テレビ業界が動画配信サービスに代表されるネットメディアとの競争激化やCM収入の頭打ちなど構造変革に直面して久しい。こうした中、放送以外の収入拡大が経営課題となっているが、具体化の手立ての一つがM&A。民放在京テレビキー局5社はM&Aにどう向き合っているのか、点検する。
日本テレビ、ジブリを子会社化
在京テレビ5社でM&Aの取り組みが際立つのが日本テレビホールディングスだ。過去10年(適時開示ベース)で8件を手がけ、フジ・メディア・ホールディングスの5件を抑えてトップに立つ。今年だけですでに3件に達する。
そのハイライトともいえるのが今年、テレビ業界にとどまらず、広く一般にも関心を呼んだアニメ制作会社「スタジオジブリ」(東京都小金井市)の買収劇だ。日本テレビが10月6日付で42%余りの株式を取得した。ジブリをグループに取り込むことで、IP(知的財産権)資産の厚みが大きく増す。
ジブリは世界的に知られる日本のアニメ界を象徴する存在だが、高齢となった創業者の宮﨑駿監督らの後継者問題を理由に、日本テレビの傘下に入ることになった。日本テレビの持ち株比率は過半の50%超に届かないが、社長を派遣し、実質支配力基準に基づき、ジブリを子会社化した。取得金額は明らかにしていない。
日本テレビは1985年に「風の谷ナウシカ」をテレビ初放送して以来、映画番組「金曜ロードショー」でジブリ作品を放送し続け、さらに映画製作への出資や、2001年開館した「三鷹の森ジブリ美術館」の設立を支援するなど緊密な関係を築いていた。
日本テレビは5月にファッションEC(電子商取引)サイト大手のラベルヴィー(東京都港区)を子会社化。9月初めにはeスポーツ大会・イベント運営のJCG(東京都江東区)の子会社化を発表しており、ジブリを含めて買収は今年すでに3件を数える。
大型買収で「知育・教育」参入のTBS
大型買収を繰り出したのがTBSホールディングス。6月末、個別指導塾「スクールIE」などを運営するやる気スイッチグループホールディングス(東京都中央区)を子会社化した。TBSとして過去最大の買収で、約287億円で株式の78%を取得した。知育・教育事業への本格参入を狙いとする。
ライバル勢の動きはどうか。在京5社のうち今年に入ってM&Aを手がけたのは目下、日本テレビとTBSだけだ。
各社のM&Aに対する過去10年間(2013年~)の取り組みについて適時開示情報をもとに調べたところ、最多は日本テレビの8件。フジ・メディア・ホールディングスの5件、TBS、テレビ朝日ホールディングスの各3件、テレビ東京ホールディングスの1件と続く。