この記事は2023年9月6日に「CAR and DRIVER」で公開された「【最新イタリア車試乗】名門の卓越。アルファロメオのSUV、ステルヴィオの完成形は超美味だった!」を一部編集し、転載したものです。


【最新イタリア車試乗】名門の卓越。アルファロメオのSUV、ステルヴィオの完成形は超美味だった!
アルファロメオ・ステルヴィオ2.0 Q4ヴェローチェ。ステルヴィオは高いポテンシャルを誇る後輪駆動ベースの「ジョルジョ・プラットフォーム」を採用したSUV。軽量化にも積極的でエンジンフード/ドアアウターパネル/フロントフェンダー/リアゲートはアルミ製

ジョルジョ・プラットフォームの完成形登場

アルファロメオのSUV、ステルヴィオに仕様変更が実施された。エクステリアではフロントグリルならびにテールライトのデザインを微調整し、フルLEDマトリックスヘッドライトを新採用。インテリアは、メーターパネルを12.3インチのフルデジタル仕様としたほか、インフォテイメントシステムを新型に切り替えた。
今回は、全3グレードをラインアップする新型ステルヴィオの中で、中心的な存在となるガソリンモデルの2.0ターボQ4ヴェローチェに試乗した。

アルファロメオ初のSUVとして開発されたステルヴィオは、2016年に鳴り物入りで誕生した。何しろ、フィアット・クライスラーの一員となってから基本的に前輪駆動ベースのモデルだけを世に送り出してきた同社が、前年デビューしたジュリアに続く「後輪駆動ベースモデル」の第2弾として、このステルヴィオを発表したのだ。
その基盤となったのはジョルジョ・プラットフォームと呼ばれるアーキテクチャー。「打倒BMW3シリーズ」を目標に掲げられたジョルジョ・プラットフォームは、一説には数千億円ともいわれる巨額の開発費が投じられ、グループ内で広く採用されることが決まっていた。

【最新イタリア車試乗】名門の卓越。アルファロメオのSUV、ステルヴィオの完成形は超美味だった!
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高い目標を実現するため、「ジョルジョ」はアルミを主体とする軽金属で構成されるとともに、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンクを採用。何から何まで贅沢に作り込まれたこのプラットフォームは、前述のようにまずはアルファロメオ・ジュリアに採用され、続いてこのステルヴィオ、そして最近はマセラティ・グレカーレにも用いられるという広がりを見せている。

私の「ジョルジョ初試乗」はジュリアだった。その恐ろしく高いボディ剛性に圧倒されたほか、サスペンションの動きが驚くほどスムーズで、静粛性もバツグンに高いことに舌を巻いた。
続いてデビューしたばかりのステルヴィオにも試乗。こちらは「やりすぎ」な感じがなきにしもあらずだった。何よりサスペンションがガチガチに固められていたうえ、ステアリングの反応が敏感そのもの。相当ていねいにステアリングを切り込まないと、コーナリングではギクシャクしてしまう場面さえあった。
ジョルジョ・プラットフォームのポテンシャルの高さを身をもって知っていた私にとって、これは何とも残念なことだった。

しかし、いまから2年前に設定された新グレード「ヴェローチェ」は、初期型からガラリと足回りのセッティングを変更。スポーティなプレミアムSUVとして理想的ともいえるハンドリングを手に入れた。今回試乗したヴェローチェも、基本的にこれと同じ足回りセッティングである。印象をご紹介しよう。

アルファらしい絶品ハンドリング。熟成のドライバーズSUVである

最新のヴェローチェも、サスペンションの感触は決して「ヤワ」ではない。もっとも、それはアルファロメオを名乗るからには、「このくらいのソリッドさ」は必要でしょうというレベル。耐えられないほど硬いわけではない。しかも、路面から多少の突き上げがあっても、ジョルジョ・プラットフォームの強靭極まりないボディがこれを受け止めてくれる。ショックはたちどころにして吸収され、不快な印象をほとんど残さない。むしろ「引き締まった乗り心地」として、多くのアルフィスタから歓迎される種類の味わいだ。

この、しなやかさが増した足回りのおかげで、ハンドリングのレスポンスはまさに「ちょうどいい」範囲に仕上がった。とくに意識することなく自然にステアリングを切り込めば、ステルヴィオのノーズは期待したとおりの速さでイン側を向き、ステアリングを戻せば落ち着いたマナーで直進を始める。それは、ドライバーのイメージとノーズの動きが一体化したような心地よい反応である。コントロール性は極めて高いと評価できる。しかも、ステアリングから伝わるインフォメーションは実に豊富。今回、ステルヴィオでワインディングロードを訪れた日はあいにくの雨模様だった。だがそんな悪条件でもタイヤが滑り始めるかどうかの感触が克明に伝わってくるので、安心してコーナーを攻めることができた。

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排気量2リッターの4気筒ターボエンジン(280ps/400Nm)は、まるでマイルドハイブリッドが組み合わされているのではないかと思うほど低速域でトルクのつきがよく、そのままフラットなトルク特性を保ったまま5500rpm付近のレッドゾーンまでスムーズに到達する。アルファだったら、エンジンがもう少し官能的でもいいように思うが、本格的な電動化時代が間際に迫ったいま、それは望みすぎというものだろう。

ちなみにジュリアとステルヴィオを投入したところで、ステランティス・グループはアルファロメオに関する戦略を大幅に見直し、ジョルジョ・プラットフォームを用いた新型車種の投入を取りやめるとともに、2030年までにはラインアップを全面的にBEVに切り替える方針を明らかにした。
なんとももったいない話だ。裏を返せば、ステルヴィオの足回りが熟成されたいまこそ、ジョルジョ・プラットフォームを手に入れる最大のチャンスといえる。ステルヴィオはアルファロメオらしいスポーツフィールが満喫できる逸材である。

アルファロメオ・ステルヴィオ主要諸元

グレード=2.0ターボQ4ヴェローチェ
価格=8SAT 795万円
全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm
ホイールベース=2820mm
車重=1810kg
エンジン=2リッター直4OHC16Vターボ
エンジン最高出力=206kW(280ps)/5250rpm
エンジン最大トルク=400Nm(40.8kgm)/2250rpm
WLTCモード燃費=10.9㎞/リッター(燃料タンク容量64リッター)
(市街地/郊外/高速道路:8.0/10.9/13.0㎞/リッター)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=255/40R21
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=6.0m

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Writer:大谷達也、Photo:山上博也


(提供:CAR and DRIVER