高利益率のデジタルPRで「新規事業を買う」M&A

ベクトルとの競合はデジタルPR事業全体で起こっている。例えばインスタグラムを中心としたインフルエンサーに企業の商品やサービスを実際に利用してもらい、その体験を投稿してもらうSNSの広告手法であるインフルエンサーマーケティング。ソーシャルワイヤーは「Find Model(ファインドモデル)を展開している。

Find Modelで抱えているインフルエンサーは6000人を超えているという。このうちフォロワー1万人超のインフルエンサーは3000人、同10万人超のインフルエンサーは500人ほど所属しており、2022年3月時点でのべ1億8000万フォロワー以上に情報発信できる強力なマーケティングツールだ。

2016年9月に同サービスに参入。2018年5月にはFind Modelを子会社化し、2020年4月に同社を吸収合併して親会社本体の事業として取り込んでいる。

このように同社はM&Aで新規事業に参入し、成長性が見込める場合は本体に取り込む「新規事業を買う」M&Aで成長を続けたきた。デジタルPR事業の2022年3月期の売上高は26億3200万円、営業利益は5億9300万円で、売上高営業利益率は22.6%と高い。

シェアオフィス事業売却の「次の一手」として、新規事業となる企業買収に乗り出すことになるだろう。どの事業を取り込むのかはまだ分からないが、市場が成長しておりシナジー効果が見込めるデジタルPR事業から選択することになりそうだ。


ソーシャルワイヤーの沿革

年月出来事
2006年 9月 前身となる未来予想を設立
2008年 2月 アットプレスを子会社化し、プレスリリース配信サービス「@Press」運営開始
2008年 2月 アップステアーズを子会社化し、シェアオフィス「CROSSCOOP」運営開始
2008年 8月 アットプレスとアップステアーズを吸収合併
2011年 1月 SOCIALWIRE SINGAPORE PTE. LTD.をシンガポールに設立
2012年 1月 ソーシャルワイヤーに社名変更
2012年10月 クリッピングサービス「@クリッピング」運営開始
2014年 1月 メディア・アイズを子会社化し、 クリッピングサービス「@クリッピング」を強化
2014年 4月 メディア・アイズを吸収合併
2015年12月 東京証券取引所マザーズ市場に株式公開
2016年 4月 Entrehub (Thailand) Co., Ltd.を子会社化し、CROSSCOOPバンコクをタイ・バンコクに開設
2016年 4月 トランスマートを子会社化し、クラウド翻訳「TRANSMART」運営開始
2017年10月 取引先チェックサービス「RISKEYES」運営開始
2018年 3月 ネットスケットから事業を譲受し、イベント集客・運用「everevo(イベレボ)」運営開始
2018年 5月 Find Modelを子会社化し、インフルエンサーマーケティング「Find Model」運営開始
2019年 4月 サブスクリプション型プレスリリース配信サービス「NEWSCAST」開始
2020年 4月 Find Modelを吸収合併
2020年
5月
ミャンマー最大の美容メディア「YUYU Beauty」を事業譲受し、子会社YUYU BEAUTY Company Limitedを設立
2023年
9月
国内シェアオフィス事業をヒューリックに譲渡(予定)

この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。

文:M&A Online