「暗号資産の基盤技術」という枠を超え、多様な分野で活用の可能性が広がっているブロックチェーン技術。水面下では本格的なブロックチェーン時代の到来に向け、さまざまなプロジェクトや構想が急速に発展しています。

ブロックチェーンの進化を振り返るとともに、開発が加速している「第4世代ブロックチェーン」の4つのキーワードを見てみましょう。

第1~3世代ブロックチェーンの歴史

第4世代ブロックチェーンが切り開く未来: 4つのキーワードを解説
(画像=WhoisDanny/stock.adobe.com)

ブロックチェーンは、時代とともに進化を続けています。「価値のデジタル化」の幕開けとなった第1世代から現行世代である第3世代まで、ブロックチェーンはどのような進化を遂げたのでしょうか。

第1世代:暗号資産

第1世代は通貨システムの代替手段を提供することにより、「仲介者を必要としないボーダーレス(国境を越えた)な決済システム」の基盤を築きました。世界初のブロックチェーンであるビットコインを含む暗号資産やステーブルコイン、中央銀行デジタル通貨(CBDC/Central Bank Digital Currency)など、ブロックチェーン技術を基盤とする金融取引を支えています。

第2世代:スマートコントラクト

第2世代はさまざまな拡張機能を通し、ブロックチェーンの可能性を単なる「決済手段」をはるかに超える領域へと進化させました。

その中でも重要な存在は、イーサリアムに代表されるスマートコントラクトです。スマートコントラクトは一定の条件下において、ブロックチェーン上で契約を自動的に確認・実行する仕組みを備えており、改ざん耐性が強いという特徴があります。

第3世代:DApps(分散型アプリケーション)

第3世代は、ブロックチェーン技術の普及とともに浮上したスケーラビリティ(取引量の増加によるシステムへの負担の増加)や互換性、セキュリティ、処理速度といった問題のソリューションに焦点を当てています。

DAG技術は、その一例です。取引データを記録したブロック同士をチェーン状に接続するブロックチェーンとは異なり、ブロックを利用せずに取引データ同士を直接接続することにより、スケーラビリティや処理速度の向上を図る画期的なソリューションです。

その一方で、スマートコントラクトを備えた非中央権型のアプリ「DApps(Decentralized Applications)」の開発が活発化するなど、ブロックチェーン技術のポテンシャルを高める動きが見られます。

第4世代ブロックチェーン4つのキーワード

第4世代はさまざまなプロジェクトやアイデアが生まれている段階にあり、まだまだ未知の領域です。現時点では、日常生活やビジネス分野への大規模な導入を後押しするイノベーションになると期待されています。

キーワード1:「ブロックチェーン・アズ・ア・サービス(BaaS)」

ブロックチェーン技術をインターネットやIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)のように広範囲に普及させるためには、一般消費者や教育機関、中小企業を含む多様な層のユーザーが利用しやすいサービスが不可欠です。

そのため、導入コストが低く、需要に合わせて利用可能な「ブロックチェーン・アズ・ア・サービス(Blockchain as a Service/BaaS)」のようなクラウドサービスの開発が加速することが予想されます。

キーワード2:第4次産業革命(Industry 4.0)

IoTやAIなどの先端テクノロジーを軸とする第4次産業革命(Industry4.0)は、工場の自動化や効率化といったさまざまなメリットがある反面、データのプライバシーやセキュリティなど、深刻な問題が懸念されています。

第4世代ブロックチェーンはこのような問題へのソリューションを提供すると同時に、データ収集からマネジメント、決済まで、システムの効率化に大きく貢献するものになると予想されます。

厳密には、第4次産業革命(Industry 4.0)とIoTでは、その性質が異なります。IoTはいわば「モノのインターネット化」であり、家や家電など多くのものがインターネットでつながりネットワーク化することです。一方、Industry 4.0はIoTで業務プロセスの自動化などを行おうとする取り組みのことを指します。

Industry 4.0は、多くの企業で取り組みが進んでいます。製造業におけるIndustry 4.0の一例として、製造過程のデータ化による製造プロセスの自動化が挙げられます。製造プロセスの自動化が進めば、最終的に工場の完全自動化ができるようになり、製造現場で問題となっている人手不足の解消にもつながるでしょう。

キーワード3:Web3.0・メタバース

インターネット上の仮想空間「メタバース」が注目を浴びる中、そのポテンシャルを高める技術として、ブロックチェーン技術を活用した「Web3.0」への期待が高まっています。両者を組み合わせることにより、メタバース上のデジタル資産やアクセス権、データの管理などが容易になり、デジタル経済活動の促進にも貢献すると考えられています。

すでに、一部の第3世代ブロックチェーンはWeb3.0に対応するよう設計されていますが、第4世代ブロックチェーンはWeb3.0との互換性をより重視するものになる可能性があります。

総務省は、海外の資料をもとに今後のWeb3.0市場の見通しについて令和6年版の『情報通信白書』で「Web3のグローバル市場は2021年に5兆円あったWeb3のグローバル市場が、2027年には約13倍の67兆円になる」と予想しています。

日本におけるWeb3.0市場についても、2021年には約0.1兆円の規模であったのに対し、2027年には約2.4兆円になると見ていて、実に6年で20倍もの成長を予測しています。総務省の資料からも、Web3の市場は、これからますます拡大していくことがわかります。

キーワード4:大規模導入

ユーザーの増加が既存の問題を悪化させるという懸念が指摘されています。第4世代では大量の取引を迅速かつ安全、低コストで処理できるシステムの構築に向け、相互運用性やプライバシー、スケーラビリティのさらなる向上が加速すると予想されます。

第4世代における技術革新によって、さまざまな分野で大規模導入が取り入れられつつあります。例えば「DeFi(Decentralized Finance)」です。DeFiは、日本語では「分散型金融」と呼ばれています。「DEX(分散型取引所)」に代表されるように、誰もが参加・運営できたり自分でプロダクトを作成できたりする新しい金融の形です。

銀行口座など金融機関を通さずに取引ができるため、途上国などでこれからも発展していくことが考えられます。

大規模導入が取り入れられているのは、通貨だけではありません。例えばデジタルデータの「NFT」にも注目が集まっています。「NFTは一時の勢いが失われた」という声もありますが、まだまだ発展する余地を大いに残しているといえるでしょう。

日本でも、大阪・関西万博でNFTを利用した新たな観光サービスがスタートします。大阪・関西万博では、デジタル体験を提供するためのアプリとして「EXPO 2025 デジタルウォレット」を展開しています。各自治体も「EXPO 2025 デジタルウォレット」と連携し、Web3サービスを活用した観光サービスなどを行う予定です。大阪・関西万博を契機に国内のNFT市場も拡大が見込まれます。

このように、大規模導入は大きな期待が寄せられていますが、その一方でブロックチェーンのエネルギー消費問題への懸念も高まっています。これは、ビットコインのマイニングなどブロックチェーンの活用に大きなエネルギーを使ってしまうという懸念です。将来的に、ブロックチェーンのエネルギー消費問題への懸念が払しょくできれば、さらにブロックチェーン市場は大きくなるでしょう。

新たなイノベーションを生み出し続けるブロックチェーン

世代を追うごとに新たなイノベーションを生み出してきたブロックチェーンは、第4世代で活躍の幅がさらに広がり、投資のチャンスとしても期待できそうです。Wealth Roadでは今後もブロックチェーン市場の動向をレポートします。

※本記事はブロックチェーン技術や暗号資産に関わる基礎知識を解説することを目的としており、ブロックチェーン関連資産等への投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road