定年退職後のセカンドライフは、気楽に趣味や娯楽を楽しみながら過ごしたいという人も多い。充実した日々を送るためには、お金の管理も重要だ。現役時代とは収入・支出項目ともに大きく変化する退職後のマネープランに、どのように取り組むべきか。また、定年後も働き続けるなら欠かせない「在職老齢年金」の知識も解説する。
定年退職で生活は変化、「支出」はどうなる ?
定年退職によって生活は大きく変化する。収入面では、給与所得がなくなり、年金や退職金が主な収入源となることは想像に容易い。
一方で、注意したいのが支出面だ。仕事に付随してかかっていた費用や、一部の保険料などの出費がなくなるケースもある一方、現役時代と変わらず必要なお金や、退職後にかかってくる出費もあるからだ。退職によって支出がどう変化するかをきちんと理解した上で、家計管理には注意したい。
退職によってなくなる支出
退職すると、それまで働く上で日常的にかかっていた支出がなくなるケースがある。例えば、通勤時に着ていたスーツやワイシャツなどの被服代や、経費に含まれない交際費や外食費などだ。さらに、給与から天引きされていた厚生年金保険料や雇用保険料も、この典型である。
退職後も発生する支出
退職後も、当然ながら基本的な生活費は欠かせない。食費や光熱費、水道代などのインフラ費用や住居費だ。住まいにかかる費用は家賃や、マイホームの場合は固定資産税などがある。年齢を重ねることで不便さを感じ、リフォームを検討する可能性も考慮しておきたい。また、生命保険や損害保険の支払い、介護保険料など、引き続き支払いが必要なものもある。
退職によって新たに発生する支出
会社というコミュニティを離れ、時間の余裕も生まれることで、近所付き合いや趣味に精を出す人も多いだろう。人によっては隣人との交際費や、趣味の道具を購入する費用などは退職後に増える可能性もある。
また、配偶者を扶養している場合は、配偶者が60歳になるまで国民年金保険料の支払いが必要だ。健康保険は国民健康保険に移るか、退職前の健康保険に引き続き加入する、または会社勤めの家族の被扶養者になる (要件を満たした場合) などのパターンがある。
定年後も「働き続ける」という選択肢
定年を迎えても、再雇用制度や再就職を利用して引き続き働く人は少なくない。仕事を通じて、社会や会社に貢献できることに充実を感じる人もいるだろう。収入面でも、一般的には定年前より給与は減るものの、仕事を完全に辞めてしまうよりは安定するといえる。
ただし、60歳以降も働いていると、年金の受給額に影響が出る場合があることに注意したい。厚生年金に加入しながら「在職老齢年金」を受け取る形になるためだ。年金受給額が減ったりなくなったりする可能性もあるため、あらかじめ制度を理解しておこう。
在職老齢年金とは ?
在職老齢年金では、年金の基本月額と収入 (月給と賞与額) によって、月々受け取る年金額が減少したり全額支給停止になったりする。
在職老齢年金の計算方法
在職老齢年金の受取額は、次のように計算する。
(「基本月額」+「総報酬月額相当額」−47万円) ×1/2=「支給停止額」
「基本月額」とは、加給年金を除く老齢厚生年金の年額を12で割って求められる額のこと。「総報酬月額相当額」とは、標準報酬月額に直近1年間の賞与を12で割った額を足したものだ。両者の合計金額が47万円以下であれば老齢厚生年金は全額支給されるが、47万円を超えると、超えた金額の半分が基本月額から差し引かれる。つまり、給与が多いと受取額が減ることになる。
例えば、老齢厚生年金の基本月額が18万円、総報酬月額相当額が37万円の場合、「 (18万円+37万円―47万円) ×1/2=4万円」が一部支給停止の金額となる。在職老齢年金の受取額は「18万円―4万円=14万円」だ。
対象は老齢厚生年金のみ
在職老齢年金の計算対象となるのは企業などに勤め、厚生年金保険に加入していた期間に応じて受け取る「老齢厚生年金」のみだ。国民年金の加入による「老齢基礎年金」は対象外となっている。
2022年法改正で基準額が緩和
在職老齢年金の計算で基準額として用いる「47万円」は、2022年4月の法改正によって緩和された。それまでは60~64歳の基準額が28万円だったため、改正によって「基本月額」+「総報酬月額相当額」が28万~47万円の人は、一部支給停止・全額支給停止の対象とならなくなった。
収支の変化を把握し、充実のセカンドライフを
定年退職をすると一般的に収入は減るものの、支出も削減されるものがある。引き続き必要な生活費や、セカンドライフ特有の出費もあるため、どのような支出項目があるのかをあらかじめ知っておくと無理のない生活や収支管理の計画を立てやすい。
定年を迎えても、引き続き働く選択肢もある。まだまだ活力があり、社会に貢献したいという意欲がある人も多いだろう。在職老齢年金の仕組みについても知っておくことで、働き方やライフスタイルの選択肢が広がるかもしれない。
(提供:大和ネクスト銀行)
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