本記事は、菅原洋平氏の著書『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。
カフェインで昼間の眠気がひどくなる!?
眠気覚ましにコーヒーなどのカフェイン飲料を飲むことがありますか?
普段、飲まれているカフェインは、眠気覚ましになっていますか? そのカフェインが、翌日の眠気の原因になっていたらどうでしょうか。
眠気覚ましにカフェインを摂取するという認識を持っている人は多いですが、実は、カフェインに眠気を覚ます作用はありません。眠気を吹き飛ばすような作用があるのではなく、脳が眠いまま眠れなくなるのがカフェインの作用です。
私たちが朝目覚めると、脳脊髄液の中に、睡眠物質プロスタグランディンD₂が溜まっていきます。目覚めた状態で時間が経過するほど溜まっていき、脳の外側を覆っている、くも膜のアデノシンの濃度を上昇させます。
アデノシンという名前は、アデノシン三リン酸(ATP)という名前で聞いたことがある人もいるかもしれません。ATPは、私たち生体のエネルギー源です。これが日中の活動でエネルギーが燃やされて形を変え、最終的にアデノシンになって睡眠物質として働きます。エネルギーが代謝された産物が睡眠物質として働くという、とても合理的な仕組みになっています。
アデノシンは、脳の中に多く存在し神経を抑制する役割をもつGABAの働きを促進します。GABAは、脳を目覚めさせているヒスタミン神経を抑制します。この働きによって、脳は眠るのです。
このうち、カフェインが作用するのが、アデノシンがGABAの働きを促進する部分です。カフェインはこれをブロックするので、GABAによる神経の抑制が働きにくくなり、ヒスタミン神経が抑制されません。その結果、脳に睡眠物質は溜まっているにも関わらず、眠くなくなるのです。
ここで注意しなければならないのが、カフェインによる弊害です。カフェインは、眠気を阻害しますが、同様に夜間睡眠の質も低下させてしまいます。
カフェインの摂取により、睡眠中に歯ぎしりや食いしばりが増加することが明らかになっています。睡眠中に歯ぎしりが出現すると、マイクロアローザルと呼ばれる、自覚しない短時間の覚醒が生じて、睡眠がプツプツと途切れます。これによって熟眠感がなくなり、昼間に眠気を催して、その対策としてカフェインを摂取する、という悪循環にはまってしまうことがあります。
脳が眠くなるまでの段階がわかると、より有効な眠気対策、快眠方法がわかります。カフェイン摂取で無理やり眠気をブロックするよりも、眠気の根本の原因である睡眠物質を減らす方法、それが「計画仮眠」です。