退職後、どのくらいお金が必要かシミュレーションしている人も多いだろう。しかし老後には生活費の他にも、予期していなかった高額な出費が発生することがある。この記事では「病気」「住宅」「介護」という3つの視点で、そういった想定外の出費に関する実例を紹介する。
高齢に伴う病気で、保険適用外の医療費が多くかかってしまうことに……
加齢とともに、心配になってくるのが健康問題だろう。今は健康でも、10年、20年後に大病を患う可能性は軽視できない。
もっとも日本では、1ヶ月の医療費がある上限額を超えた場合、その超過額を支給する「高額療養費制度」が利用できる。上限額は年齢や所得に応じて定められ、いくつかの条件を満たせば負担を更に軽減する仕組みもある。
ただ注意したいのは、医療費の中にはこの高額療養費制度が適用されず、全額を自己負担しなければならないケースもあるという点だ。
東京都に住む60代のある男性は、がん治療のため、先進医療である「陽子線治療」を行い、16日間入院した。このとき、検査技術費用の約265万円や、入院中のベッド代の約10万円は高額治療費の対象外であったため、全額を自己負担しなければならなかったという。
高額療養費制度の対象外となるのは、「差額ベッド代 (入院する部屋の料金) 」「入院中の食事代」「大病院の初診 (紹介状なし) 」「先進医療費」「自由診療費」などである。特に大きく医療費を左右するのが、差額ベッド代と先進医療費だ。
差額ベッド代がかかる部屋は、低額な大部屋から高額な個室までさまざまな種類があり、病院によって価格設定もまちまちだが、厚生労働省の資料によれば、1日あたりの平均は6,188円だという。そして先進医療は、特定の大学病院などで実施されている厚生労働大臣の承認を受けた療養のことを言い、2022年7月1日現在、84種類登録されている。技術費用は数十万~100万円を超すものも少なくない。
このように、かかった病気によっては、保証の対象外となる高額な医療費を支払わなくてはならないケースがあるのだ。
住宅で思わぬ高額のリフォームが必要に・・・
退職後に多くの時間を過ごすことになる大切な住居においても、思わぬ出費のリスクが潜む。住まいに欠陥が発覚するケースもあれば、10年後の過ごしやすさを考えてリフォームが必要になることもあるだろう。
リフォーム会社「石友リフォームサービス」のサイトより、セカンドライフを意識したリフォームの事例を紹介しよう。石川県の築30年以上の一戸建てに暮らす60代のある夫婦は、寝室を1階に移し、断熱改修や家の段差をなくすなどのリフォームを行い、約1,000万円の費用がかかったという (参考:https://saitama.ishitomo-reform.co.jp/works/details_360.html ) 。
この例のような全体的なリフォームに限らずとも、毎日使うトイレやヒートショックの危険性が高い浴槽などを部分的に改修することもあるだろう。例えば、トイレに手すりをつける場合には3万円以上、浴室の浴室暖房の設置には50万円以上の費用がかかると見込まれる。
また家のリフォームが必要になる理由は高齢化だけではなく、事故による怪我なども考えられる。もしそういった理由で介護が必要になった場合は、被介護者だけでなく、介護者の負担軽減を目的とするリフォームも必要になるかもしれない。
介護にかかる費用
介護は、住宅の改装で終わるわけではない。場合によっては「介護保険外サービス」を活用しなければならないケースも出てくる。
そもそも介護保険サービスには、介護保険法で定めた厳格な利用基準がある。そのためサービスの種類や利用条件には制限があり、個人によっては不足に感じることもある。そこで、保険外となる自費のサービスを提供するのが「介護保険外サービス」である。
保険外サービスの価格は地域によって変動する。高齢者向け施設などの情報を提供する「LIFULL 介護」の調べによれば、1時間あたりの料金は東京や大阪など大都市圏で3,000~6,000円、政令指定都市で2,700~5,000円、それ以外で2,200~4,500円だという (参考:https://kaigo.homes.co.jp/qa_article/152/ ) 。
サービス内容はさまざまだが、最も多いのは「家事 (掃除、洗濯、片付け) の代行」で、続いて「通院の付き添い」「買い物の同行・代行」「料理」の順だ。これらのサービスは、介護認定を受けていてもいなくても利用できる。
加齢とともに身の回りに不自由が出てくることはあるものだ。近くに頼れる親族がいない場合、こうした便利な介護保険外サービスを使いたいと考えるかもしれない。
想定外のことを考慮し、資産を膨らましておこうという努力は有意義
退職後のセカンドライフに備えて、今から貯蓄を始めている人も多いだろう。だが、余生を満喫するために必要となるのは、毎日の「生活費」や余暇を楽しむ「旅行費」だけではない。人生100年時代、想定もしていなかった「まさか」が自分の身に降りかかり、高額な出費が必要になることもあるのだ。
それを考慮すれば、現状の貯蓄額についても、これで十分なのかどうか見え方が変わってくるだろう。今後ますます重要性が高まる資産形成は、早めに始めておくのが賢い選択だ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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