フジ・メディアHG   売却が優勢

テレビ東京は昨年10月、初の本格的なM&Aを実行した。ゴルフ用品ECサイト「アトミックゴルフ」を運営するリアルマックス(広島市)の株式51%を取得し、子会社化した。従来のテレビショッピングに加え、EC領域を取り込み、通販事業の拡充につなげる。

フジ・メディアは5件中、3件が売却案件。グループ事業見直しの一環として、2018年に生活情報紙のサンケイリビング新聞社、2016年に通販ブランド「セシール」事業、2015年に結婚プロデュース子会社をそれぞれ手放した。

テレビ朝日は2020年にテレビショッピング・EC向け商品企画・開発のイッティ(東京都港区)を、2017年にはスポーツ番組を中心とするコンテンツ制作会社の文化工房(東京都港区)を子会社化した。

日本テレビは2017年に「アンパンマンこどもミュージアム」を全国5カ所で運営するACM(横浜市)を傘下に収めた。さらにさかのぼると、日本テレビは2014年、タカラトミー傘下で「マッハGoGoGo」「科学忍者隊ガッチャマン」などで知られるアニメ制作会社のタツノコプロ(東京都武蔵野市)を買収している(ただし、適時開示の対象外)。

「物販」と「コンテンツ」が主戦場

買収案件のターゲットとして目立つのは物販と、アニメをはじめとするコンテンツ関連だ。

5社の中でも物販事業で抜きん出ているのがTBS。主要駅や大型商業施設に出店し、若者を中心に人気の生活雑貨店「PLAZA(プラザ)」を全国に約110店舗を展開する。TBSが210億円を投じて、運営会社のスタイリングライフ・ホールディングスを子会社化したのは2008年。TBSが手がける最初の本格的なM&Aだった。スタイリングライフの2023年3月期売上高は475億円で、TBSグループの連結売上高の約13%を占める。

TBSは2021年に発表した長期ビジョンで、それまで「6:4」だった放送事業と放送事業以外の売上高比率を2030年3月期までに「4:6」にする目標を掲げる。放送事業以外の比率を60%に高め、放送事業と逆転させる。その新たな牽引役として期待するのがやる気スイッチの買収を通じた知育・教育事業への進出というわけだ。

電通調査によると、2022年のマスコミ4媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)は2兆3985億円で、前年を2.3%下回った。ラジオは唯一増加したが、新聞、雑誌、テレビはそろって減少した。

一方、インターネット広告費は前年比14.3%増の3兆912億円と、2兆円を超えた2019年からわずか3年で3兆円台に乗せた。この中にはテレビ番組の見逃し配信などインターネット動画配信の広告費が含まれるが、こちらは高い伸びを示している。

◎在京テレビ5社:過去10年のM&Aの状況(適時開示ベース)、社名のホールディングスなどは省略

社名 内容
2023 日本テレビ アニメ制作会社のスタジオジブリを子会社化
日本テレビ eスポーツ大会・イベント運営のJCGを子会社化
日本テレビ ファッションECサイトのラベルヴィーを子会社化
TBS 個別指導塾「スクールIE」運営のやる気スイッチグループホールディングスを子会社化
2022 テレビ東京 ゴルフ用品ECサイト「アトミックゴルフ」運営のリアルマックスを子会社化
日本テレビ イベント向け特殊内装・造形のムラヤマホールディングスを子会社化
2020 テレビ朝日 通販向け商品企画・開発のイッティを子会社化
フジ 通販子会社のディノス・セシール(現DINOS CORPORATION)のセシール事業をノジマに譲渡
2019 日本テレビ 傘下の清掃・警備会社サンエイワークを日本管財に譲渡
2018 フジ 傘下のサンケイリビング新聞社をRIZAPグループに譲渡
日本テレビ オプトホールディングス(現デジタルホールディングス)の傘下企業から映像配信事業を取得
2017 テレビ朝日 コンテンツ制作の文化工房を子会社化
日本テレビ 「アンパンマンこどもミュージアム」運営のACMを子会社化
2016 フジ 通販子会社のディノス・セシールを通じてイードから保険相談サービス事業を取得
フジ 持ち分法適用関連会社の仙台放送を子会社化
2015 フジ 婚礼プロデュース子会社のストーリアをエスクリに譲渡
2014 日本テレビ サントリーホールディングスからスポーツクラブ「ティップネス」を子会社化
TBS 放送番組の技術制作会社「東通」を子会社化
TBS 傘下のスタイリングライフ・ホールディングスの中国法人をキリン堂ホールディングスに譲渡
2013 テレビ朝日 BS朝日と経営統合

文:M&A Online