大田区の道塚小学校、自宅から持ち寄った本をAからDの4段階で査定を生徒が予想する

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自宅から持ち寄った本をAからDの4段階で査定を生徒が予想。そしてブックオフの担当者とオンラインでつなぎ、実際に査定してもらう。

物を大事にしていれば、思わぬお宝に変わるかもしれないというわけだ。

~村上龍の編集後記~

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ブックという名称を使っているが、古本チェーンから総合リユース店へと変化した。リユースとは、言い方を悪くすると「廃品回収」だが、ブックオフは「廃品」を売っているわけではなく、どんな商品も「良品」にしてしまう。そのためのノウハウはほぼ無尽蔵に持っている。

堀内さんが入社後、最初の打ち合わせで「組織図を」と頼んだら、渡されたのが内線番号表だった。組織図が必要なかったのだ。面と向かってのコミュニケーションを何より必要とする、その伝統は今も残っている。

<出演者略歴>
堀内康隆(ほりうち・やすたか)
1976年、東京都生まれ。1999年、慶應義塾大学経済学部卒業後、中央クーパース&ライブランドコンサルティング入社。2006年、ブックオフコーポレーション入社。2017年、代表取締役社長就任。2018年、ブックオフグループホールティングス株式会社設立に伴い、 同社代表取締役社長に就任。