本記事は、菅原洋平氏の著書『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。
朝の光で頭がさっぱりしますか?
朝目覚めたら、まず何をしていますか? カーテンを開けて窓際に行く、ということをすでに実行していますか?
目覚めたら、できるだけ早いタイミングで窓から1m以内に入ってみましょう。
脳が朝の光を感知すると、成人では約16時間後に眠くなるリズムがつくられます。冒頭で夜に眠くなる脳をつくることが重要だとお話をしましたが、そのための行動は、夜眠る前ではなく、朝から始まっているのです。光によって夜の眠気をつくるには、目覚めた直後に脳に光を届けるのが最も効果的で、時間が経過するほど効果は低くなります。
必要な光の量は、2,500ルクス以上です。室内照明では、光の強さは500ルクス程度、晴れた日の屋外では、1万ルクス以上です。室内でも窓から1m以内に入ることができれば、3,000ルクス程度の光を脳に届けることができます。
過去の体験で、朝に明るいところに行くと、頭がさっぱりする、目が覚めると感じたことがあるならば、ここでお話しする光の法則はあなたに役立つと思います。というのは、光によって生体リズムが整うには、光感受性が高いかどうか、光をキャッチするOPN4という受容体を多く持っているかどうかが関係するからです。これは遺伝子のタイプによるもので、光に反応しやすい人とそうでない人がいます。
ただ、光による生体リズムの調整に反応しにくかったとしても、まったく意味がない、というわけではないので、光によって調整されるメラトニンリズムの仕組みはぜひ、知っておいてください。
光のリズムをうまく扱えると、こんないいことがあります。
- 夜は自然に眠くなる
- 朝起きたときに体の疲れがとれる
- 肌のダメージが減る
- 体重が減る
- 起きる時間と眠る時間を好きなように設定できる
住環境や生活スタイルは様々です。どんな環境でも光のリズムをうまく扱えるように、朝に脳に光を届けると、夜に眠くなる脳の仕組みを少し詳しく知っておきましょう。
メラトニンが1日を24時間にする
私たちの脳やからだの中では、時間の経過とともに、様々な物質が増えたり減ったりしていて、それには一定の周期があります。この周期の中で、ある局面、例えば1日の始まりや終わりのことを位相と呼びます。
位相が時間の流れの方向に動けば(位相が後退すると言います)、夜更かし朝寝坊になり、時間の流れと逆の方向に動けば(位相が前進すると言います)早寝早起きの生活になります。この位相の調整をしているのが、メラトニンです。
位相を調整する組織のトップは、脳の視床下部の中にある視交叉上核という神経核です。実験によってこの部位が破壊されると、位相が消えてしまい、その後移植すると位相が復活したことから、体内時計の最高司令部、マスタークロックと呼ばれています。
マスタークロックはすぐ後ろにある松果体に指示を出し、松果体が交感神経節を介して筋肉や臓器の働きを調整します。
メラトニンが位相を調整する仕組みを見てみましょう。
例えば、24時間より長い体内時計を持っている人がいたとします。体内時計は、起床して脳に光が届いた時点からカウントされます。日中を過ごし日没で周囲が暗くなると、マスタークロックは松果体に命令を出し、メラトニンを分泌させます。夜は眠くなって睡眠をとりそのまま朝になりますが、社会時間よりも長い体内時計を持っているので、そのままだと社会時間より遅く1日がスタートします。
ここで脳に光が届くとメラトニンの分泌が止まり、位相は前進します。1日のスタート地点がそろえられたのです。
このような仕組みで、人それぞれ体内時計の長さが異なっていてもともに社会生活を送ることができます。マスタークロックが毎朝光を感知して時計の誤差を修正しているのです。