本記事は、新井 和宏氏の著書『投資がうまくいく人の当たり前』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

投資がうまくいく人の当たり前
(画像=くろねこ/stock.adobe.com)

「51勝49敗」なら優秀

うまくいく人は「勝ち越し狙い」。うまくいかない人は「全勝狙い」

投資で失敗すると、「もう二度とやらない」「損しかしなかった」と後悔を口にする人がいます。
しかし、投資は不確実性がつきもので、どんなベテラン投資家も、勝ち続けることは不可能です。市場の変動や予期せぬ出来事によって、損失が生じることもあります。
実際、プロのファンドマネジャーでも「51勝49敗」なら優秀といえます。全戦全勝することは難しく、勝ち越すこと、つまりトータルで利益を出すことが重要です。
個別の取引で負けることがあっても、最終的に全体の利益が損失を上回っていれば、それは「勝ち」です。短期的な勝ち負けに一喜一憂するのではなく、長期の視点で資産全体が成長しているかどうかを見ていくことが大切です。小さな負けを重ねながらでも、全体として右肩上がりを目指すのが投資の考え方です。
たとえば、メジャーリーグでホームラン王を獲得した大谷翔平選手ですら、10回打席に立って7回はアウトになりますから。
投資も同じで、すべての判断が的中するわけではありません。むしろ、失敗したときに何を学べるかが大切になります。

負けを授業料にできない人は同じ負け方を繰り返す

負け(損失)をどう解釈し、どう活かすかが、長期的な成功を左右します。ただ現実には、負けを「学び」に変えられる人は多くありません。差が出るのは、損失の大きさよりも負けた直後の行動です。

投資がうまくいかない人は、負けた理由を曖昧にしたまま次へ進みます。
「相場が悪かった」「たまたま逆に動いた」で終わり、どこが判断ミスだったのかを言語化しない。すると、次も同じ場面で同じ反応をします。負けが経験ではなく、嫌な記憶として積み上がっていきます。
さらに厄介なのは、負けた瞬間に起きる心理の連鎖です。悔しさ、不安、焦りが混ざると、人は「取り返すための行動」を正当化しやすくなります。「このルールで勝ったことがある」という人ほど、負けた直後にそのルールを例外扱いしやすい。これが、同じ負け方を繰り返す典型例です。
一方で、投資がうまくいく人は、負けを再現できる形にします。負けを美化せず、反省を感情で終わらせない。
「なぜ買ったか」「どこで迷いが生まれたか」「どの情報に引っ張られたか」を短くてもいいので残し、次に同じ場面が来たときの自分の癖を先に潰します。
「負けたからやめる」と決めるのは、金銭的損失以上に損な選択です。そこで終われば、「お金」と「時間」だけでなく「成長のチャンス」まで失います。
ある程度の失敗は成長の糧になります。負けを授業料にするというのは、精神論ではありません。負けから「同じ状況で違う選択ができる材料」を回収することです。負けは避けられませんが、「同じ負け方」は減らせます。そこにこそ、長期で差がつきます。

「立ち直れない失敗」は自損事故

投資は未来を予測する行為ですが、未来は誰にも読めません。したがって3割の成功で全体が成り立つように設計し、残り7割の「うまくいかないこと」を想定しておきます。これがリスク管理の本質です。
投資で完全無欠を目指すと、人は過剰に反応し、感情に飲まれがちです。
しかし「失敗= 損失」ではなく、「失敗=授業料」と考えることで、投資に対する経験値を高めることができます。
多くの場合、人は失敗の痛みを通して本質を学びます。少額の損失や誤った判断を教材として消化できれば、同じ間違いをしなくなります。もちろん、どんな失敗でもいいわけではありません。経験として許されるのは、生活や心の安定が壊れない範囲での失敗です。自分の人生が揺らぐ博打的な投資は、学びではなく破滅を招きます。
投資では、「失っても安全な金額」の中で経験を積むことが重要です。その目安は、自分のリスク許容度の範囲内にあります。つまり「生活を脅かさず、心の平穏を保てて、経験として糧にできる金額」です。
「生活が揺らぐ可能性がある金額」や「損失を想像すると夜も眠れないほど気になる金額」は、「失っても安全な金額」ではありません。

・失敗を「授業料」にできる範囲=「失っても生活も心も壊れない範囲」

安全圏の中で失敗を経験できる設計が、投資を継続させるうえで大切です。
どんなに経験を積んだ投資家でも、すべてを当てることは不可能です。それでも「もう一度やってみよう」とチャレンジできるのは、失敗を学びに変えているからです。
7割の失敗に学びながら、自分の判断軸を磨き、次に活かす。それが「打率3割で十分」の本当の意味です。

アクションリスト
・全勝を目指さず、負けがあっても資産全体で勝てればよいと考える
・損をした直後は取り返そうとせず、負けた理由をスケジュール表に1つ書き残す

投資がうまくいく人の当たり前
新井 和宏(あらい・かずひろ)
1968年、神奈川県生まれ。1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。公的年金などを中心に、多岐にわたる運用業務に従事。チームで10兆円あまりを運用する。2007~2008年、大病とリーマン・ショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。2008年11月、「鎌倉投信株式会社」を元同僚と設立。2013年には最優秀ファンド賞を獲得し、2015年にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演。現在は、電子コミュニティ通貨ユーモを運用する非営利株式会社eumo代表取締役。著書に『あたらしいお金の教科書:ありがとうをはこぶお金、やさしさがめぐる社会』(山川出版社)、『投資は「きれいごと」で成功する――「あたたかい金融」で日本一をとった鎌倉投信の非常識な投資ルール』(ダイヤモンド社)などがある。

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